においが怖い ―化学物質過敏症4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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〈患者を生きる:2063〉きれいな空気求めて自営

ギターショップでは医療用の空気清浄機が稼働する=大阪市東淀川区
■免疫と病気 においが怖い:4

 キャンパスの下見でにおいが我慢できなかった大阪市の入江紘司さん(28)は、大学進学をあきらめた。

受験もせず、23歳で大阪府立北野高校定時制を卒業すると、大阪府中央卸売市場(茨木市)でアルバイトを始めた。

2007年春のことだ。

 市場は、隣に川が流れているほかは周りに何もない。

職場も屋外にあり、「空気が良かった」。

 深夜に市場に向かい、アサリ、チリメンジャコなどの海産物を並べて準備する。

早朝に取引が始まると、買い付け業者の車まで特殊な荷台を操って運ぶのが主な仕事だった。

「給料はけっこうもらっていた」が、2年ほどで勤務先が倒産した。

 失業手当が出た間は休んだ。

収入が途切れると、大阪市内の別の市場で働いた。

仕事内容はそう変わらなかったが、新しい職場は排ガスがこもる構造だった。

アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が悪化した。

 半年足らずで、再び府中央卸売市場に働き口を見つけた。

しかし、ずっと仕事を続けられるようなきれいな空気が保たれる職場は少ない。

 「定職を得るには結局、自営ぐらいしかない」と悟り、定時制時代に打ち込んだギター演奏など音楽を職業にしたいと考えた。

調べると、最寄りの駅にギターショップはなかった。

11年5月、それまでのたくわえをはたいて店を構えた。

 合板と石膏(せっこう)ボードで囲まれていた30平方メートルの店舗を一からつくり直した。

 壁と床は無垢(むく)の杉板。

床をはがして梁(はり)まで変えた。

天井は「フォレストボード」と呼ばれる杉の皮やパルプ、コーンスターチを固めた自然素材で覆った。

「一応、自分がおれる状況をつくった」

 土足厳禁。

大きな医療用の空気清浄機が静かに稼働し、ウーパールーパー(アホロートル)2匹とイモリ5匹が暮らす。

 仕事がら、ライブハウスに配達に行くことがある。

たばこなどのにおいがきついと、我慢できずにその場から離れる。

動悸(どうき)が激しくなり、肌があれ、ヘルペスができることもしばしば。

そんなときは、早めに店を閉める。

「維持するのも、結構大変。寿命を削って、遊んでいるようなもんですわ」