文部科学省 疲労研究班平成14年度研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・出典:文部科学省 疲労研究班
http://www.hirou.jp/

平成14年度
1.研究の趣旨

  疲労および疲労感は、現代社会に生きる多数の人が日常向き合っている現象である。

米国における近年の調査結果によると、2週間以上続く疲労感は人口の24%に存在するとされ、そのうち60%の原因が不明であり、6ヶ月以上続く日常生活に支障を来すような原因不明の疲労を訴える患者数は人口の2.2%にも及ぶという。

今後、高齢化が進み、老化による病態、脳神経機能、知的能力あるいは免疫機能の低下により、一層疲労や疲労感が広く蔓延することが予想される。

しかしながら、疲労は、既にその対処法が考案されている疼痛及び発熱と同様、生体アラームの一つと考えられているが、これまで疲労メカニズムについての解明はほとんど進んでおらず、それに対処するための科学技術の検討・確立が求められている。


このような状況のもと、本研究では、慢性疲労症候群の研究と、一般的な疲労および疲労感の基礎的研究という2つの方向から、疲労による神経・免疫・内分泌調整の破綻等の分子メカニズムの解明、あるいはどのようにして疲労を感じているのかという「疲労感」の神経メカニズムの解明、それらをもとに疲労および疲労感を和らげる方法を科学的な根拠のもとに創生することを目的としている。


すなわち、(1)病的疲労である慢性疲労症候群や不登校の病態・病因解明、(2)一般的な疲労及び疲労感の分子・神経メカニズム解明の基礎的研究、及び(3)右研究の成果をもとにした疲労の測定技術、予防・治療技術の開発、および伝承治療法等についての科学的検証を行い、疲労をやわらげる生活についての提言を行う。

2.研究の概要

  ●2.1 慢性疲労症候群等の病的疲労の研究
 慢性疲労症候群並びに不登校状態を主症状とする疾患を対象として、その治療法等の開発につながる病的疲労の研究を行う。

また、得られた知見は一般的な疲労および疲労感の基礎的研究の促進に資することになる。

(1) 慢性疲労症候群の原因ウイルスとサイトカイン異常に関する研究
1. 原因ウイルス分離・同定
 慢性疲労症候群患者血清における細胞変性効果をきたす因子の原因となるウイルスの分離・同定を行う。特にヘルペスウイルスに注目し、遺伝子の検出と病状との関連を検討する。


2. ボルナ病ウイルスと慢性疲労症候群の関連
ボルナ病ウイルスが原因と思われる慢性疲労症候群家族集団発生例をもとに、ウイルスの接種実験等により病態の違いを検討し、慢性疲労を持続的に誘発する要因を、ウイルス側、宿主側の両面から解明する。


3. 疲労病態におけるウイルス感染と免疫応答異常
 慢性疲労の病態(疲労感、思考力障害、微熱など)の主要な原因と考えられるサイトカイン異常が、どのようにウイルス感染や再活性によって引き起こされるかを、感染動物や上記①②で明らかになったウイルスの感染患者において、神経・内分泌・免疫系の観点から解明する。

(2) 慢性疲労症候群に関わる代謝動態の研究
1. 疲労感状態にいたるまでの脳内代謝動態の解明
 ウイルス感染及びストレスから始まり慢性疲労の状態にいたるまでのプロセスを、「ウイルス感染/ストレス→免疫異常→ウイルス再活性→サイトカイン異常→神経ホルモンDHEA-S低下→アセチルカルニチン異常→異常な疲労感の持続」という仮説に従って解明する。

2. アセチルカルニチントランスポーターの研究
 慢性疲労症候群において中心的な役割を果たすアセチルカルニチンを脳の神経細胞に取り込む特異的な輸送機構(トランスポーター)について、哺乳類系統細胞などの発現系を用いてcDNAクローニングを行い、分子構造及び機能を解析する。

3. カルニチン欠損と疲労病態の関係
 カルニチン欠損症は、脂肪肝、低血糖、易疲労感などの様々な症状を引き起こすが、その機構を検証し、慢性疲労にいたるメカニズムを解明する。