・手記を書いた中学生は、下記のように化学物質に反応し、その種類によって身体の症状が異なるという。
・有機リン系化合物(農薬、防蟻剤、消毒剤など)
……関節痛、筋肉痛、頭痛、吐き気、目がず
きずき痛む、目がかすむ、のどの痛み、鼻血。
・ホルムアルデヒド(合板の接着剤など)……のどの痛み、目のひりひり感と痛み、頭痛、その他有機リン系化合物と同じ反応。
・タバコの煙……アトピーの悪化、頭痛、息切れ、動悸、筋肉痛、意識もうろう。
・車の排気ガス……舌のしびれ、意識もうろう、
頭痛、アトピーの悪化、関節痛、筋肉痛。
・整髪料……吐き気、頭痛、関節痛、筋肉痛、鼻血。
・ペンキ、インク……動悸、息切れ、鼻血、頭通、関節痛。
また、化学物質過敏症は、同じ汚染空気を吸っていても発症する人としない人がいる。
個人差が大きいことが、化学物質過敏症を一般に理解されにくくしている。最近では、テレビで報道されたりして徐々に一般の認識も高まってきていると思われるが、患者の症状は精神的疾患ではないかと誤解される場合も多い。
学校で起こっている問題学校でも汚染空気などに反応して体調不良を訴える児童生徒が増えている。
図1は、学校内における過敏反応を起こす物質を調査したものであるが、実に様々な物質がシックスクールの原因となっている。このように児童生徒の健全な成長を妨げる問題であるが、学校における問題はそれだけではない。
冒頭の手記にあるように、アトピー性皮膚炎が悪化して、クラスメートからは「うつる」「きたない」などと罵られ、教師からは「ちょっとくらい我慢しろ」と暴言を吐かれた。
クラスメートはともかく、児童生徒等に化学物質過敏症について説明し、患者への暖かい思いやりを教えるべき教師の無知が、肉体的苦痛に加えて精神的苦痛まで強いてしまっているのである。
次代を担う子供たちを教育する学校でこのような由々しい状況が生まれていることに対して、問題解決に向かって動き出した教育委員会がある。
埼玉県の教育委員会は、2003年3月、「一人一人の児童生徒が安心して学習できる学校環境づくりを目指して 県立学校のシックスクール問題対応マニュアル」を作って、学校がシックスクール対策を行い、シックハウス症候群や化学物質過敏症患者の児童生徒に適切な対応をするよう指導している。
このマニュアルからどのくらいの児童生徒が化学物質過敏症になっているのか、現状(2002年6月実施の実態調査結果)を見てみよう。
埼玉県内で、化学物質過敏症と診断された児童生徒のいる公立学校は、高等学校、養護学校、中学校、小学校をあわせると31校、過敏症児童生徒数は49人である。
県立学校の児童生徒数は総計約73万人であるから、10万人当たりにすると約7人の患者がいることになる。(図2)
この10万人当たり7人というのは、シックスクールによるものとばかりは言えない。
シックハウスによるもの、あるいはその両方の影響を受けた場合もあるであろう。しかし、いずれにしても、10万人当たり7人という発症率は、容認できるリスクなのか、あるいは早急に対策が必要なリスクであるのか評価しなければならない。
なお、シックスクール対策のマニュアルは、長野県教育委員会でも作成しており、ともにインターネット上に公開されている。これらのマニュアルは、一般住宅やビルの対策にも、十分な参考になるから、利用されることをお勧めする。