・3.海外の状況
(1)リスク評価機関等
①国際がん研究機関(IARC)
1991(H3)年の評価の結果、カフェインはグループ3(ヒトに対して発がん性であるとは分類できない)に分類されています(5)。
②オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)
2010(H22)年にカフェインに関するファクトシートを公表しました。主な内容な以下のとおりです。
・カフェインの摂取量について、カフェインの作用のひとつである不安作用(anxiety)をもとに、3 mg/kg 体重/日を指標として設定した。
この量は、子供(5-12 才)では一日約95 mg、成人では一日約210 mg に相当する。
・カフェインの添加をコーラ等の清涼飲料(カフェインの上限含有量が145 mg/kg)とエネルギー飲料(カフェインの上限含有量が320 mg/l)のみに限定した。
・エネルギー飲料について、子供、妊婦もしくは授乳中の女性及びカフェインに感受性の高い人々には不適である旨を表示するよう義務付けた(6)。
③ニュージーランド食品安全庁(NZFSA)
2010(H22)年に公表したリスクプロファイルにおいて、健康な成人がカフェインを400mg/日(体重70 kg の成人の場合:5.7 mg/kg 体重/日)まで適度に摂取しても、健康への悪影響の可能性はないと公表しています。
なお、子供のカフェイン摂取による長期的な影響の可能性に関する報告はないとしています(3)。
④フィンランド食品安全局(EVIRA)
2008(H20)年に、北欧諸国における子供と若者に対するカフェインのリスク評価を行い、以下の結論を公表しています。
・カフェインに対する耐性の増加、禁断症状、不安とイライラ感の副作用があることが示された。
・体重50 kg の若者では、15 mg/日のカフェインでは副作用はみられないが、50 mg/日を超えると耐性が増加する可能性がある。
耐性の増加は、通常の摂取でカフェイン依存症の兆候を示す。
125 mg/日を超えると不安とイライラ感がみられた。
・コーヒー1 杯(200 ml)で100 mg、エネルギー飲料1 本(330 ml)で105 mg、コーラ飲料1 本(500 ml)で65 mg のカフェインが含まれている。成人では少量のカフェイン(体重60 kg で85 mg)で睡眠障害が生じる可能性がある(7)。
(2)リスク管理機関等
①世界保健機関(WHO)
2001(H13)年に公表した「Healthy Eating during Pregnancy and Breastfeeding (BookletFor Mothers)2001」において、紅茶、ココア、コーラ飲料は、ほぼ同程度のカフェインを含み、コーヒーにはこれらの約2 倍のカフェインが含まれている。
このため、カフェインの胎児への影響についてはまだ確定していないが、妊婦はコーヒーの摂取量を一日3~4杯までにすべき、としています(8)。
②英国食品基準庁(FSA)
2008(H20)年に、妊婦のカフェイン摂取に関して新たな助言を公表しています。
妊婦がカフェインを摂り過ぎることにより、出生児が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとし、以前は300 mg を上限とすることが望ましいとしていましたが、新たな助言においては、妊娠した女性に対して一日当たりのカフェイン摂取量を200 mg(コーヒーをマグカップで2 杯程度)、に制限するよう求めています。
また、高濃度のカフェインは自然流産を引き起こす可能性があることを示す証拠がある、としています(9)。
③カナダ保健省
ア)2006(H18)年に、カフェインの一日当たりの悪影響のない最大摂取量に関するファクトシートを公表しました。
主な内容は以下のとおりです。
・カフェインに対する耐性は人によって著しく異なるため、健康に及ぼす影響を正確に評価することは非常に難しい。
健康な成人には、少量のカフェインは覚醒や集中力の向上などの良い効果があるが、感受性の高いヒトに対しては、不眠、頭痛、神経過敏などの影響をもたらす。
・健康な成人では、400 mg/日以内の摂取であれば副作用のリスクはないといえる。
健康な成人に比べ、子供の行動に及ぼすカフェインのリスクは高く、また、妊娠適齢女性の生殖に及ぼすリスクも高い。
・カフェインの一日当たりの悪影響のない最大摂取量について、12 歳以下の子供は2.5mg/kg 体重、妊娠可能年齢女性は300 mg/日、その他の健康な成人は400 mg/日までとする。
・カフェインの含有量は、コーヒー1 杯(237 ml)当たり約135 mg、紅茶1 杯(237 ml)当たり43 mg、緑茶1 杯(237 ml)当たり30 mg、コーラ1缶(355 ml)当たり36~46 mg、など(,10,11)。
イ)また、2010(H22)年に、カフェイン摂取について注意喚起を行いました。主な内容は以下のとおりです。
・少量のカフェイン摂取はほとんどのカナダ人にとって懸念はないが、過剰摂取は不眠症、頭痛、イライラ感、脱水症、緊張感を引き起こすため、特に子供や妊婦、授乳中の女性は注意すること。
・健康な成人は最大400 mg/日(コーヒーをマグカップ(237 ml 入り)で約3 杯)までとする。
・カフェインの影響がより大きい妊婦や授乳中、あるいは妊娠を予定している女性は最大300 mg/日(マグカップで約2 杯)までとする。
・子供はカフェインに対する感受性が高いため、4 歳~6 歳の子供は最大45 mg/日、7歳~9 歳の子供は最大62.5 mg/日、10 歳~12 歳の子供は最大85 mg/日(355 ml 入り缶コーラ1~2 本に相当)までとする。
・13 歳以上の青少年については、データが不十分なため、確定した勧告は作成しなかったが、一日当たり2.5 mg/kg 体重以上のカフェインを摂取しないこと(12) 。
④オーストリア保健・食品安全局(AGES)
2010(H22)年に、妊婦および授乳中はアルコール及びカフェインの摂取を控えるよう注意喚起を行いました。
カフェインについては、一日当たりの摂取量が300 mg を超えないよう
勧告しています(13)。
海外のリスク管理機関等の状況をまとめると、下表のようになります。
一日当たりの悪影響のない最大摂取量飲料換算 機関名
妊婦 コーヒー カップ3~4 杯 世界保健機関(WHO)(8)
300 mg/日 コーヒー カップ4~6 杯(150ml/杯) オーストリア保健・食品
安全局(AGES)(13)
200 ㎎/日 コーヒー マグカップ2 杯 英国食品安全庁(FSA)(9)
300 mg/日 コーヒー マグカップ2 杯(237 ml/杯) カナダ保健省(10,11,12)
子供 2.5 ㎎/体重/日コーラ1缶(355 ml)当たりのカフェイン
子供(4~6歳) 45㎎/日 含有量 36~46 mg
子供(7~9 歳) 62.5 ㎎/日
子供(10~12 歳) 85 ㎎/日
健康な成人 400 ㎎/日 コーヒー マグカップ3 杯(237 ml/杯)