5.2.2 生分解性
調査した範囲内では、2,4-TDI 以外のTDI の好気的生分解性に関する報告は得られていない。
2,4-TDI は化学物質審査規制法に基づく好気的生分解性試験では、被験物質濃度100 mg/L、活性汚泥濃度30 mg/L、試験期間4 週間の条件において、生物化学的酸素消費量(BOD) 測定での分解率は0%であり、難分解性と判定されている。
2,4-TDI は試験液中で変化し、2,4-TDA 及びポリウレアになり残留した。
なお、ガスクロマトグラフ(GC) 測定での分解率は100%であった (経済産業省, 2003a)。
5.2.1 の結果を踏まえると、試験液中の生成物は2,4-TDI の分解に由来すると考えられる。
2,4-TDI の加水分解生成物の一つと考えられる2,4-TDA については、化学物質審査規制法に基づく好気的生分解性試験が実施されており、被験物質濃度100 mg/L、活性汚泥濃度30 mg/L、試験期間2 週間の条件において、BOD 測定での分解率は0%であり、難分解性と判定されている(通商産業省, 1977)。
一方、石油コンビナートからの排水由来の微生物を、1 日間馴化させた後、2,4-TDI の好気的生分解性試験に用いたところ、全有機炭素(TOC) 測定での分解率は15%、化学的酸素消費量(COD) 測定での分解率は23%であったとの報告もある(Matsui et al., 1988)。
以上のことから、2,4-TDI は、分解され、好気的条件下では生分解され難いが、馴化などの条件がととのえば生分解されると推定される。2,4-TDI 以外のTDI についても同様な分解挙動と考えられる。
調査した範囲内では、TDI の嫌気的生分解性に関する報告は得られていない。
5.2.3 下水処理による除去
調査した範囲内では、TDI の下水処理による除去に関する報告は得られていない。
5.3 環境中分布推定
TDI が大気中に排出されると、雨滴に溶解し、速やかに加水分解してトルエンジアミン及びポリウレアから成る組成が複雑な混合物として沈降すると考えられる(5.2.1 参照)。
また、土壌及び水域でも容易に加水分解し、トルエンジアミン及びポリウレアを生じると考えられる。
このようにTDI は環境中で加水分解されて容易にトルエンジアミン及びポリウレアになる。
しかし、生じる割合は、環境中へのTDI の放出量の大小により大きく変化すると想定される(Allport et al., 2003)。
TDI が希薄な場合には、加水分解反応が優先して起こり、トルエンジアミ
ンの割合が大きくなると考えられ、逆にTDI が濃厚な場合には、重合反応が優先して起こりポリウレアの割合が大きくなると考えられる。
このように、TDI の環境中の挙動は複雑であるので、大気、水域または土壌のいずれかに定常的に排出されて定常状態に到達した状態での環境中分布推定は行わない。