*色々と誤りが多い巷の情報
電磁波の問題を考えるときに、よくある間違いですが、原因と結果を混同するケースがあることです。
以下は、とあるメールマガジンにあった内容の一部です。
一部を引用します。
「神経電流によって発生する磁界は、10‐12乗テスラ以下の微弱な磁界です。
普通の生活で、電気製品が発生するマイクロテスラオーダの電磁波であれば、神経系が影響を受けないのは不可能です。」
さて、このメルマガの文章を考察していきます。
人間の体は電気で動いている部分があります。
神経などは電気で信号が伝わります。
それでは、体内に電池があってそこから電流が流れるのか といえば、そうではなく、イオンの密度の変化などで、等価的に電気が流れるのです。
こうした神経電流などによって、微弱な磁界が発生します。
これらの磁界を体の外から観察することができます。
そのためには特殊な条件を整え、特殊な測定器を用います。
結果として脳からは脳磁図(電気的な信号として捕らえる脳波に対応して考えてください)、心臓からは心磁図(電気的な動きを把握する心電図に対応して考えてください)などが得られます。
これらは医療に用いられています。
この磁界の大きさは非常に微弱で、10のマイナス十二乗テスラといった大きさです。
ここまでは、上記メルマガも正しいのです。
さて、人間が外部にある磁界に暴露したとします。
人間の体にこの外部磁界によって、電流が流れます。
これを誘導電流といいます。
現在のICNIRPなどの国際的な電磁波暴露ガイドラインでは、周波数が低い場合は、誘導電流の大きさを推定して、外部磁界による誘導電流が、体内に存在している電流の大きさを超えないように規定しています。
もともと体に電流が流れているから、その電流を乱さないようにする、という考えに立っているのです。
こうして定められた暴露しても良い最大の磁界の大きさは、たとえば50Hzという低周波磁界の場合は、0.1ミリテスラ(=100マイクロテスラ=1ガウス)となっています。
100マイクロテスラを超える磁界に暴露すると、それなりに大きな誘導電流が体に流れて、体に影響が出るかもしれないのです。
普通の生活環境で、暴露する数マイクロテスラもしくはそれ以下の磁界では、大きな電流は体に誘導しないのです。
数マイクロテスラでは、人間は誤動作しないのです。
現在の電磁波の健康影響の研究は、この電流で規定できないもっと低いレベルでの健康影響がないかが、研究されています。
ここまでくると、上記メルマガの後半の部分が誤りであることがわかると思います。
なぜ誤ったか?
体内の神経電流が流れて発生する磁界は確かに10のマイナス十二乗テスラ程度の微弱です。
体が磁界で動いているわけではないのです。
体の外の磁界に暴露したとき、外部の磁界が直接、体内にある磁界と干渉を起こす訳ではないのです。
体が磁界で動いているのであれば、体はきっと影響を受けるでしょう。
体が磁気を通す電磁石や鉄などで作られているのであれば、ロボットはきっと外部の磁界の影響をモロに受けるでしょう。
人間はそうした材料でできていいません。
外部の磁界によって、体に誘導電流が流れます。
したがって、外部の磁界によってどの程度の誘導電流が流れるかを、見極めることが肝要で、外部の磁界の大きさを、直接、体が発している磁界と比べることは、ロボットには適用できても、人間様には適用できないのです。
ロボットに適用できることと、人間様に適用できることが異なることをきちんと理解していない、ここに上記メルマガの誤りがあります。
ということで、電磁波の生体影響は、かなり複雑です。