その13:第3部:化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

4)治療法
1)診断方法
化学物質過敏症等についての診断方法は、一般に血液検査を含む日常臨床検査では、特徴的な異常所見が見られないこと、個人差が大きく、自覚症状も多彩であることなどから、場合によっては、「更年期障害」、「神経症」など症状の類似する別の疾患と診断されることも多く、国内外を問わず決め手となる診断手法が定まっていないというのが現状である。
厚生省(現厚生労働省)の長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班では、化学物質過敏症の診断基準として、前掲の表-4.1.4 のとおり2 種類の基準を示している。

また、表-4.1.4 に示されている5 つの検査所見に対応する検査方法について、「シックハウス症候群・化学物質過敏症の診療とその課題」(高野裕久、環境技術Vol.35 No.42006)より引用する。

①チャンレジテスト(負荷試験)
症状との関連が疑われる化学物質を低濃度で曝露することにより症状が誘発されるか否かを客観的に確かめる検査方法です。

しかし通常の医療機関においては、化学物質に全く汚染されていない部屋を確保することは不可能です。

また、化学物質の濃度を低濃度でコントロールすることも容易ではありません。

この検査を施行するためには、ケモクリーンルームという特殊な検査室が必要となるのですが、残念ながら、ケモクリーンルームを持つ施設は、日本国内においても限られています。

具体的には、被検者は、ブースと呼ばれる部屋に入り、低濃度の化学物質を含む空気や全く清浄な空気を曝露されます。

どのような時に、自覚症状が出現するか、なるべく客観的に判断することにより診断を下します。

自覚症状だけでなく、下記のような特殊検査を組み合わせることにより、より客観的な診断に役立つことが報告されています。

②瞳孔反応検査
瞳孔の大きさは副交感神経(瞳孔を小さくする)と交感神経(瞳孔を大きくする)という自律神経のバランスにより調節されています。

化学物質による症状は自律神経のアンバランスにより出現することが多いため、瞳孔反応検査が有用であることが多いのです。

施設によっては、赤外線電子瞳孔計という自動画像記録が可能な機器を用い、光、冷水、音の刺激に対する瞳孔の反応を観察し、自律神経機能を客観的に判断しようとする試みがなされています。

一般的には、化学物質過敏症の患者さんでは、副交感神経が優位となった瞳孔反応のパターンを示す人が多いことが報告されています。

③眼球追従運動検査
動いている対象物をなめらかに追う目の動きは、大脳の基底核というところや小脳というところで調整されています。

また。ホルムアルデヒドやトルエンを含むある種の化学物質は、大脳基底核や小脳の機能を傷害することがあります。

そのためこれらの化学物質の曝露により、なめらかに動く対象物を目で追うという動作に障害をきたすことがあります。

この障害を定量的かつ客観的に感度よく調べようとするのが眼球追従運動検査です。

なめらかな対象物の動きに比較し、ギザギザとした眼球の動きが観察されるのが、化学物質過敏症の患者さんの特徴であることが報告されています。

④視覚空間周波数特性検査(コントラスト検査)
視覚は、眼球の網膜、視神経を経て大脳の後頭葉というところで認識されます。

白と黒の縞の濃淡を変え、視覚の感度を客観的に調べるのがコントラスト検査法です。
化学物質過敏症の患者さんでは、コントラスト検査で感度の低下が認められることが多いという報告があります。

⑤SPECT (single photon emission computer tomography)
画像上で、脳における血流量を客観的に検査することができる手法です。脳を様々な断面で画像化することが可能であるため、脳の様々な部分で血流量がどう変化しているのか、視覚的に、かつ、定量的に検討することができます。

化学物質過敏症の患者さんでは、化学物質の曝露後に、側頭葉、頭頂葉、後頭葉などで血流量が低下することがあると報告されています。

「シックハウス症候群・化学物質過敏症の診療とその課題」(高野裕久、環境技術Vol.35 No.4 2006)を引用
注)上記の各検査方法と表-4.1.4 に示す検査所見との対応は以下に示すとおりである。
<検査方法> <検査所見(表-4.1.4 記載)>
①チャレンジテスト ・・・・・ 誘発試験の陽性反応
②瞳孔反応検査 ・・・・・・・ 副交感神経刺激型の瞳孔異常
③眼球追従運動検査 ・・・・・ 眼球運動の典型的な異常
④視覚空間周波数特性検査 ・・ 視覚空間周波数特性の明らかな閾値低下
⑤SPECT ・・・・・・・・・・ SPECT による大脳皮質の明らかな機能低下