〈患者を生きる:2061〉たばこの煙で肌真っ赤
中高一貫校へ進み、ラグビー部に入部した=入江紘司さん提供
■免疫と病気 においが怖い:2
刺激臭がある新居を小学5年のときに離れ、大阪市東淀川区の祖父の家に一家で避難した入江紘司さん(28)は、頭痛やめまいなどの不調がなくなった。
1996年、電車で片道2時間近くかかる中高一貫校に進学した。
心機一転。
期待に胸を躍らせ、強豪のラグビー部に入部するなど意気込んだ。
ところが、長時間の通学で、悪夢がよみがえった。
排ガスや整髪料、香水……。
様々なにおいが体にまとわりつき、気分が悪くなった。
これをきっかけに「反応するもの(悪臭)が一気にがーんと増えた」。
アスファルト工事に出くわした翌日からは、ポリ袋の「石油系」のにおいで頭が痛くなった。
たばこの煙が触れると皮膚が真っ赤に腫れた。
学校の床掃除のワックスやチョークの粉、プールの消毒剤、油性ペンなどのにおいでも体調を崩した。
2学期にはラグビー部を辞めた。学校も休みがちになった。
このころから、「シックハウス症候群」という名前が話題になっていた。
さまざまな建材を使い、湿気がこもりやすい高気密の建物で生活する人に起きる、頭痛などの症状の総称。
室内で繁殖するカビやダニなどへのアレルギーや化学物質の悪影響が原因だという。
「この病気と関連があるのではないか?」。
97年10月、シックハウス症候群などに詳しい北里大学病院(神奈川県)眼科の宮田幹夫(みやたみきお)医師(76)を訪ねた。
新居の空気を調べた汚染物質の数値と、大阪の医療機関で化学物質への反応を検査した結果を持参。
「空気の汚れに片っ端から反応する」と言われた。
ただ、シックハウス症候群はまだ「正式な病名」ではなかった。
目が上下になめらかに動かない症状があり、診断名は「中枢神経機能障害」となった。
この診断書を中学へ提出。定期的に症状を説明し、一貫校の高校へ進んだ。
だが休みがちな状況は変わらない。
登校しても体調が悪く反応が鈍い。
教師から「やる気のないやつは出ていけ」といわれ、高1の冬に不登校になった。
「この先何を目標にして生きていったらいいのかわからない。体はボロボロで生きることすらつらい毎日です」
学校に行けない悔しさを、こう手記にまとめた。
runより: 北里大学病院は神奈川県です、北里研究所病院とは違います。