その3:「新たなPCB」といわれるPBDE汚染についての現状と課題 | 化学物質過敏症 runのブログ

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難燃剤メーカーが設立した「臭素科学・環境フォーラム」の事務局長、徳勢正昭事務局長は「欧州で問題視された臭素が5個の PBDE は現在、国内で生産・輸入されていない。魚類などの検査では毒性を否定する結果が出ており、高濃度でも人体に影響はないと認識している」と語った。(抜粋終)」従来から、食物連鎖の頂点に立つクジラやイルカ、アザラシなどの怪獣には高濃度に蓄積が見られるとされており、1998 年の調査によれば、大西洋周辺の海棲生物中の PBDE 濃度として、次のようなデータも報告されている。
マッコウクジラ(脂皮) 78.5~ 136ppb
ハナジロカマイルカ(脂皮) 7,700ppb
ゴマフアザラシ(脂皮) 1,470ppb
サバ (筋肉) 9.1ppb
出典:大西洋周辺の海棲生物中 PBDEs 濃度
PBDEs 濃度= 4・5 臭素化物の主要異性体3種の合計、de Boer et al, 1998
また、ペンタ DE の使用量が多いとされる北米の環境中濃度については、次のようなデータが報告されている。(表1参照)

5大湖に生息する魚類に着いてみると、1975 年に比べて 27 年後の 2002 年には大幅に濃度が高くなっていることがわかる。

また、カーペットやカーテンなどにも多用されていることから、室内の埃にも高濃度に蓄積している点が注目される。
表1カナダにおける環境中PBDE濃度の実態
五大湖の魚 1 ~ 10 ng/g 脂肪中 (1975)
500 ~ 1500 ng/g 脂肪中 (2002)
下水汚泥 3 ~ 24 mg/kg
家庭の埃 10~ 3000 ug/kg
五大湖表面水
オンタリオ湖 6 pg/L
ミシガン湖 25 ~ 160 pg/L
一般環境大気
南オンタリオ地域 10 ~ 1300 pg/m3 (2002)
北極圏カナダ 2 ~ 28 pg/m3 (1994/5)
出典:Maxxam Analytics Inc., Presentation ppt

国内においても、これまでの研究によって、底質や生物相における PBDEs の濃度は明らかになっていたが、大気中の濃度については、十分な測定が行われておらず、実態が明らかになっていなかった。

そうしたなか、(独)産業技術総合研究所では、1999年に東京湾岸地域10地点から松葉を採取し、PBDE濃度を分析している。

それによると、7臭素化と 10臭素化 DE に加えて、4・5臭素化といった低臭素化化合物の DE が多く検出され、焼却炉が多く集積している都内の大気中にも、高濃度の PBDEs が含まれていることが明らかになっている。3)(表2参照)
一旦環境中に排出された PBDE は食物連鎖により最終的に魚介類などに蓄積し濃縮されていく。
表より、東京湾奥と房総半島先端では、合計濃度におよそ6倍も差が見られることに加え、テトラ・ペンタ DE の濃度に大きな差が見てとれる。
ダイオキシン類と同様に、ヒトの体内への PBDEの摂取は主として、食品からの影響が大きいものと考えられるが、既に述べたように、室内の埃や大気、都市部など発生源が集中している地域の一般環境大気中の濃度が高ければ、それだけ人体へのリスクも高くなることが危惧される。

こうした環境ホルモン物質は、微量、低濃度であっても長期間にわたって暴露することにより、次世代にまでその影響が及ぶことが課題となっており、日本においても、環境中の PBDE 濃度について十分な監視を行っていくことが必要である。

表2 松葉に含まれる PBDE濃度例
単位:pg/g, 湿重量
異性体番号 臭素化 松葉採取地点
IUPAC No. 東京湾奥 房総半島先端
#47 4 91 12
#77 4 2.1 0.4
#100 5 7.5 1.3
#99 5 42 6.5
#126 5 <0.33 <0.33
#105 5 0.7 <0.33
#153 6 2.0 1.3
#183 7 17 <1.2
#190 7 <1.2 <1.2
#209 10 2265 367
合計濃度 2427 388
出典:Congener-Specific Data of PBDEs in Pine
Needles, Tsuyoshi Okazawa, et al, Dioxin2004
Proceedings Vol.66, pp3774