5.4 環境水中での動態
TDI は、水との反応性が大きく、環境水中に排出された場合には、加水分解により、二酸化炭素、TDA 及びポリウレアになる(5.2.1 参照)。
ポリウレアは、尿素結合を有するので土壌吸着係数(Koc) が大きく、水中の懸濁物質及び底質には吸着されやすいと推定される。
一方、TDAは、非解離状態でのKoc は120 と推定(SRC:PcKocWin, 2004) されるが、一般水環境中ではアミノ基は部分的にプロトン付加体として存在し、腐植物質(フミン物質) のカルボキシル基などと結合し、腐植物質などを多く含む懸濁物質及び底質に吸着される可能性がある。
2,4-TDA 及び2,6-TDA の底質に対するKoc は500 以上と推定されるとの報告がある(Cowen et al., 1998)。
以上のこと及び5.2 の結果より、環境水中にTDI が排出された場合は、加水分解され、TDAとポリウレアになると推定され、それぞれの生成割合は、TDI の濃度に依存し、濃度が低いほどTDA の生成割合が高くなると考えられる。
TDA については、好気的条件下では生分解され難いが、馴化などの条件がととのえば生分解されると推定される。
5.5 生物濃縮性
調査した範囲内では、2,4-TDI 以外のTDI の濃縮性試験に関する報告は得られていない。
2,4-TDI については、化学物質審査規制法に基づくコイを用いた60 日間の濃縮性試験で、水中濃度が0.8μg/L 及び0.08μg/L における濃縮倍率はそれぞれ43~210 及び25~380 であり、高濃縮性ではないと判定されている。
また、同一濃度条件での定常状態における濃縮倍率はそれぞれ180 及び130 としている(経済産業省, 2003a)。
ただし、TDI は水中では速やかに加水分解される(5.2.1 参照) ので、魚体への取り込みは主にTDI の分解生成物と考えられる。
2,4-TDIの加水分解生成物の一つである2,4-TDA については、化学物質審査規制法に基づくコイを用いた6 週間の濃縮性試験が実施されており、水中濃度が0.3 mg/L 及び0.03 mg/L における濃縮倍率はそれぞれ5 未満及び50 未満であり、濃縮性がない、または低いと判定されている(通商産業省, 1977)。
以上のことから、2,4-TDI 以外のTDI についても、水生生物への濃縮性は低いと推定される。
runより:環境中にどう残るかという事は大事な事だと思います、イマイチ分かりにくいですがマシな部類に入ると思います。