以下、実験動物から得られた結果を示す。TDI の急性毒性に関して、経口投与によるLD50は、マウス (雄) では4,130 mg/kg であり、ラットでは3,060 mg/kg、2,4-TDI のLD50 は、ラットで5,800 mg/kg である。
吸入暴露による4 時間LC50 は、マウスでは9.7 ppm (69.8 mg/m3)、ラットでは13.9~49.8 ppm (100~359 mg/m3)、ウサギでは11.0 ppm (79.2 mg/m3)、モルモットでは12.7ppm (91.4 mg/m3) である。
急性症状として、2,4-TDI の経口投与でラットの胃に腐食性反応を示す。
吸入暴露では、ラットに肺のうっ血と水腫を生ずる。
刺激性及び感作性に関して、TDI は吸入暴露で眼と呼吸器系に刺激性を示し、モルモットに対して皮膚及び呼吸器感作性を、マウスに対して呼吸器感作性を示す。
反復投与毒性に関して、TDI (2,4-TDI:2,6-TDI, 80:20) は、経口投与では、マウスとラットの雌雄に体重増加抑制、マウス雄に腎尿細管の巨細胞化の顕著な増加、ラット雌雄に急性気管支肺炎の増加を生ずる。
吸入暴露では、マウス及びラットに鼻腔呼吸上皮の萎縮、化生、炎症を伴う慢性鼻炎または壊死性鼻炎を生ずる。点鼻適用では、モルモットの雄に肺胞炎を惹き起こす。
経口及び吸入経路におけるTDIの主な標的器官は呼吸器系である。
反復投与毒性のLOAELは、経口投与ではラットの雄の体重増加抑制と急性気管支肺炎の増加を生ずる30 mg/kg/日 (実効用量: 23 mg/kg/日) である。
吸入経路ではマウスに対する慢性鼻炎または壊死性鼻炎を生ずる0.05ppm (0.36 mg/m3) である。
しかし、経皮投与のNOAELに関しては、現在までのところ適切な定量的なデータは得られていない。
生殖・発生毒性に関して、TDI は、ラットの親動物に吸入暴露で鼻炎の増加を生ずるが、生殖毒性は最高濃度の0.3 ppm まで認められない。
児動物には、0.5 ppm でF1 世代の胎児期に第5頚椎の化骨遅延の有意な変異、成熟後では0.3 ppm で体重増加抑制と鼻炎発症率の増加、またF2 動物の授乳期間中に0.08 ppm 以上で体重増加抑制を示すが、奇形を惹き起こさない。
したがって、TDI はラットに対して親動物毒性と発生毒性を示すが、生殖毒性と催奇形性を示さない。
ラットに対する吸入暴露による発生毒性のNOAEL は、授乳期間中のF2 動物の体重増加抑制を生じない0.02 ppm (0.14 mg/m3) である。
遺伝毒性に関して、TDI は、in vitro 試験では、ネズミチフス菌の復帰突然変異試験、マウスリンパ腫細胞の前進突然変異試験、CHO 細胞、ヒト末梢血リンパ球の染色体異常試験、CHO細胞の姉妹染色分体交換試験の各種の試験で陽性を示した。
加えて、ヒト末梢血白血球のDNA鎖切断検出試験及び児ウシ胸腺DNA を用いたDNA 鎖切断検出試験で陽性を示した。
in vivo 試験では、マウスとラットの多染性赤血球の小核試験では陰性を示したが、キイロショウジョウバエの伴性劣性致死試験で陽性を示すなど、複数のin vitro の試験で陽性報告があり、動物を用いたin vivo の試験でも陽性報告があることから、TDI は遺伝毒性を有するものと判断する。
なお、TDI の遺伝毒性は水と反応して生成したTDA などの反応物によるものと考えられる。
発がん性に関して、TDIの発がん性は、吸入経路では認められていないが、経口経路ではマウスの雌に血管腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、悪性リンパ腫を生ずる。
ラットでは雄には皮下線維腫、膵臓腺房細胞腺腫、雌には乳腺腺腫/線維腺腫 (合計)、膵島細胞腺腫、肝臓の腫瘍性結節を生ずる。
したがって、TDIはマウス及びラットに発がん性を有すると判断する。
なお、IARCは、TDIをグループ2B (ヒトに対して発がん性がある可能性がある物質) に分類している。
runより:やっとこの記事も終わりですε-(;-ω-`A) フゥ…
イソシアネートの中の1物質としてはかなり長い記事になりましたがこれでもかなり減らしたんです。
もう検索するのが怖いっすね、またこんな資料出てきたらどうしよう(^▽^;)