トリレンジイソシアネートの毒性等について。17 | 化学物質過敏症 runのブログ

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8.4 ヒト健康への影響 (まとめ)
TDI の生体内運命に関して、TDI は生体中の水に溶解すると、濃度が低い場合には、トルエンジアミンになりやすいが、濃度が高い場合には、オリゴウレア、ポリウレアになりやすい。
気道においてはTDI の付加体形成が主な反応である。

TDI は、ヒトでは吸入経路を介して体内吸収された後、血漿中及び尿中にTDA あるいはTDA 抱合体として代謝・排泄される。

TDA の血漿中濃度は暴露終了後24 時間で最大となり、その後減少する。減少の半減期は10~21 日間である。

尿中の半減期は、2,4-TDA では5.8~11 日間、2,6-TDA では6.4~9.3 日間である。

TDIはラットに対して経口と吸入経路によって異なる運命を辿る。

経口経路では、TDI は投与後48時間で大部分がポリウレアとして糞中に排泄される。

一方、加水分解して生じたTDA は、アセチル化体、酸分解性抱合体に代謝され、尿中にアセチル化体及び抱合体として排泄される。尿中排泄の半減期は、7.5 時間である

吸入経路では、TDI は速やかに吸収され、各器官に分布する。

血中では、血清タンパク質やヘモグロビンと付加体を形成し、48 時間後もかなりの割合で存在する。

TDI は、体内で酸分解性の抱合体に代謝されて、抱合体として尿中に排泄される。
尿中排泄の半減期は20 時間である。

ニトロソ化合物の付加体が検出されたことから、生体内でトルエンジアミン (TDA) が形成されることを示唆しているが、遊離のTDAの排泄は殆どない。
また、吸入されたTDI の一部は食道を経て、胃に到達し、タンパク質と付加体を形成する一方、低分子と抱合体を形成して、糞中に排泄される。
TDI は、ヒトに対して、喘息を発症させ、呼吸器刺激性と呼吸器感作性を示す。

また、慢性気管支炎、限局性呼吸器疾患などを生ずる。

1 秒間の努力性呼吸量 (FEV1) を指標にTDI 暴露と呼吸器系機能低下を調べたコホート研究から、少なくともTDI に感受性の高い人が0.005 ppmより高い暴露濃度に労働時間の15%に相当する時間暴露されると、呼吸機能に重大な影響を受ける可能性があること、気管支閉塞などに伴う肺機能の低下に関するTDI の3~18 年間のNOAEL は0.005 ppm であることが示されている。

加えて、NIOSH (米国国立労働安全衛生研究所) の作業環境勧告濃度も0.005 ppm であることを考慮すると、NOAEL はほぼ0.005 ppm (0.036mg/m3) 付近にあると考える。

その他、TDI の暴露によって生ずる閉塞性肺機能変化はピーク濃度に影響され、短時間であっても0.02 ppm (0.14 mg/ m3) より高いTDI 濃度に暴露されると、肺機能が低下する。

日本産業衛生学会はトルエンジイソシアネート類を皮膚感作性の第2 群に分類している。

また、TDI 暴露と発がんに関する疫学調査が報告されているが、いずれの調査でも発がん性との関連は認められていない。