無理解は悪だと思い知らされた事件2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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二 K学園のシックスクール問題
 本件の原告I君は、一九九六年四月、ラグビーで有名な大阪府下の私立K学園に入学した。

彼は、一九九四年に新築した自宅のシックハウスが原因で入学前には既に両親らとともにCSを発症していた。その症状は皮膚のアトピーや倦怠感を中心とするもので、授業中も集中力が低下してしまうことが多かった。

彼と両親は学校に対し医師の意見書や診断書を提出し、CSの症状への理解ある対応を求めたが、教師からは「けったいな病気やな」と罵られ、「やる気のない奴は教室から出て行け」と言って胸倉を掴んで教室外に引きずり出されるなどの暴行まで受けた。

これらが原因でPTSDにもなり、高校二年の途中からは全く学校に登校できなくなってしまった。

K学園はさらに「化学物質過敏症が治ったという診断書がないと復学を認めない。除籍処分にする。」と記された文書を送付し、CSであることを理由に事実上の退学処分を通知した。

学ぶ機会を心から欲していた彼は、同時に、シックスクールにより登校できていない他の多くの児童・生徒らのためにと決意し、K学園を相手に訴訟を提起した。
 
三 本件訴訟の争点
 本件訴訟の争点は、CSの生徒に対する学校の対応の不適切さであった。

被告K学園の注意義務を基礎付ける主な事実は、原告らが学校へ医師の意見書等を沿えて申し入れをしていたことであり、注意義務に反する具体的な行為が、教師による罵倒や暴行、生徒間のいじめ放置等の一連の行為であった。

ところで、私達が着目し背景事情として大きな意味をもったのが文部科学省が二〇〇一年一月に教育委員会・学校関係者に対して出していた「化学物質過敏症の生徒に対しては、その原因となる物質や量、当該生徒の症状などが多種多様であることから、個々の生徒の実情を正確に把握し、支障なく学校生活を送ることができるよう個別の配慮を行うこと」という内容の通知(一二国ス学健第一号)であった。

CSの症状は患者によって異なり、それ故、症状に応じた個別の配慮をなすのでなければ個々のCS患者の教育を受ける権利を実現することにはならないことを理解した通知と言える。

ところが、折角の通知も教育現場には一向に反映されておらず、ほとんどの学校において現実には「個別の配慮」が行われていない実態がある。