・4、PM2.5の測定
PM2.5の公定測定は24時間の時間に採取される粒子の重さを基本とするが(前述したようにこの値が疫学データとセットで評価され環境基準が定められているため)、この測定方法では一日の試料採取が終わってから濾紙を実験室に持ち帰り質量測定が行われることとなるので、濃度の把握は事後となってしまう。
時々刻々変化する濃度を的確に把握することが行政的な対策を行うためには必要なこともあるので、1時間毎に濃度が測定できる自動測定器のデータが参考値として用いられる。
図3にPM2.5連続測定装置の一例を示す。
図3 PM2.5一時間値連続測定装置の設置例
一般には24時間採取の濾紙の重さは、1時間毎に採取した値を24個積算したものよりも低くなることが多い。この傾向は温度の高い夏季に顕著である。
これは採取期間中に濾紙から揮発性の物質が揮散することによる。
これまで述べてきたように、VOCを構成する要因は多岐にわたっており季節や地域によっても異なるため、濃度削減対策シナリオを検討するに当たっては成分分析の情報が必要となる。
成分を構成するものとしては、サルフェート(硫黄酸化物が粒子化したもの)、ナイトレート(窒素酸化物が粒子化したもの)、アンモニウム(アンモニアが粒子化したもの)等の無機粒子とエレメンタルカーボン(元素状炭素粒子であり黒煙などが相当する)、オーガニックカーボン(VOCが粒子化した有機炭素成分)等の炭素成分の情報が必要である。
また、発生源の同定に当たってはPM2.5中の金属成分の情報も有用である。
5、PM2.5の環境動態
自然起源のPM2.5に関しては黄砂の寄与が大きい。
黄砂は中国大陸において晩冬から春にかけて発生する砂嵐であるが、長距離輸送される途中で大きな粒子は地上に降下するため、日本に達する黄砂の粒径は数ミクロン以下となり、PM2.5の濃度も上昇する。
黄砂の場合は日本列島を西から東に2日程度で通過するケースが一般的であるが、今年1月の中国大陸からのPM2.5の日本への影響はより長い期間にわたっていたのが特徴的である。
環境省は朝の時間帯の平均濃度が70μg/m3を超えると日平均値が35μg/m3を超える確率が高いとの統計的な結果からPM2.5の注意喚起の指針を示したが、高濃度の継続時間が長い場合には朝の時間帯の平均濃度が70μg/m3以下の場合でも日平均値が35μg/m3を超えることもある。このような時には高濃度の継続時間が長いので、2日目、3日目にわたり高濃度が継続するような予測がなされた場合には適切な判断が必要と考える。
PM2.5は様々な形態を持っており、我が国における春季のPM2.5、夏季のPM2.5、そして冬季のPM2.5は、それぞれに異なる特徴があることが知られている。
これまでの知見からは、春季のPM2.5には黄砂と光化学大気汚染、夏季のPM2.5は光化学大気汚染、そして冬季のPM2.5は一次生成大気汚染の寄与が大きいとされてきた。
光化学大気汚染主体の二次生成大気汚染に関しても夏季と冬季とでは組成が異なり、夏季は硫酸アンモニウムや有機炭素成分、冬季は硝酸アンモニウムや元素状炭素成分の比率が特に都市域では多いようである。
しかし今年、大きな問題となった中国での厳寒期でのPM2.5の生成機構は未だ明らかになっていない。
中国では2013年の1月9日から14日にかけてPM2.5の高濃度が発生し、最高値は1mg/m3近くに達した。
このレベルになると視程は著しく減少し、車の運転などでは前方確認がむずかしくなり危険が伴う。