・● 甲状腺(ホルモン)への影響:ジメトエートは血中甲状腺ホルモン濃度に影響を与える。
ジメトエート連日投与 (2、 4、8 mg/kg、30日間)による甲状腺機能への影響をマウスで調べた。
血清トリヨードサイロニン (T3) 濃度は有意に減少したが、血清チロキシン (T4) は中と高投与群で増加した。
しかし、血清の甲状腺刺激ホルモンは変化しなかった。
肝臓のtype-I iodothyronine 5'-monodeiodinase (5'-D)活性は減少していた。
これらの観察はジメトエートが引き起こす甲状腺機能の変化は下垂体甲状腺軸を通じるのではなく、T4からT3への甲状腺以外での転換の変化を通じることを示す [15]。
● 上皮小体(副甲状腺)への影響: 発癌実験の過程で雄ラットに副甲状腺過形性が見られた [7]。
● 循環器系への影響
○ 発癌実験の過程で雄ラットに多発性動脈炎が見られた [7]。
○ 一般に有機燐殺虫剤はアセチルコリンエステラーゼ阻害作用によって、生物に影響すると考えられている。
テンジクネズミに致死量ジメトエートを投与した場合心不全が起こるが、この場合は心筋への直接作用によると考えられている [16]。
● 催奇的影響:ジメトエートにはネコとラットで催奇性がある [2]。
○ ネコに妊娠14日から22日に毎日12 mg/kg/日の市販ジメトエート製剤を投与し、妊娠43日に検査した。
12 mg/kg投与で39胎児中8胎児で正常より指が多かった [5]。
○ 妊娠したラットに投与した同じ量は骨形性に関連する先天異常と、体が小さいこと、膀胱の機能不全を生じた [2]。
○ ジメトエートはマウスで催奇性を示さない [6]。
変異原性:ジメトエートの変異原を否定する一部の研究があるが、多くの実験系や人間の研究でジメトエートの変異原性が認められている。
● 人間での影響
○ ジメトエート中毒後に死亡した患者 2 人で染色体異常が増加していることが知られている [1]。
○ ジメトエート製造工場の事故で空中ジメトエートに被ばくした消防士に中毒症状が現れた。
事故の2か月後に20人の末梢リンパ球を調べた結果、姉妹染色分体交換頻度が有意に増加していた。
消防士がジメトエート以外に、何に被ばくしたかは不明である [1]。
● 人間の培養細胞での変異原性
○ 人間の培養線維芽細胞で不定期DNA合成が陽性であった [1]。
○ 培養した人間のリンパ球にジメトエートを作用させると、姉妹染色分体交換頻度が有意に増加することが報告されている [1]。