その3:化学物質過敏症:労災での救済を阻む「個別症例検討会」 | 化学物質過敏症 runのブログ

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事例 2 ネイルサロン店からの強烈な臭気で隣接する店舗職員がばく露

 Dさん、Eさん、Fさんの3人は、都内のあるデパートのテナント店で自然化粧品を販売していました。

 2004年10月、職場の隣にオープンしたネイルサロンから毎日強烈な臭いが漂うようになりました。

2、3ヵ月が過ぎた頃からDさんは頭痛、吐き気、胃痛、めまい、目がチカチカするなど、ひどいときには起きることも出来なくなりました。

内科を受診しましたが、原因不明とされ症状も一向に改善しません。

Dさんは一緒に働くEさん、Fさん、通路を隔てた向かいの旅行代理店の人も同じ症状に悩んでいると知りました。
ネイルサロンの匂いが強くなると、きつい症状に襲われるため、原因はネイルサロンからの刺激臭だと確信しました。

 Dさん、Eさん、Fさんは06年7月、北里研究所病院を受診。

3人とも「化学物質過敏症状態」との診断を受けました。

ネイルアートの材料に含まれる多種類の化学物質が揮発して隣接する店舗に飛散し、隣の店で勤務するDさんたちが揮発性有機溶剤にばく露してしまったのです。

ネイルサロンの店員はマスク(素材不明)を着用していました。

 3人は会社と交渉の末、2007年7月、王子労働基準監督署に労災申請。

また、デパートの管理会社を通じてネイルサロン会社に対策を要求しました

06年2月には作業環境測定の業者に依頼し、ネイルサロンの空気質の測定も行っています。

しかし、測定がネイルサロンの開店直後の時間帯だったため、濃度は低く、Dさんは業者に抗議。
再度、別の日に業者から検知管を借りて店舗内の空気を採取、分析してもらったのでした。

 王子労基署は測定結果を「検出された化学物質の測定値からは、人体に害を及ぼす程の値は認められていない」と決めつけましたが、T-VOC(総揮発性有機化合物量)はネイルサロンで300ppm、自然化粧品店で200ppm。

ネイルサロンに客のいない状態での測定でも室内濃度指針値である400ppmに迫る量の有機化合物が検出されたことになります。

 ネイルサロン側は「うちで病気になった者はいない」とこの事態を否定しましたが、そもそも耐性のない人にネイルの仕事は続けられません。

その後、ネイルサロンの店舗内には小さな排気装置が設置されましたが効果はなく、Dさんたちはその後も店に漂う匂いに苦しめられ続けました。

 王子労基署が依頼した東京労働局の労災協力医は、「今回問題になっている状態は、一定期間ネイル接着剤やネイル剥離剤に含まれる有機溶剤に汚染された空気環境下にあったため中毒症状を呈し、それが慢性症状に移行した可能性が高いと考えられる。

過敏となる病態を獲得する期間には個人差があるが、同様の環境下にある複数の同僚達が類似した症状を呈し、しかるべき診断を受けていることは見逃すことはできないと考える。

さらに、複数回にわたる空気環境の改善の申し入れに対する積極的な対策の遅れが、今回の問題を更に大きくしていると懸念される」とし、3人の症状がネイルサロンから発散された有機溶剤に起因し、初期の中毒症状から慢性的な症状に移行したと認める意見を述べていました。

 この意見を採用すれば、Dさんたち3人の「化学物質過敏症」は業務上と認定されて当然だったはずです。

しかし、王子労基署は最終段階であの厚生労働省「化学物質に関する個別症例検討会」に3つの事案をかけました。

 その結果、王子労基署の担当官は、個別症例検討会の意見に基づき「請求人に発症したとする疾病の症状、化学物質を吸引し続け急性期の症状が慢性化したもの、あるいは、化学物質を吸引し続けたことによる遷延化した症状が発症したとする諸症状については、化学物質暴露と因果関係があるものとは判断できない」と結論づけ、不支給処分を下しました。


runより:この壁の厚さが労災の難点と言えます。

「王子労基署」という部分も重要で分署で判断されてしまいます。