トリレンジイソシアネートの毒性等について。13 | 化学物質過敏症 runのブログ

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1967 年から1992 年の間に米国のTDI 製造工場でTDI 製造に従事した労働者313 人を対象にした後向きコホート研究で、気道刺激反応、気道アレルギー反応、肺機能変化とTDI 暴露との関連が調べられた。

人種、採用時期と年齢で調整した非暴露の管理業務労働者158 人を対照群とした。

平均就業期間は暴露群では15.4 年、対照群では12.2 年であった。

1967~1973 年の作業場のTDI 空気中濃度は、大部分の部署で0.01 ppm 未満であったが、蒸留部署やタンカー積荷中では0.06~0.08 ppm の濃度が測定された。

1976~1997 年の間、個人用携帯モニターを用いて測定されたTDI の8 時間-TWA は、1976~1988 年では0.0059 ppm (156 人)、1989~1997 年では0.0028 ppm (84 人) であり、通算全平均濃度は0.0042 ppm であった。TDI 喘息の年間罹患率は1980 年以前では1.8%であったが、それ以降は0.7%であり、平均罹患率は1.1%であった。

1980年以降に就業した371 人の18 年間の肺機能検査から、暴露群のFEV1 とFVC の年間減少量は対照群と比べて有意差はなく、TDI 暴露濃度に関連した変化は認められなかった。

しかし、FEV1とFVC の年間減少量は、非喫煙者より喫煙者の方が大きかった。

これらの結果、TDI による喘息患者が低い罹患率で見出されるが、肺機能への影響は0.005 ppm までのTDI の累積暴露では生じていない (Ott et al., 2000)。

したがって、本評価書では、TDI の肺機能に関する18 年間NOAEL は0.005 ppm (0.036 mg/m3) であると判断する。
米国の TDI 製造工場の労働者の呼吸器疾患に関する1971~1997 年までの後向きコホート研究が報告されている。

暴露群として少なくとも3 か月間以上製造に従事した305 人が対象とされた。平均就業期間は46 か月間、最長248 か月間であった。

対照群として、人種、性、年齢、喫煙で調整した炭化水素化合物の製造部門の労働者581 人が選定された。1976 年以降、個人用モニターを用いて測定されたTDI の8 時間-TWAは0.0023 ppmであり、平均ピーク濃度は0.0052ppm であった。

定期健康診断記録から呼吸器疾患について、対照群と比較したところ、喘息、種々のアレルギー、息切れ、持続性咳の有病数に有意な差は認められなかった。

また、肺機能検査結果から、FEV1 の平均年間減少量は30 mL/年であり、対照群では32 mL/年と求められた。
これらの結果、呼吸器疾患及び肺機能低下とTDI 暴露濃度との間には関連が認められなかった。
したがって、TDI の作業環境濃度が0.005 ppm 以下であるならば、TDI に長期間暴露されたとしても、TDI 暴露によって呼吸器疾患が変化したり、加齢による肺機能低下が促進されることはない (Bodner et al., 2001)。

この研究の結論から、本評価書では、呼吸器疾患と肺機能変化に関するTDI の3 年間以上のNOAEL は0.005 ppm (0.036 mg/m3) であると考える。