・魚に対する致死量以下の影響
● 形態解剖的変化:ファトヘッドミノーの腹部の腫れが起こる。
1 mg/lに被ばくした幼弱なアトランテックサーモンは膨らんだひれで泳いだ[1]。
● 行動変化:いくつかの濃度のフェニトロチオンに被ばく2時間後、種々の対抗行動(追いかける、逃げる、かむなど)が顕著に減少する。
快適行動comfort behavior(水をたたく、強く進むなど)は毒物濃度上昇にともなって増加するが、高い濃度で減少する。
場所選択の変化が起こった。
高い濃度では、一部の魚は位置を維持できず、押し流された。
5時間の被ばく後、魚は腹をふくらまして水面近くを泳いだ。
運動は非常に遅いので、サケは網で捕まるのを避けようとしなかった。
1 mg/lのフェニトロチオンに被ばくしたサケの幼魚は、ブルークトロウトによる捕食をより受けやすかった[1]。
● 生化学的変化:致死量以下の様々なフェニトロチオン濃度被ばく後、アセチルコリンエステラーゼ活性は13%から25%阻害された。
ニジマスの赤血球や鰓・心臓・血清のコリンエステラーゼ活性は、フェニトロチオン被ばく1時間以内に減少した[1]。
● 呼吸への影響:フェニトロチオンに被ばくしたラベオ=ロヒタの酸素消費は、殺虫剤濃度上昇にともなって次第に減少した。
被ばくは、48時間LC50よりわずかに高い濃度で、呼吸数と鰓の振幅を増加させる[1]。
● 成長への影響:経口投与したフェニトロチオンはニジマスの成長に影響しない[1]。
甲殻類・水生昆虫類
● この化合物は甲殻類と水生昆虫に極めて有毒であると考えられ、水生の虫に中程度の毒性を持つ。
淡水無脊椎動物への毒性(48時間あるいは96時間EC50)は、フェニトロチオンは水性無脊椎動物に極めて強い毒性があることを報告している(ガマルス=ファスキアツス)[1]。
● 様々な発達段階のタイガーエビ(Penaeus japonicus)幼生を様々な濃度のフェニトロチオンまたはそのオクソン体フェニトロオクソンに曝した。
ノープリウスとゾエア期のエビ幼生はフェニトロチオンに非常に抵抗性があり、24時間LC50は1.84 ppmであった。
しかし、フェニトロチオンの毒性は幼生段階の進行とともに、特に幼生後に突然増加し、ノープリウス期の約2,600倍の増加を招いた。
一方フェニトロオクソンの毒性は幼生段階を通じてほとんど変化せず、24時間LC50は7 ppbであった。
フェニトロチオンとフェニトロオクソンに対する幼生のアセチルコリンエステラーゼの感受性はゾエアから要請後までほとんど変化せず、フェニトロチオンとフェニトロオクソンの平均I50(50%阻害)はそれぞれ195と0.015μMであった[2]。
● オオミジンコを、20±2℃で、0、0.029、0.042、0.087、0.23、0.44μg/lの濃度のフェニトロチオンに、21日間動的な生活環毒性研究で被ばくさせた。生存や成体の平均長・最初に卵を持つまでの日数の統計的分析は、最大許容毒物濃度限界は0.087と0.23μg/lであり、点推定最大許容毒物濃度は0.14μg/lと推定されたことを示した[2]。