・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
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NEWS LETTER Vol.74
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・お米の収穫(生産者)から精米表示(消費者)まで
会員・弁護士 浅野 明子
2012年3月2日、主食である米の流通や等級を決める検査方法などについて勉強するため、(財)日本穀物検定協会関東支部業務課長の高橋勇氏を講師にお迎えしてお話を聞きました。
米流通の歴史―政府管理から自由な流通へ―
平安時代初期から税(年貢米)として機能していた米は、虫食い、ネズミの食害、カビ、量目不足などについて、厳しい規制がありました。
明治6年に年貢米制度が廃止されましたが、品質の統一を図るため、明治34年に大分県で県営検査が行わたのを皮切りに全国で県営検査が行われるようになり、昭和22年には国営検査となり、昭和26年に「農産物検査法」が制定されました。
他方、戦時の食糧難から昭和17年に「食糧管理法」(食管法)が制定され、農家(生産者)から政府への米の売却が義務化され、お米は配給で国民(消費者)の手へ渡りました。
生産者価格、消費者価格、流通等は政府が一括管理をしていました。
昭和30年代の高度成長期に米価の引き上げが行われ、米の生産量が増加、豊作も続き、一転米不足から米余りの時代になります。
昭和44年には自主流通米制度ができ、政府を経由しない新たな米のルートができました。
平成6年に食管法が廃止され、代わって「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(食糧法)が制定されました。
幾度か一部改正が行われ、政府の役割は需給の見通し、備蓄運営、輸入数量の決定などを策定するだけとなり、民間の創意工夫を最大限活用した民間主導に変わりました。
農産物検査の受検義務もなくなり生産者は米を自由に売れるようになりました。
平成18年には農産物検査が完全民営化されました。
農産物検査と等級
「農産物検査法」に基づく農産物検査は(1)品位等検査と(2)成分検査があります。
(1)品位等検査には①種類(「もみ、玄米、精米、小麦、大麦」などの別)、②銘柄(「新潟県産コシヒカリ」など。
なお「コシヒカリ」は品種です)、③量目、④荷造り及び包装、⑤品位の検査があります。
水分の含有量、被害などを検査し等級格付けをするのが⑤の検査です。
1等級は、整粒(充実した粒のこと)70%以上、形質(国が配布する「一等標準品」に比べて充実度や粒揃い、光沢などが劣っていないかを肉眼で検査)、水分15%までといった規格に加え、被害粒などの合計が15%までという規格があります。
被害粒などの内訳にもそれぞれ規格があり、死米7%まで、着色粒0.1%まで、異物穀粒の割合がもみ0.3%まで、麦0.1%まで、異物0.2%までなどと厳格に決められています。
検査は、包装されているものは穀刺しで試料を抜き取り肉眼で検査します。
たとえば、1000粒中に着色粒が1粒あれば0.1%なので1等ですが、2粒あると0.2%ということで2等になってしまいます。
さらに4粒(0.4%)あると3等に格付けされます。
1等と2等の価格差は産地・品種によって異なりますが、生産者にとって格付けはまさに死活問題といえます。
たとえば、1等と2等の価格差が1俵(60kg)で1000円の差があるとして、5000俵検査した場合、1等か2等かでは500万円の差が出ます。
しかし、生産者から買い取った米は精米工場で着色粒や異物が除去され、着色粒や異物が除去された精米が消費者の手に渡ります。
一般の消費者は1等米が一番おいしくて、次に2等米がおいしいと思っていますが、生産される精米の品質はさほど差異はありません。
何が違うのかというと2等米は1等米に比べて未熟粒、被害粒、着色粒等が多く混入しているので、とう精過程で除去される量が多くなり、製品の量が少なくなります。
それで玄米で等級ごとに価格差を付けているのです
日本穀物検定協会とは
昭和27年に設立され、食品・農産物等の円滑化と食の安全安心を目的とした第三者検定機関で、農産物検査、農産物検査員育成研修、米の食味試験、飼料・包装証明、米の品種鑑定、穀類の産地判別、かび毒・微生物分析、残留農薬・重金属分析、放射能測定、JAS認定などの事業を行っています。