早期警告からの遅すぎる教訓16 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・21.14 神経系腫瘍の全国的な長期傾向を監視する必要性
各国の脳腫瘍に関する全体的な発症データは、症例対象研究で観察された携帯電話と脳腫瘍の関連性を適格または不適格にするために使われるかもしれない、と指摘されてきた(Aydin 等,2011;Ahlbom とFeychting,2011;Deltour 等,2012;Little等,2012)。

フレイ[Frei] 等(2011)がデンマーク研究で提示した見解を支持する際に、アールボムとフェイッチング(2011)は、関連性が高いデンマークがん登録ではなく、スウェーデンがん登録(1990 年代以降、脳腫瘍発症が全体的に増えていないことを示す)から、全体的な脳腫瘍の発症データを参照した。
中枢神経腫瘍、とくに悪精度の高い神経膠腫の報告でスウェーデンがん登録の質は、重く問われてきた(Bergenheim 等,2007;Barlow 等,2009)。

デルトワ[Deltour]等の論文(2012)で、スウェーデンは人口と症例の約40%を明らかにした。

従って、スウェーデンがん登録への脳腫瘍症例の過小報告は、確かさが少ないデルトワ等の研究で結論されるだろう。
デンマークでは、2000~2009 年の間、脳腫瘍と中枢神経系腫瘍(結合)の年ごとの発症率が、統計学的に有意に増加した。

男性は+2.7%(95%CI=1.1-4.3)、女性は+2.9%(95%CI=0.7-5.2)(NORDCAN)。

最近更新された脳腫瘍と中枢神経系腫瘍の結果が、デンマークで公表された。

脳腫瘍と中枢神経系腫瘍の年齢標準化発症率は、2001~2010 年にかけて男性で40%、女性で29%まで増えた(Sundhedsstyrelsen,2010)。
デンマークがん登録に基づく、ごく最近の報道発表は、過去10 年間で最も悪性度の高い神経膠腫のタイプである、神経膠芽種の発症率が約4 倍になったと発表した。
http://www.cancer.dk/Nyheder/nyhedsartikler/2012kv4/Krafting+stigning+i+hjernes
vulester.htm)。

今までのところ、これらの発症データは一般に公開されていない。

コラム21.3 IARC とその発がん性の分類
IARC は潜在的な発がん性の害、つまり「いくつかの要因の下でがんを引き起こすことができる物質」を評価する。

一方、がんのリスクは、がんの害への被曝で予期される発がん影響の評価だ。

IARC モノグラフは、表題の「リスク」という言葉の歴史的存在にも関わらず、がんの害の評価の実践だ。
IARC は過去40 年に渡って研究されてきた1000 近くの、発がんの可能性のある危険な物質を5 つに分類してきた。

これらは証拠の強さの違いによって変わる。証拠の強さが高い純から並べると、グループ1:ヒトへの発がん性が「確立」したもの、アスベストやディーゼルエンジンの排ガス、タバコ、エックス線など(108 物質)。

グループ2A:おそらく発がん性があるもの、テトラクロロエチレン等(64 物質)。

グループ2A:発がん性の可能性があるも
の、輸送機関の排ガス、鉛、DDT、そして今では携帯電話を含む無線周波数電磁界等(272 物質)。

グループ3:発がん性物質と分類できない。証拠が不十分で他の分類が認められないからだ(508 物質)。

グループ4:おそらくヒトへの発がん性がない物質。ヒトと動物の両方で、がんの影響に対してかなり強い証拠に基づく。
とくに議論を起こすグループ、つまり2A と2B の意味を明らかにするのは
役立つだろう。
IARC は入手できるがんの証拠の異なるタイプを評価する場合、証拠の三つの異なる強さを選択した。

評価した証拠は主にヒトから、動物から、がんの因果関係の生物学的メカニズムの考慮からもたらされる。

最後の証拠は、それらががんを起こすかどうかというより、発がん物質がどのようにがんを起こすかについての理解を提供できる。
IARC で使われた証拠グループの主な強さは、「十分」「限定的」「不十分」
だ。例えば、グループ1 はヒトでの「発がん性の十分な証拠」がある物質が
含まれる。

グループ2A は、「ヒトではがんの証拠が限定的」だが、「動物ではがんの証拠が十分ある」物質を含む。

無線周波数電磁界の分類であるグループ2B は、「ヒトでのがんの証拠は限定的で、動物では十分な証拠が少ない」、そして「チャンスやバイアス、混乱因子が合理的な信頼性で除外されない」物質だ。

「発がん性の不足を証拠が示唆している」のはグループ4 に使われる。(IARC,2006,p.19-20)。
同じ分類グループの中の異なる物質は、非常に異なる証拠の種類と各物質に特有の被曝状況に基づいて評価された。

非常に特異的な特徴に従って、いくつかの2B 物質は、蓋然性の幅の下部にあり、他のものは二つの蓋然性の一つに近く、残りのものはその間のどこかにある。

ドライクリーニングの蒸気やコーヒー等、グループ2B の中の271 物質からいくつかの発がん物質を無作為に選んで大雑把にひとまとめにすることで、ジャーナリストや他の人たちは、がんのリスクの可能性について、ただでさえ難しい議論を複雑にするのに一役買っている。

各物質はそれ自身の証拠で考慮される必要がある。
リトル[Little]等(2012)は、アメリカの1992~2008 年の神経膠腫の発症率を
研究し、2011 年に発表されたハーデル・グループのプール分析の結果(Hardell等,2011a)と、2010 年のインターフォン発表(Interphone StudyGroup,2010)での携帯電話使用と関連する神経膠腫のオッズ比の結果を比較した。

しかし、論文のアブストラクトや図では公表されなかったが、ウェブ上の付表で見ることができる重要な方法論的問題は、ロサンジェルスSEER 登録の60~64 歳の男性に観察された率に基づいて基準分類としたという点だ。これらのデータは、全体のデータセット、18 歳以上の男性と女性、12 人のSEER 登録での評価率に使われた。

そのため、非常に多くの仮定が行われた。「ある研究(スウェーデン)で報告されたような、携帯電話の使用と神経膠腫のリスク上昇は…アメリカの人口データで観察された発症傾向と一致しない…」というリトル等の結論は、科学的証拠からほど遠く、研究で使われた欠点のある方法で示す可能性があるだろう。

それどころか、悪精度の高い神経膠腫が、統計学的に有意に年間の発症率を増やしたことを、彼らが実際に示したことは興味深い。

1992~2008 年のSEER データで、+0.64%、95%CI は0.33 から0.95 だった。

その結果は、研究グループによって、それ以上にコメントされていない。

分析疫学の結果を退けるために、エイディン等(2011)やデルトワ等(2012)、
リトル等(2012)のように、記述的なデータを使う場合、より多くの注意が必
要だ。

方法論的な欠点に加えて、記述的研究で分かっていない脳腫瘍のその他のリスク因子への被曝での変化等、全体的な発症率に影響を与える他の因子があるかもしれない。

がんの発症は、病気の開始、進行、促進よって決まる(Hazleton 等,2005)。

RF 電磁界の発がん性のメカニズムはまだ明らかになっていないので、脳腫瘍発症に関する記述的データは限定的な意味がある、という視点を支持する。