プラスチックによる海洋汚染と闘う | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/

・プラスチックによる海洋汚染と闘う
東京農工大学農学部環境資源科学科 
高田秀重教授にうかがいました
 高田秀重教授は長年、環境化学の専門家として、環境中にある汚染物質を分子レベルで分析・解明する研究に取り組んできました。

近年、プラスチックによる海洋汚染が国際的に問題となっており、高田教授は科学的見地からこの問題に対して警鐘を鳴らしてきました。
 国民会議では、研究室にお伺いして、高田教授に、プラスチック汚染の現状、高田教授らの研究その他の活動内容についてお話を聞かせていただきました。

Q1 まず、高田先生がどのような研究をされているか教えていただけますか。
A 1 私は、大学学部時代から環境汚染物質の調査分析を専門としてきました。

私たちの研究は、環境中に人間活動の痕跡(痕跡となる環境汚染物質のことを“マーカー”と言います)を見つけて、それを測定、分析し、環境汚染物質がどこにどれくらい存在しているか、その発生源はどこか、それがどこに溜まっていくかを把握しようとするものです。

この研究によって、人間活動が生態系に与える影響の実態、潜在的な環境汚染の実態を知ることができます。
 例えば、約30年前の私の研究ですが、東京湾沖合の海底の泥を調査したところ、陸が見えないほど離れた沖合でアルキルベンゼンという化学物質が検出されました。

この物質は、合成洗剤に含まれる難分解性の化学物質で、人間活動による汚染の影響が遠い沖合にまで及ぶということが判りました。

Q2 高田先生は、プラスチックによる海洋汚染について警鐘を鳴らしています。

先生はこの汚染にいつ頃から気づいていたのでしょうか?
A 2 プラスチックの環境汚染に気づいたのは1998年のことです。

1997年にシーア・コルボーンらの『奪われし未来』が出版され、環境ホルモンが社会問題化しました。

この本の第8章「ここにも、そこにも、いたるところに」に、プラスチック製試験管チューブから乳ガン細胞増殖作用を引き起こすノニルフェノールが溶け出していることが判明したということが書かれてありました。

そこで私たちは、1998年にノニルフェノールを“マーカー”として、プラスチック製の皿、容器、コップなどの分析を行いました。

その結果、50品目中5品目のプラスチック製品からノニルフェノールが検出され、いくつかのプラスチック製品がノニルフェノールに汚染されていることが判りました。
 その後、プラスチック製品の中間材料である「レジンペレット」が、それを取り扱う工場等からこぼれて、水路や川に流されて海岸や海上を汚染していることが判りました。

このレジンペレットの分析を行ったところ、高濃度のノニルフェノールを含有していることが判りました。

これらの研究成果については2000年に、「海洋環境における毒性化学物質の輸送媒体としてのプラスチックレジンペレット」という題名の論文で発表し、2001年1月にアメリカ化学会の機関誌『環境化学とテクノロジー』にこの論文が掲載されました。

Q3 プラスチックによって海洋がどのように
汚染されているのでしょうか?
A 3 プラスチックによる海洋汚染には二つのポイントがあります。
 第一に、プラスチックそれ自体がノニルフェノール等の有害物質を添加剤として含有しているという点です。

プラスチックの中間材であるレジンペレットは、今の日本では運搬や取り扱いも比較的きちんと管理されるようになりましたが、1998年当時は工場などでの扱いも雑で、多くのレジンペレットが環境中に排出され、雨で流されて海岸や沖合を汚染してきました。

プラスチックは分解されにくいので数十年海をただよい、今でも世界中の海岸や海上でたくさんのレジンペレットが見つかり、深刻な環境汚染になっています。

レジンペレット以外にも大量のプラスチック片が海洋を汚染しています。

この現状についてはチャールズ・モア著の『プラスチックスープの海』(NHK出版)で紹介されています。
 第二に、プラスチックが海水中の有害物質を引きつけてくるという問題があります。

残留性有機汚染物質(POPs)は水に溶けにくく油に溶けやすいという性質があり、海水中には希釈されて非常に低濃度で存在しています。

しかし、プラスチックはもともと石油から作られており、いわば固体状の油であるため、POPsがプラスチックに引きつけられて吸着し、周りの海水に比べて100万倍程度のPOPsを濃縮し、有害物質の“運び屋”になってしまっています。

Q4 プラスチックによる海洋汚染については国際的には既に大きな問題になっているとうかがいました。

国際的にはどのような取り組みが行われてきたのでしょうか?
A4海洋汚染の実態については、アメリカの市民科学者であるチャールズ・モアが1999年から北太平洋沖での調査航海を行い、太平洋沖合にプラスチックの破片等のごみが集積した「太平洋ごみベルト」があることを指摘しました。

この問題を2007年頃から欧米各国のNGOやマスコミが取り上げ、2009年に「海洋環境保護の科学的側面に関する専門家会合」(GESAMP)(注1)がワーキンググループを立ち上げて海洋のプラスチック問題に取り組むことを決めました(注2)。
 世界的には大きく注目されている問題ですが、情報発信が英語であるため、日本ではほとんど知られていないのが現状です。