・21.10 ハーデル・グループとインターフォン研究のいくつかの論評と議論
これまでに、携帯電話とがんに関するメタ分析と論評がいくつかあり、それ
らは、この問題を疫学的に研究する挑戦、今までに発表された主要な研究の方法論的な限界、それらの結果を解釈する上での困難さを述べた。
例えば、インターフォン研究の結果のいくつかは、リスクを過小評価する傾
向のある観察バイアスやリコールバイアスのせいで、被曝についての異なる誤分類を示す。
インターフォン研究では、症例群と対照群の両方で参加率が低かった。
例えば、症例の50%と対照の40%しか参加しなかった国もあった。
生存者を対象にしたハーデル・グループ研究の場合、悪性脳腫瘍の症例の90%、良性腫瘍の88%、対照の89%が回答した点と、この低回答率は比較される(Hardell等,2006b,2006c)。
死亡した症例は、インターフォン研究の参加者として計算されたが、ハーデル研究では、悪性脳腫瘍に関する別の副研究に含まれた。
症例の約40%は、インターフォン研究では病院で面談された。
その上、面談されたのが症例者か対照者か、常に面談者に知られていた。コードレス電話の使用は、インターフォン研究では適切に評価されなかったか、少なくとも報告されなかった。
なお、これらの方法論的点に関する議論は、他でも知ることができるだろう(Hardell 等,2008;Kundi,2009)。
ミュン[Myung]等(2009)は、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクに関する、発表された全ての論文の結果と方法を続いて比較した。
彼らは、その時入手できた異なる国のインターフォン研究の結果に基づいて、ハーデル研究はインターフォン研究より質が高い、と結論を出した。
しかし、ミュン等(2009)の論評では、ある重要な問題が取り上げられていな
い。
13 耳の前の頬にある腺の腫瘍。
14 公式サイト(http://interphone.iarc.fr/
)によると、インターフォン研究は2012 年2 月に終了した。
すなわち、ハーデル・グループは、インターフォン研究グループと対照的
に、コードレス電話の使用も評価したことだ。コードレス電話のRF 電磁界発
生は、何度も指摘されてきたように、デジタル式携帯電話からの電磁波と同じ規模だ(Hardell 等,2006d;Kundi,2009;Redmayne 等,2010)。
さらに、コードレス電話は通常、携帯電話よりも長い通話で使われる(Hardell 等,2006b、2006c)。
インターフォン研究で行われたように、コードレス電話の使用を「非被曝」群
に含めることは、リスクに対する評価を偏らせるだろう。
インターフォン研究のように、症例者に臨床で面談するのは、重大な不利に
なる可能性があり、倫理的な問題がある。
当時、患者は手術等から十分に回復しておらず、診断、治療、予後について十分に情報を与えられないかもしれないし、医薬品による鎮静状態だったかもしれない。
実際、デンマークでのインターフォン研究では、言葉を思い出す問題(失語)や麻痺による筆記や描く問題のために、患者の点数は対照群よりも有意に低かった(Christensen等,2005)。
明らかに、観察バイアスは、これらの臨床面談によって導かれただろう。
それに比べて、ハーデル・グループの症例群は、診断から約2 か月後に郵送で質問表を受け取り、対照群と同様にリラックスした状態で答えることができた。
全症例と対照は、異なる被曝を確認し、明らかにするために電話で質問された。
これは、症例か対照か分からない状態で行われた。
リコールバイアスと観察バイアスの可能性は、ハーデル等による二度目の症例対照研究で調べられた(2002)。
無線電話の使用は、過去にがんになったと報告したか、質問票へ記入するのに家族が手伝ったかに関わらず、症例と対象で類似性があった。電話で質問する間の潜在的な観察バイアスは、質問後に症例と対照で被曝変化を比較することで分析された。
有意な差は見られず、結果を観察バイスで説明することはできないことを示した。
さらなる詳細は、その論文のディスカッションを参照(Hardell 等、2002)。
全ての質問は、体系的な教育と実施要項を用いて訓練された人たちによって実施された。
ミュン等の論文は、携帯電話業界を代表する、例えばロウリー[Rowley]とミ
リガン[Milligan](2010)によって論評された。
彼らは、インターフォン研究は業界の影響から独立していたと主張した。
しかし、携帯電話業界は、インターフォン研究に550 万ユーロを提供し、いくつかの国々では、業界によって更に資金が提供された。
その上、研究の実施要項によると、他の団体もオブザーバーやコンサルタントとして、研究グループに参加するかもしれない、とある。
これらの団体は、業界やその他の関係組織の代表を伴うかもしれない…さらに、業界やその他の関係団体の代表は…公表の少し前(最大で7 日間)に知らされるべきで、科学的な団体や素人が研究結果を入手する前に情報を得るべきだ、とされている(IARC,2001)。
ロウリーとミリガンは、ハーデル研究には、選択バイアス、情報バイアス、
リコールバイアスの証拠と、著しく高く報告された参加率がある、と主張した
(Rowley とMilligan。2010)。
これらの急場しのぎの声明は、著者らや参照文献によって立証されていない。高い参加率は、症例対照研究で質を高くするための事前要請だ。
他の科学者たちは、ハーデル研究の結果をもっと好意的に分析し
(Kundi,2009;Myung 等,2009;Mead, 2009;Cardis とSadetzki,2011;Levis 等,2011)、IARC は、RF の証拠の評価のためにハーデル・グループの結果とインターフォン研究グループの結果を主に信頼した。
カーディスの論評はとくに興味深い。
彼女はインターフォン研究のコーディネーターだからだ。
他のインターフォン研究の参加者であるサデツキーとの共著のその論評で、ハーデルとインターフォン研究の方法論的な強さと弱さを十分に議論した後で彼らは次のように結論づけた。
研究結果の異なる潜在的なバイアスの規模と方向を評価すること、そして脳腫瘍のリスクについて携帯電話のネット影響を評価することは不可能だ。
上記で述べた論争の全体的なバランスは、しかしながら、潜在的な関連性(つまり、携帯電話と脳腫瘍の間の)の存在を示唆する。
彼らは次のように結論づけて締めくくった。
単純で抵コストな方法、メール送信やハンズフリー、電話のスピーカー機能の使用などは、携帯電話から脳への被曝をかなり減らすだろう。
従って最も確実な科学的な回答が出るまで、とくに若者の間で、そのような予防(原則)的選択が望ましい(Cardis とSadetzki,2011,p170)。
runより:かなり難しいお話で理解するのは大変ですが電磁波が体に良くないという事を証明しようとする論文なので分かる程度理解すればまずは十分だと思います。
この様な論文がある事が電磁波問題解決に繋がると思うだけでも良いと私は考えています。
今日は残り全部掲載しますね。
章の区切りに合わせるので長い記事も短い記事もあります。