c. 代謝
TDI の主成分である2,4-TDI の動物における主な代謝経路を図8-1(省略) に示す (Allport, 2003 から作成)。
なお、2,6-TDI は2,4-TDI と同様な代謝経路を経ると推察する。
TDI のin vitro 及びin vivo におけるタンパク質付加体形成が調べられた。in vitro では、雄のHartley モルモットの血液から精製したヘモグロビン溶液に2,4-TDI または2,6-TDI の1%溶液(溶媒: アセトン) を添加し、37℃、4 時間反応し、高速液体クロマトグラフィー、イオンスプレー型質量分析計を用いて反応生成物を解析した。
また、ウサギTDI 特異抗体 (Ig クラス不明)を用いて、TDI 付加体を確認した。
解析の結果、2,4-TDI または2,6-TDI の1 分子が4 量体のヘモグロビン1 分子に結合していた。
2,4-TDI はα鎖またはβ鎖にアミド基を介して結合し、2,6-TDI はβ鎖に結合した。
もう一つのイソシアナート基は加水分解してアミノ基に変換していた。
他に、2,4-TDI はアミド基を介してα鎖とβ鎖にそれぞれ結合して、αβ両鎖が架橋した2 量体を形成した (Day et al., 1996)。
in vivo では、雄のHartley モルモット (480~510 g、4 匹) に1 ppm (7.2 mg/m3) の2,4-TDI 蒸気を3 時間/日の頻度で5 日間吸入暴露し、血中のヘモグロビンへの付加反応を調べた。
暴露後単離・精製したヘモグロビン分子を解析した結果、2,4-TDI の1 分子がα鎖またはβ鎖にアミド基を介して結合していた。
他のイソシアナート基は加水分解して、アミノ基に変換していた。
他に、α鎖のニトロソ化合物の付加体が検出された。
これらの結果、①TDI は少なくとも一つのイソシアナート基を保ったまま、肺、血中、赤血球膜を通過してヘモグロビン分子に到達して、付加結合することを示し、また、②ニトロソ化合物の付加体が検出されたことから、生体内で2,4-トルエンジアミン (2,4-TDA) が形成されることを示唆している (Day et al., 1996)。
雄の F344 ラット (200 g、3~4 匹/群) に[環-14C]2,4-TDI を経口投与または吸入暴露して、排泄中の代謝物を調べることで、投与経路による2,4-TDI の生体内動態が比較された。
ラットに[14C]2,4-TDI (放射化学的純度95%以上) 60 mg/kg を経口投与し、一方、[14C]2,4-TDI の蒸気 2 ppm(14.4 mg/m3) を4 時間吸入暴露した。
尿中に検出された代謝物は、経口経路では2,4-TDA あるいは2,4-TDA のアセチル化体であったが、吸入経路では2,4-TDA は検出されなかった。
経口投与あるいは吸入暴露後、12 時間以内に尿中に検出された代謝物の、それぞれ、65%、90%が酸分解性抱合体であった。
これらの結果から、2,4-TDI の代謝は、吸入経路と経口経路とでは異なること、そして、吸入経路から吸収された2,4-TDI は、大部分、酸分解性の抱合体に代謝され、遊離の2,4-TDA は殆ど生成しないことが示されている (Timchalk et al., 1994)
runより:吸入経路では代謝されてるかどうかも判らないという事なのかな?
困る事に吸入経路ぐらいしか曝露しないと思うんですけど・・・。