・21.9 インターフォン研究2000-2010:意見の相違と遅れ
インターフォン研究は、WHO の独立機関であるIARC の指導の下で行われ
た、携帯電話使用と脳腫瘍リスクに関する国際的な共同研究だ。
その研究は、RF 電磁界への潜在的な健康影響を研究するために、専門家グループのいくつかの忠告によって初められた(McKinly,1997;Cardis 等,2007)。
2000 年から2004年の異なる期間で13 か国、16 の研究センターで行われた。
そのコストは約2200万ユーロで、そのうち550 万ユーロを企業が寄付した(IARC, 2010)11。
インターフォン研究の各国の分析のなかには、異なる結果を生じたものがある。
いくつかは陽性、つまり脳腫瘍の増加を見いだし、いくつかは陰性、つま
りリスク減少、すなわち一見したところは「防御的な」電磁波の影響を発見し
ている。
研究に参加した著者等は従って、一致した結論に達するのが困難だった。そして、国毎の結果発表と、全体的な研究結果発表の間には4 年の開きがあった。
一つのグループは、伝えられる所によれば、とくに10 年以上の被曝群の結果を分けて分析した場合、インターフォン研究は全体的に携帯電話と脳腫瘍の間に陽性の関連性を示した、と考えた。
他のグループは、リスクの兆候を発見せず、脳腫瘍の見かけ上の過剰さは研究デザインと方法の直接的な結果だ、と見なした。第三のグループは、どちらの立場もとらなかった。
全体的なインターフォン研究の結果の発表は、最終的にIARC 局長のクリストファー・ワイルド[Christopher Wild]によって始められた。彼は、2010 年5月に発表された結果を最終的に得るために、科学者達の間で十分な合意を調整した。
携帯電話使用と髄膜種の関連性は全体的なインターフォン研究では見られなかったが、その一方で、小集団の分析では、最も高い被曝群、つまり携帯電話を1640 時間以上使った人たちで、神経膠腫のリスクが統計学的に有意に増えたことを示した。
1640 時間は、1 日あたり1 時間30 分の割合で、10 年間使用した時間に相当し、オッズ比は1.40 倍(95%CI=1.03-1.89)だった(Interphone StudyGroup,2010)。そのリスクは同側被曝でさらに増加し(オッズ比1.96 倍、95%ハーデル研究のコストは約410000 ユーロで、スウェーデン労働環境基金、Cnacer-och Allergifonden,Cancerhjalpen、Telia, Fondkistan, オルベロ大学病院がん基金から資金提供された。
CI=1.22-3.16)、神経膠腫の最高被曝群では、脳で最も被曝した部分、頭頂葉の腫瘍リスクが高くなった(オッズ比1.87 倍,95%CI=1.09-3.22)。
しかし、対立する科学者の間でとられた妥協案は、違う方向を向いている二
つの相対する文章を併記することだった。
神経膠腫のリスク増加と、髄膜種ではずっと少ないリスク増加、最も高い被曝レベルと同側被曝について、そして頭頂葉での腫瘍に関して神経膠腫で、リスク増加の示唆があった。
続いて、…偏りとエラーは、私たちがこれらの分析から導くことができる結論の強さを制限し、因果関係(太字は著者等による)の解釈を妨げた(Interphone Study Group,2010)。
原因と影響の繋がりの強さが、「リスクの科学的疑念」から「論理的な確実性」を経て「強い関連性」へどのように変わるのか、そして最も強い証拠を求める「因果関係」についての説明はなかった。
タバコと肺がんの論争の最中に書かれたブラッドフォード・ヒル[Bradford Hill]の論文で説明された(Hill,1965)、この証拠の強さの連続体は、インターフォン論文では説明されなかったのだ。これはメディアと公衆が、「因果関係がない」を、携帯電話と脳腫瘍の「関連性が無い」と見なしたであろうことを意味する。
他の疫学者は、むしろ有意なニュアンスを見いだした。
国際疫学ジャーナルで発表された、インターフォン研究の結果に添えられた
論評で(Saracci とSamet, 2010)、インターフォン研究の結果の主な結論は、洗練されてあいまいで、…(それは)全く正反対の解釈を許容する、と述べられた。
彼らは、なぜインターフォン研究の結果がリスクを過小評価しそうだったのか、最初の被曝から普及する前までの短期的な潜伏期間など、いくつかの方法論的な理由も指摘した。10 年以上の被曝期間は、インターフォンで研究された症例の10%以下だった。
タバコを含む現在確立した発がん性物質の中で、最初の被曝から、または最初の10 年間でリスクが増えたと確かに確認されたものは一つもない。
インターフォン研究の「あいまいな」結論の文章は、そのため、メディアが
正反対の結論を報告することを許してしまった。
例えば、2010 年5 月17 日付のイギリスのデイリー・テレグラフ紙は、インターフォン研究が携帯電話からの脳腫瘍のリスクの証拠を示したと報道した。
(http://www.telegraph.co.uk/health/7729676/Half-an-hour-of-mobile-use-a-day-increases-brain-cancer-risk.html
)。
一方、BBC ニュースは同じ日に、リスクはないと報道した(http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8685839.stm )。
このメディアの正反対の報道パターンは、いたるところで広く繰り返された12。
12 EEA はこの混乱を予測し、異なるインターフォン・グループの対立する見解を、同じ科学的文献で、異なる論争とはっきり示したデータ解釈とともに、それぞれ一緒に発表するべきだ
さらに、公衆と政策決定者の混乱は、インターフォン研究者の異なる声明が
メディアで報道されたために続いた。
例えば、マイクロウェーブ・ニュースは、インターフォン研究のコーディネーターであるエリザベス・カーディス[Elisabeth Cardis]が、全体的に…その結果は実際の影響を示す、と考えていることを5 月17 日に報道した。
オーストラリアのインターフォン研究の参加者であるブルース・アームストロング[Bruce Armstrong]は、それは神経膠腫のリスク増加についていくぶんの兆候を示すが、私は確信を持って言うことができない、と述べた。
イスラエルのシエガル・サデツキー[Siegal Sadezki]は、結果はリスクの兆候で一貫し、因果関係(太字は著者等)の解釈について十分な強さがないものの、予防(原則)的政策を支持するには十分だ、と言った(http://www.microwavenews.com/Interphone.Main.html
)。
それに対し、他の共著者であるフェイッチング[Feychting]は、10 年以上の
携帯電話の使用は脳腫瘍のリスク増加を示さなかった、と考えた
(http://www.i-sis.org.uk/EEA
_Hihlight_Mobile_Phone_Cancer_Risks.php)。
スウェーデンのインターフォン研究の参加者であるアールボムは、これらのデータにも過去のデータにも、ここで関わる何らかのリスクを示すものは実際に何も無い、と中国国営テレビに語った
(http://www.youtube.com/watch?v=TllmreWZdoA
)。
インターフォンのデータの後日の発表で、脳腫瘍部分で携帯電話使用から概算されたRF 量は、インターフォン・グループの一部で神経膠腫のリスク増加にも関連していた。
オッズ比は、診断の7 年以上前の概算された腫瘍の中心で吸収された比エネルギー(J/kg)の合計累積量が増えるとともに増加した。
最も高い被曝群の20%で、オッズ比は1.91 倍(95%CI=1.05-3.47)だった(Cardis等,2011)。
この重要な結果は、腫瘍の誘発について吸収された電磁波の量(被曝/累積使用時間の年月の代わりより適正な)を初めて関連させたが、メディアの注目をごくわずかしか集めなかった。
適切さがいっそう少ない方法に基づく同様の研究は、インターフォン研究グ
ループの他の部門によって後に発表された。
下記参照(Larjavaare 等、2011)。
結果は今や聴神経腫についても発表された(Interphone Study Group,2011)。リスク増加は、参照データの前に同側での携帯電話使用を始めてから10 年以上で、そして累積使用1640 時間以上で見られた。オッズ比は3.74 倍だ(95%CI=1.58-8.83)。
とIARC に早い段階で提案していた。
これは、メディアと公衆がインターフォン研究者の間の意見が相違する理由を、よりよく理解するのに役立っただろう。
しかし、この提案は採用されなかった。
耳下腺の腫瘍13についての総合的なインターフォン研究の結果は、未だに発表されていない。
IARC がインターフォン研究をすでに終わらせた14ので、スウェーデン(Lonn 等、2006)とイスラエル(Sadezki 等、2008)の結果だけが有効だ。
左右の偏り(使用する側と腫瘍のリスク)や使用量(累積時間)を考慮した小集団の分析は、リスクを高めた。
しかし、他の研究の結果はリスク増加について一貫したパターンを示さなかった(Auninen 等、2002;Hardell 等、2004;Duan等、2011;Soderqvist 等、2012a)。長期間使用の結果は、しかしながら、恐ろしいものだ。
runより:え~と・・・実はまだ3分の一を超えた所ですが一気に掲載すると読むにも大変だと思うので一旦ここでストップします。