Q.9:日本での生活環境中の電磁界レベルを教えてください。それは規制値やガイドラインの値と比較してどれくらいのレベルですか?
A.9: 我が国における生活環境中の電磁界レベルは、人体への影響があるとされているレベルの数千分の一から数十分の一以下、国際的なガイドラインの指針値の数百分の一から数分の一以下です。
【解説】
○ 鉄道の車内外及びホーム
我が国においては、鉄道の車内外及びホームでの静磁界の強さ(磁束密度)は1mT(=1,000μT)以下46です(p.8 参照)。
一方、静磁界についてのICNIRP ガイドラインにおける公衆に対する限度値は400mT(=400,000μT)です(p.32 参照)。
これまでの研究で人体への影響があるとされているレベルは、2~4T(=2,000,000~4,000,000μT)です(p.12 参照)。
これらの値を比較すると、鉄道の車内外及びホームでの静磁界の強さは、人体への影響があるとされているレベルの数千分の一以下、ICNIRP ガイドラインにおける限度値の数百分の一以下です。
○ 家電製品及び送電線などの電力設備
我が国においては、家電製品から生じる超低周波磁界の強さ(磁束密度)は概ね 10μT 以下47、送電線などの電力設備からの強さは概ね20μT 以下48です(p.9~10 参照)。
一方、超低周波磁界についての ICNIRP ガイドラインにおける公衆に対する指針値(参考レベル)は、50Hz 及び60Hz で200μT です(p.31 参照)。
これまでの研究で人体への影響があるとされている体内誘導電界のレベルは、網膜に閃光現象を生じるしきい値の50mV/m であることがわかっています(p.12 参照)。
46 独立行政法人交通安全環境研究所 平成14 年度研究発表「鉄道の磁界に対するEMC について」
http://www.ntsel.go.jp/forum/14files/14-02k.pdf
より。
47 財団法人家電製品協会「家電製品から発せられる電磁波(低周波磁界)測定調査報告書」(平成15 年)より。
48 経済産業省 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会電力安全小委員会 電力設備電磁界対策ワー
キンググループ報告書(平成20 年)http://www.meti.go.jp/report/data/g80630bj.html
より。
人体モデルを用いた換算では、50mV/m の体内誘導電界を生じる磁束
密度は約1.5~2.2mT(=約1500~2200μT)です。
これらの値を比較すると、家電製品及び電力設備から生じる超低周波磁界の強さは、人体への影響があるとされている体内誘導電界を生じるレベルの百分の一から数十分の一以下、ICNIRP ガイドラインにおける指針値の十分の一以下です。
○ 携帯電話基地局などの無線設備
我が国においては、携帯電話基地局から生じる高周波電磁界の強さ(電界強度)は5V/m 以下49(電力密度では0.0066mW/cm2 以下に相当)です(p.10~11 参照)。
一方、高周波電磁界についての ICNIRP ガイドラインにおける公衆に対する指針値(参考レベル)は、周波数によって異なりますが、電界強度で27.5~61V/m、電力密度で4~10W/m2(=0.4~1mW/cm2)です(p.32 参照)。我が国の電波防護指針でも、電磁界強度指針はこの参考レベルと同等(電界強度で27.5~61.4V/m、電力密度で0.2~1mW/cm2)です(p.39 参照)。この参考レベル以下であれば、全身平均の比吸収率(SAR)の基本制限の0.08W/kg 以下になります。
これまでの研究で人体への影響が生じるとされている全身平均SARのレベルは4W/kg 以上です(p.13 参照)。
これらの値を比較すると、携帯電話基地局から生じる高周波電磁界の強さは、人体への影響が生じるとされているレベルの百分の一以下、ICNIRP ガイドラインにおける指針値の十分の一から数分の一以下(電界強度で計算した場合)です。
図7に、人体への影響が生じるとされているレベル、ICNIRP ガイドラインの指針値、及び生活環境における電磁界のレベルの比較を示します。
49 総務省生体電磁環境に関する検討会(第 3 回、平成21 年7 月13 日)配布資料「生電3-17:電磁環境の把握への対応について」http://www.soumu.go.jp/main_content/000032354.pdf
の図中の数値を基に、電界強度をdBμV/m からV/m に換算しています。
図 7 人体への影響が生じるとされているレベル、ICNIRP ガイドラインの指針値、及び生活環境における電磁界のレベルの比較