トリレンジイソシアネートの毒性等について。14 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・ポリウレタンフォーム製造工場
1979 年から1980 年の間にポリウレタンフォーム製造工場で製造作業中にTDI に慢性暴露された労働者96 人を対象に、TDI 暴露濃度と血清TDI 特異IgE 抗体価と肺機能との関連性が検討された。

0.02 ppm以下の環境濃度に6~24 か月間暴露された人の総IgE 抗体価と肺機能に変化はみられなかった。

0.02 ppm (0.14 mg/m3) 以下の環境暴露ではTDI 特異IgE 抗体価は変化しないことを示している (Karol, 1981)。
1972 年に操業を開始したスウェーデンのポリウレタンフォーム製造工場の労働者48 人が患った呼吸器疾患の原因物質を特定する研究が行われた。製造原料は、およそ90%のTDI (2,4-TDIと2,6-TDI の混合物) と10%のメチレンジフェニルイソシアナート (MDI) に加えて、触媒としてN-メチルモルフォリン、1,4-ジアザ-ビシクロ-[2,2,2]オクタン (DABCO) のアミン類を約1%含んでいた。

対照群としてイソシアナートとアミンに暴露されなかった労働者30 人、第2 対照群として非喫煙で呼吸器疾患のない研究室員24 人を対象とした。

臨床検査として行われた肺機能検査でFEV1 の平均値は、第2 対照群では第1 対照群より有意に高い値を示したが、暴露群と第1 対照群では差はなかった。

気管支狭窄を生ずるコリン作動性薬剤のメタコリン反応検査で、高反応発症率は暴露群で第1 及び第2 対照群より有意に高かった。

暴露群にTDI 特異あるいはMDI 特異IgE 抗体は検出されず、気管支喘息を示す人はいなかったが、時々喘鳴と息切れを示した人は暴露群で27%、第1 対照群で17%いた。

暴露群の42%に照明光周辺に青色の光輪が見える眼のかすみの症状がみられたが、対照群にはなかった。

作業場のイソシアナート、アミンの空気中濃度が高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーを用いて測定された。

TDI 空気中濃度は0.0013~0.0028 ppm であったが、MDI は検出されなかった。

N-メチルモルフォリンは3.2~7.6 ppm、DABCO は0.017~0.110 ppm であった。

これらの結果から、呼吸器疾患の原因物質は特定できなかったが、TDI のみならずアミン類もまた原因物質であることが示唆されている (Belin et al., 1983)。
2 か所のポリウレタンフォーム製造工場の労働者435 人を対象に、TDI 暴露の肺機能への影響について1983~1987 年の5 年間の追跡研究が行われた。

TDI 暴露について、個人用モニターを用いて、258 人の勤務中の暴露濃度が定期的に測定された。

作業区域別の平均値は0.00145~0.00447 ppm であり、0.005 ppm より高い濃度の測定数率は9%、0.02 ppm より高い測定数は1%であった。

呼吸器疾患について延べ4 回の質問票調査を380 人について行った。年齢、性別、喫煙習慣で調整した慢性気管支炎 (過去2 年間で年3 か月間以上咳と痰の症状) の有病率は、累積暴露 (調査回数) と関連して2.6、6.5、14.3%と増加した。次に、肺機能検査を362 人に行い、平均勤続年数 (4.45、6.34、17.56 年) によって3 累積暴露群 (ppm×月: 0.032 以下、0.032~0.086、0.086 以上) に分類した。高累積暴露の0.100 ppm×月群では、喫煙習慣の影響が認められ、現喫煙者のFEV1 とFVC は元喫煙及び非喫煙者より有意な低値を示した。

一方、FEV1の年間減少量に対する累積暴露、喫煙習慣、性別との関係を解析した結果、性差が認められ、男性の年間減少量は71 mL/年であり、女性の43 mL/年より大きかった。

以上の結果から、慢性気管支炎の有病率は累積暴露と関連して増加し、現喫煙者に肺機能低下が高累積暴露群に認められるが、年間あたりの肺機能減少にはTDI 暴露濃度、暴露期間、喫煙の有無などの影響は認められていない (Jones et al., 1992)