・長野県HP
http://www.pref.nagano.lg.jp/rinmu/shinrin/07hoanrin/04_kentoukai/kentoukai.html
農作物に対する無人ヘリコプターを利用した農薬空中散布の今後のあり方
平成23年5月
農薬の空中散布検討連絡会議
無人ヘリ農作物防除検討部会
1 はじめに
無人ヘリ農作物防除検討部会においては、無人ヘリコプター(以下「無人ヘリ」という。)による農作物防除の現状等を踏まえ、使用する農薬の種類や、より安全な農作物防除のあり方等について、外部有識者の意見をお聞きし検討を進めてきた。
特に、農薬空中散布を行う地域において、農薬空中散布の実施主体(以下「実施主体」という。)、そこに生活される者(以下「地域住民」という。)及び行政機関の3者が、病害虫防除の必要性を認識するとともに、人の健康への影響を防止するための体制の構築について、今後のあり方を検討し、農作物に対する無人ヘリを利用した農薬空中散布の方向を示すこととした。
2 部会における意見集約(検討結果)
(1) 農薬の空中散布に起因すると疑われる健康異常の症状は、体の小さな子供や化学物質に特異的に反応しやすい体質を持った方々等に発生しているとの見解がある。
(2) 農作物に対する無人ヘリを使用した農薬の空中散布は、水稲や大豆等の病害虫(カメムシ、いもち病等)の防除を効果的に行う有効な方法のひとつであり、高品質な農作物を、低コストで効率的に生産する上で今後も必要である。
(3) 農薬は、農薬取締法による登録の際、毒性等の試験を行い安全性が確認された上で登録されており、散布にあたっては、農薬に表示されている事項等を遵守し、無人ヘリ利用技術指針等に基づいて地域住民や環境等に配慮した危被害防止対策が講じられている。
このため、県の裁量で、無人ヘリによって農薬を空中散布すること自体を規制することはできない。
(4) これまで農薬の空中散布の際に実施されている危被害防止対策は、実施主体と地域住民との信頼関係を深めるための双方向性が不足している。
(5) 空中散布に使用する農薬(殺虫剤)には、有機リン系、ネオニコチノイド系、合成ピレスロイド系等の種類があり、毒性や昆虫に対する作用機序(注1)は種類によって異なる。
なお、散布後の気中濃度(注2)について、有機リン系農薬の一部では、散布後4日経過しても大気中から微量(「気中濃度評価値」(注3)を下回る)に検出された調査結果が示されているが、
ネオニコチノイド系農薬については平成22年度から環境省による調査が始まったところであり、現段階では客観的データは示されていない。
また、合成ピレスロイド系農薬の一部には、大気中に蒸散しにくい結果を示す農薬もある。
(6) 農薬の空中散布と健康異常の因果関係は明確でないものの、より人の健康への影響が尐ないとされる農薬を選択し、飛散防止対策(ドリフト対策)を強化した上で空中散布を行う必要がある。