室内空気中化学物質低減対策と建材・家具 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・特 集

4 室内空気中化学物質低減対策と建材・家具

藤田清臣

松下電工株式会社 住建事業企画室

はじめに

 平成8年6月、「シックハウス」問題が指摘され、その後、学校や幼稚園などの公共建築物での「シックハウス」「シックスクール」問題が注目されている。

 「シックハウス」問題の間接的な原因として、人間の抵抗力が従前に比べて落ちていること、住宅等の建築物の気密性、断熱性が高くなるのに従い、空気の浄化作用が不十分になったこと、日用品など化学材料加工製品を大量に室内に持ち込むことなどが指摘されている。

 一方、その直接的原因としては、製造時に化学物質が使用されている建材や家具、あるいは日用品等に残存する揮発性有機化合物(VOC)が、室内に発散することが指摘されている。

1. 建材・家具と揮発性有機化合物(VOC)

 一般に広く使用されている建材や家具は、木質材料を加工した製品であることが多い。

合板や繊維板などの木質材料に表面化粧加工を施し、壁材や床材、キッチンや収納、あるいは机や椅子などの組立加工を経て建材や家具が作られている。

木質材料製造時に使用される主な接着剤には、ホルムアルデヒドを含むものがあり、このような材料からホルムアルデヒドを発散することにつながっている。

また、木質材料の化粧加工時には、その化粧材を接着する接着剤や塗料に溶剤を使用するものもあり、トルエンやキシレンなどを発散することにつながっている。

2. 室内空気質汚染原因除去への規制

 VOCによる室内空気質の汚染を議論するにあたって、その汚染度合いを評価するためのガイドラインとして使われているのが、厚生労働省が公表した室内濃度指針値である。

この指針値は、原因物質除去への規制の根拠のひとつとして色々な場面で引用されている。

 次いで法的規制として、国土交通省により2000年に施行された住宅性能表示制度がある。

その性能項目のひとつ「空気質性能」では、使用する建材のホルムアルデヒド等級性能に応じた性能等級区分が導入された。

また、2001年には、現場でのホルムアルデヒド・トルエン・キシレン・エチルベンゼン・スチレンの5物質について、「室内空気中の化学物質の濃度等」の項目も、選択項目として追加された。

 その後、住宅産業に多大の影響をもたらしたのが、平成15年7月1日施行されたシックハウス対策に係る建築基準法の改正である。

 改正法が対象としたVOCは、ホルムアルデヒドとクロルピリホスである。

ホルムアルデヒドに関する規制内容の骨子は3点である。

一つ目は、法律で規定されたホルムアルデヒド発散建築材料を居室に使用する場合には、そのホルムアルデヒド発散等級に応じて、使用面積制限を受けること。

二つ目には、建築物の全ての居室には、24時間稼動型の換気設備を設置すること。

三つ目には、天井裏等にも指定等級以上のホルムアルデヒド発散建築材料で仕上げるか換気設備の設置を行うかどちらかの措置を行うこと、である。

 特にホルムアルデヒド発散建築材料には、それぞれの材料ごとに日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)に、ホルムアルデヒド発散量に応じた3段階の等級区分(F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆)を設けた。

そして、その等級ごとに室内に使用する場合の使用面積を床面積の何倍までと規定している。

 クロルピリホスに関する規制内容は、この薬剤を使用した建材等の使用を全面的に禁止するとしている。

 また、家具については、製品がF☆☆☆以上の等級区分の材料から製造されていることとし、家具そのものへの規制は規定化されていない。

3.VOC発散低減化への具体策

 ホルムアルデヒド発散低減化の具体策としては、使用する木質材料などの主材料や接着剤・塗料などの副資材を、全て新しい規格に定められたF☆☆☆☆クラスの材料に切り替えられ、加工仕上げがされている。

 また、他のVOCであるトルエンやキシレンなどの発散を低減化するための具体策としては、建材や住宅設備の製造時に使う接着剤や塗料を、VOCを発散しない水溶性の製品に転換するなど、VOC発散量の低減化に努力している。

家具業界も、VOC発散低減化に総力を挙げて取り組んでいる。

4.低減化対策後の効果

 改正法の施行前後より、建材設備市場では、ホルムアルデヒドの発散量が最も少ないF☆☆☆☆クラスの製品への移行が進み、F☆☆☆以下の製品は殆ど流通していない。

 一方、国土交通省では、室内空気中の化学物質濃度の実態調査を、平成12年度より継続的に実施してきている。

厚生労働省の室内濃度指針値を越える住宅は、年々減少傾向にあり、また、新築住宅におけるホルムアルデヒド濃度は低濃度側に分布している。(表1)

改正建築基準法の効果も大きく出ていることが見て取れる。

むすび

 室内空気質汚染の主原因物質であるホルムアルデヒドの建材・住宅設備あるいは家具からの放散低減状況は、改正建築基準法による規制もあって、大幅に進展したといえる。建材や家具から放散されると想定されるトルエン・キシレン・エチルベンゼン・スチレンも、VOC発散抑制に向け、無溶剤系の接着剤や塗料への転換が進んでいる。

 いずれにしても、建材や家具から室内空気質の汚染源であるVOCを低減することは至上の命題であり、関係者のなお一層の努力を期待してやまない。


化学物質過敏症 runのブログ-3