・13. 他の物質との相互作用
フェニトロチオンとカーバメートによる相乗作用は別に述べた。
これ以外にも種々の環境汚染物質や医薬品との相互作用が示されている。
フェニトロチオンとマラソンとを組み合わせた影響は相加より大きい。1:1 の組み合わせで増強は最も著しい(予想されるLD50 の半分)。
他の試験した有機リン、ブロモホス・アミヂチオン・トリクロルホンでは増強は観察されなかった(National Registration Authority for Agriculturaland Veterinary Chemicals, 1999)。
マンガンとフェニトロチオンは相乗作用を示し、毒性を強くする。
成熟雄のラットに0 または10 mg/kg の塩化マンガンを腹腔投与し、3 日後0 または260 mg/kg のフェニトロチオンを経口投与した。
フェニトロチオンの毒性に対するマンガンの影響は、フェニトロチオン投与3 時間後に、血液や脳・心臓のコリンエステラーゼ活性と、脳と心臓・肝臓・血漿のカルボキシエステラーゼ(CE)と酸性フォスファターゼ(AC)・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)活性で調べた。
これらの酵素に対するフェニトロチオンの影響は、マンガンによって増強された(Malik and Srivastava 1987)。
医薬品
パーキンソン症候群治療薬トリヘキシフェニジルはフェニトロチオン中毒時に症状の発現を遅らせることがあると思われる(Futagami et al. 2001)[骨格筋を見よ]。
14.人間と動物中でのフェニトロチオンの変化と人間の被ばく
フェニトロチオンは動物と昆虫・植物中で、モノオキシゲナーゼによって酸化され、それによりP=O 基を含む誘導体(フェニトロオクソン)に変化する。それはもとのフェニトロチオンより強力なコリンエステラーゼ阻害物質である。
その後、P-O-CH3 結合の開裂によってさらに分解が起こる。
肝臓内でP-O-CH3 結合は、パラチオンで起こるP-O フェニル結合開裂より速く代謝され、フェニトロチオンが哺乳動物で低毒性であることに貢献している(ExtensionToxicology Network 1995)。
マウスやラット・テンジクネズミでの研究は、フェニトロチオンが急速にほ乳類の消化管から吸収されることを示している。
酸素類似物の存在が、調べた全組織で証明されており、この酸素類似物はフェニトロチオンの静脈注射後1 分後に血液で検出された(Extension ToxicologyNetwork 1995)。
5 日間の連日投与し他2.5、5 mg/kg/日のフェニトロチオンは、12 時間以内に排泄され、蓄積を示さなかった(Extension Toxicology Network 1995)。
ラットの皮膚に投与したフェニトロチオンは、はじめの1 時間に最も急速に消失し、わずかに1%より多い吸収率を示している。
31 時間後、皮膚以外で、最も高い濃度は骨の軟骨部に見られた(Extension Toxicology Network 1995)。フェニトロチオンは軟骨にどのような影響を与えるか未だはっきりした報告はない。
志願者が、2.5-20 mg/人の範囲の経口投与を1 回受けた場合、尿中のp-ニトロ-m-クレゾールの最大濃度は12 時間内に達し、全排出量のほとんどは24 時間の間に排出された。
回収量は直接投与量に相関したが、回収割合は投与量に逆相関した。
1 例を除き、コリンエステラーゼ活性はこれらの投与後でも正常のままであった(Extension Toxicology Network 1995)。
300 mg/kg の1 回投与より、30 mg/kg の10 回投与後に、フェニトロチオンの半減期は長いことが目立つ。
この影響はくり返し投与の間に化合物の代謝抑制によって起こり、マイクロソーム酵素による脱メチルと加水分解との阻害に関連する(Extension Toxicology Network 1995)。
フェニトロチオンは組織内で脱メチルスミチオンやジメチルチオ燐酸・チオ燐酸に急速に分解される(Extension Toxicology Network 1995)。
フェニトロチオンの酸素誘導体は、細胞のマイクロソーム分画で形成され、主な代謝器官は肝臓と腎臓である。
主な排出産物は3-メチル-4-ニトロフェノールである、それはさらに3-カルボキシ-4-ニトロフェノールに酸化される。
他の代謝物は脱メチル誘導体である(ExtensionToxicology Network 1995)。
フェニトロチオン散布の間、18 人が臨床検査の対象となった。
血漿コリンエステラーゼレベルを一定の期間で調べたが、異常は発見されなかった。
フェニトロチオンが散布されたナイジェリアの多数の住民で血液コリンエステラーゼが分析された。散布1 週間後、20 人の散布者で血液コリンエステラーゼの50%低下が記録されている(Extension Toxicology Network 1995)。
2.5 から20 mg(約0.042-0.33 mg/kg 体重)のフェニトロチオンが対象23 人1 回経口投与された。
代謝物3-メチル-4-ニトロフェノールの尿排泄は24 時間でほぼ完全であり、排泄のピークは12 時間後に起こった。
血漿コリンエステラーゼレベルは、0.33 mg/kg のフェニトロチオンを投与された対象の1 人を除くと、減少しなかった(Extension Toxicology Network 1995)。
生活環境の汚染
農薬の無神経な使用が時折行われている。
農薬の影響を受けやすい幼い子どもが集まる幼稚園や保育所、小学校付近やその通園通学路、家の近くでも散布されることがあり、健康への直接的な影響やその後の神経系などへの影響が懸念される。
Kawahara et al. (2005)は1-6 才の幼い子どものいる家や育児施設中の空中の有機リン農薬測定を、日本の農業社会で農薬使用後に行った。
屋内と屋内でトリクロルホンとフェニトロチオンは良く検出され、トリクロルホンの分解産物であるジクロルボスもトリクロルホン使用後に検出された。
使用された農薬の屋内や室内の濃度は農薬が使用された農場との距離が短いと増加した。
このことは屋外で使用された農薬が室内に侵入することを示している。
屋外と室内の農薬濃度の比は農薬使用の間に窓が開いていた家で閉じていた家より大きい。
1 日あたりの吸入被ばくに占める割合は、室内空気の吸入被ばくの中央値で、トリクロルホンで76%、ジクロルボスで86.3%、フェニトロチオンで45%であった。
幼稚園や保育所での吸入被ばくは家と同じかそれより多く、これらの施設での汚染レベルは子どもの被ばくに強い影響があることを示す。
推定した1 日の吸入被ばくは農薬が使用された農場への距離が近ければ近いほど強かった。
runより:長い記事お疲れ様でした((。´・ω・)。´_ _))ペコ
有機リンの怖さは十分伝わったと思います。
別に分かる部分だけでいいんです、私もそうですからwww