トリレンジイソシアネートの毒性等について。 | 化学物質過敏症 runのブログ

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http://www.safe.nite.go.jp/risk/files/pdf_hyoukasyo/338riskdoc.pdf
化学物質の初期リスク評価書
Ver. 1.0
No.113
メチル-1,3-フェニレンジイソシアネート
(別名 m-トリレンジイソシアネート)
Methyl-1,3-phenylene diisocyanate
化学物質排出把握管理促進法政令号番号:1-338
CAS 登録番号:26471-62-5
2008 年11 月
独立行政法人 製品評価技術基盤機構
財団法人 化学物質評価研究機構
委託元 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
要 約
メチル-1,3-フェニレンジイソシアネートは別名m-トリレンジイソシアネート (TDI) とも称され、一般的に異性体2,4-TDI と2,6-TDI からなり、刺激性が強い液体である。

水とは速やかに反応しトルエンジアミン (TDA) や、ポリウレアなどを生成する。
TDI の主な用途は、ポリウレタンの合成原料であり、2002 年の国内供給量は、約62,000 トンであった。

2002 年度のPRTR データによると、TDI は1 年間に全国合計で、大気へ28 トン排出され、公共用水域及び土壌への排出はないと推定されている。環境への主たる排出経路は、ポリウレタン製造工程からの大気への排出であると考えられる。
TDI が大気環境中に排出され、水蒸気や雨滴と接触すると、速やかに反応してTDA やポリウレアが生成する。
TDI の環境中濃度として、大気、飲料水、公共用水域、食物中濃度の測定結果のいずれも調査した範囲では得られていない。
また、2002 年度PRTR 排出量データと数理モデルを用いて、TDI の大気中濃度の推定を行った結果、全国の年平均の最大値は0.20μg/m3 であった。
TDI は、2002 年度PRTR 排出量データによると河川への排出がないこと及び水と反応して加水分解することから、水生生物に対するリスク評価を行うための推定環境濃度 (EEC) を0μg/L とした。
ヒトが TDI に暴露する経路としては、呼吸による大気からの吸入暴露のみが考えられる。TDIの大気中濃度 (0.20μg/m3: 推定値) から、ヒトの体重1 kg あたりの1 日推定摂取量を0.080μg/kg/日 (吸入経路) と推定した。

ただし、大気中の濃度の推定にあたってはTDI が大気に放出された後、大気中の雨滴と反応して加水分解物や重合物が生じることを考慮していないこと及び大気中濃度の推定に必要なパラメータである洗浄比についても考慮していないため、大気中濃度の推定結果は実際より大きく見積もられている。
TDI の環境中の水生生物への有害性に関しては、3 つの栄養段階 (藻類・甲殻類・魚類) のうち甲殻類については急性及び長期毒性試験結果が得られており、藻類及び魚類については急性毒性試験のみ得られている。

急性毒性試験の最小値は、魚類であるマダイの96 時間LC50 が0.391mg/L である。
長期毒性試験の最小値は、甲殻類であるオオミジンコに対する繁殖を指標とした21 日間NOEC が0.5 mg/L 以上であった。

なお、水生生物の有害性試験の結果は、TDA のような加水分解物の影響と推定される。リスク評価については、TDI のEEC が0μg/L であり、水生生物に対する暴露が想定されないことから、環境中の水生生物に悪影響を及ぼすことはないと判断する。

TDI は、ヒトにおいて吸入経路より吸収された後、血漿中及び尿中にTDA あるいはTDA 抱合体として排泄される。
TDI は、ヒトに対して、喘息を発症させ、呼吸器刺激性と呼吸器感作性を示し、慢性気管支炎、限局性呼吸器疾患などを生ずる。

TDI 製造工場の男性労働者274 人を対象に呼吸器系機能低下を1秒間の努力性呼吸量 (FEV1) を指標に調べた5 年間の前向きコホート研究で、正確な無毒性濃度 (NOAEL) は確定できないが、少なくともTDI に感受性の高い人が0.005 ppm (0.036mg/m3) より高い暴露濃度に労働時間の15%に相当する時間暴露されると、呼吸機能に重大な影響を受ける可能性があること、気管支閉塞などに伴う肺機能の低下に関するTDI の3~18 年間のNOAEL は0.005 ppm であることが示されている。

さらにNIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)の作業環境勧告濃度も同じ値であることから、職業暴露のNOAEL はほぼ0.005 ppm付近にあると考えられる。

これは職業暴露であるため、暴露は8 時間/日、5 日/週と仮定して1日推定摂取量に換算すると0.0034 mg/kg/日となり、この値を用いてリスク評価を行った。
一方、実験動物に対する反復投与毒性試験では、経口投与では、体重増加抑制、腎尿細管、気管支に影響がみられ、吸入暴露では、鼻腔呼吸上皮の萎縮、化生、炎症を伴う慢性鼻炎または壊死性鼻炎がみられている。

経口経路ではラットの106 週間強制投与試験における雄の体重増加抑制と急性気管支肺炎の増加を指標としたLOAEL が23 mg/kg/日である。また吸入経路では、マウスの104 週間吸入暴露試験における慢性鼻炎または壊死性鼻炎を指標とした0.05 ppm(0.36 mg/m3) (換算値: 0.11mg/kg/日) である。。
生殖・発生毒性については、ラットの吸入暴露による生殖毒性試験における授乳期間中のF2児動物の体重増加抑制を指標とした発生毒性のNOAEL が 0.02 ppm (0.14 mg/m3) (換算値: 0.019mg/kg/日)である。
遺伝毒性については複数の in vitro の試験で陽性報告があり、動物を用いたin vivo の試験でも陽性報告があることからTDI は遺伝毒性を有するものと判断する。

なお、TDI の遺伝毒性は水と反応して生成したTDA などの反応物によるものと考えられる。

また、発がん性については、ヒトの疫学調査及びマウスを用いた吸入試験でも発がん性は認められていないが、マウス、ラット経口投与試験において発がん性の報告がある。

なお、IARC の評価ではグループ2B (ヒトに対して発がん性がある可能性がある物質) としている。
ヒトの推定摂取量とヒトの疫学データ及び実験動物の反復投与毒性試験より得られた無毒性量を用いてMOE を算出した結果、MOE はそれぞれ43 (疫学データの吸入経路)、1,400 (一般毒性の吸入経路)、240 (生殖・発生毒性の吸入経路) であり、リスク評価に用いた毒性試験データに関する不確実係数積10、1,000、100 より大きく、TDI は現時点ではヒト健康に悪影響を及ぼすことはないと判断する。
なお TDI は加水分解性の大きい物質であり、環境中の水分と速やかに反応して加水分解されるため、環境中にはほとんど存在しないと考えられる。本評価書では、大気中濃度推定において大気中の水分との反応の影響を考慮していない。

したがって、実際の一般環境におけるMOEは、本評価書において算出したMOE より大きいことが推測され、ヒト健康に対するリスクは更に小さいと考えられる。
以上のことから、TDI は現時点では環境中の水生生物及びヒト健康に対し悪影響を及ぼすことはないと判断する。
TDI は遺伝毒性を有する発がん性物質の可能性があり、詳細なリスク評価を行う必要がある候補物質である。

また、ヒトにおいて呼吸器感作性を示すことが明らかになっており、注意を要する。
TDI は、環境中の生物及びヒトの経口経路に対しては暴露が想定されないが、加水分解物のひとつであるTDA の暴露の可能性が考えられる。

TDI のリスクを考える際には、TDA の初期リスク評価書も参照されたい。


runより:このPDFは90ページ以上あり全掲載は無理なのと結果が出なかった等特に必要では無いと感じた事は省いています。

主に人体への影響を掲載しますが結構大事な事も他にあるので詳しく知りたい方はPDFをお読みください。