◆セラリーニ研究への反論
セミナー後半では、冒頭で触れた生物学者・セラリーニ氏の研究への反論として、残留農薬研究所で「ラットを用いて実施した発がん試験」などを紹介した。
それによると、遺伝子組み換え作物の栽培が始まる以前の実験(1993~95年)と、同作物の栽培開始以降の実験(1997~2012年=実験用のラットも食べている可能性が高い)を比較したところ、ラットの乳腺腫瘍の出現頻度は、前者で3%、後者で4%。このことから、「統計学的には大差はない」と結論づけた。
◆「安全」と「安心」は別
こうした「科学的な情報」をきちんと伝えれば、消費者の抵抗感を払拭できるのか。
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の蒲生恵美氏は、遺伝子組み換え作物がなかなか受け入れられない理由を「専門家と消費者の意識のズレ」にあると指摘する。
専門家は消費者の知識不足というが、消費者は知識よりも安心を求める傾向が強いという。「日本人が食の安全でもっとも高い関心を示すのは偽装表示。騙されていないか、に注目している」(蒲生氏)。
そして、安全性には情報提供が有効だが、安心のためには信頼関係の構築が必要と語った。
ここは重要なポイントだろう。
日本では、遺伝子組み換え作物を使用した場合の表示義務が、豆腐や納豆、味噌など、極めて限られた食品にしかない。
食用油や醤油など、大半の食品は表示の対象外だ。
また、加工食品で表示義務があるのは、上位3品目に限定(重量比5%)されている。表示がなければ、消費者は自ら判断することができない。
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の蒲生恵美氏