Ⅳ 運搬(輸送)管理
「劇物」または「危険物」に該当するものは、それぞれの法律を順守するほか、次の事項を守ること。
1.一般注意事項
(1) 営業所、店舗または事業所の外で運搬する場合は、防蟻剤の飛散、漏洩、流出またはしみ出しを防止するための手段を講じること。
(2) 容器、運搬具の点検、積載方法のチェックを十分行うこと。
(3) 特に、劇物を輸送する場合は、容器の破損により外部に漏れ出ることのないように注意する。 (昭33.8.22 付薬発第315 号)
(4) 容器または被包(材質は、金属板、紙、プラスチック、ファイバー板、ゴム類、合成繊維、麻、ワラまたは木製)に収納されていること。
(5) 蓋または弁は閉じる等の方法で密閉すること。
(6) 缶はキャップでしっかり閉じて、垂直に固定して輸送すること(横にしないこと)。
(7) 液物の缶は、施工業者(運搬者)のトラックの後部に転倒しないようにして載せること。
(8) 液物缶は、乗物の運転者と同じ空間また呼吸域で輸送しないこと。
(9) 震災対策は、地震の際、防蟻剤等の薬剤の被害を最小限にするための備えを実施する。
(転倒、落下、混触発火の防止)
2.危険物関係
(1) 車両には防毒マスク(空気呼吸器または酸素呼吸器の隔離式全面形で代替可)、保護手袋、保護長靴、保護衣(不浸透性のもの)を常備しておく。
(2) 危険物(液物)の場合の運搬容器の材質は、鋼製、アルミニウム板、ブリキ板、ガラス等があり、密封状態での保管可であり、液漏れのないものとすること。
(3) 運搬に際しては、危険物は、容器の外部に次の表示を行うこと。
a.危険物の名称、危険物の等級、化学名ならびに第4 級の危険物のうち、水溶性または油状性ほかの表示を行う。
b.火気厳禁。
(4) 運搬、移送に際しては容易に持ち去られないように厳重に管理すること。
(5) 高圧ガス保安法第2 条に掲げる高圧ガスまたは、120 立未満の容器に充填された液化石油ガス、圧縮・天然ガスまたは不活性ガスとの混載はしないこと。 (政令第29 条第6 号)
(6) 運搬容器の積み重ねの高さは、3m 以下とする。 (政令第29 条第7 号)
3.毒物・劇物関係
(1) 「毒物・劇物」においては、事故の際の措置について「応急措置に関する基準」を運搬者等に所持させること。 (昭50.11.6 付薬務局安全課長、監視指導課長通知)
基準内容
a.毒・劇物の名称
ア.化学名
イ.毒劇物取締法における毒劇物の区別または指定名
ウ.性状
b.措置
ア.漏洩(少量、多量)
イ.出火時(周辺火災の場合、着火した場合、消火器)
ウ.暴露、接触時(急性中毒と刺激性、医師の処置を受けるまでの救急方法)
エ.注意事項
オ.保護具
(2) 毒劇物運搬時には、運搬する数量の如何にかかわらず、イエロー・カードを携行させること。 (平8.5.13 付薬安第55 号)
(3) 1 回につき1 トン以上運搬する場合は、容器または被包の外部に、その収納した劇物の名称または成分名を表示すべきこと。 (毒劇施行令40 条の3 第2 項)
(4) その他
防蟻剤としては、石油系溶剤を使用することが多いので、運搬事故の心得として次のことに留意しておくこと。
[漏洩時] 風下の人を避難させる。漏洩した場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。
付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
作業の際は、必ず防護具を着用する。風下で作業しない。
(少量の時)
漏洩した液は、土砂等に吸着させて空容器に回収する。
(多量の時)
漏洩した時は、土砂等でその流れを止め、安全な場所に導き、流れの表
面を泡で覆い、できるだけ空容器に回収する。
[出火時] (周辺出火の場合)
速やかに容器を安全な場所に移す。移動可能な場合は、容器及び周囲に
散水して冷却する。
(着火した場合)
初期の火災には、粉末、二酸化炭素、乾燥砂等を用いる。大規模火災の際には、泡消化剤等を用いて空気を遮断することが有効である。
[消火剤] 粉末、二酸化炭素、乾燥砂、泡