・皮膚刺激
・ ダウケミカルの研究によると、クロルピリホスをウサギの皮膚に投与すると、発赤や浮腫 ・化学熱傷を生じ、不可逆的な熱傷を生じる。
クロルピリホスは皮膚に腐食性である[3]。
中間症候群
・ 生体内の半減期が長い、脂溶性の有機燐剤あるいはその代謝物が体の脂肪に蓄えられ、後に放出されて、重度の中毒症状を起こすことがあり、中間症候群と呼ばれる。
クロルピリホスでも中間症候群の発症が報告されてる。意図してクロルピリホスを飲んだ男性は、最初にコリン作動性症状を示したが、4日後に筋脱力や筋の低緊張 ・反射消失 ・呼吸困難を示し、人工呼吸を必要とした症例がある[15]。
遅発性神経障害
・ 遅発性神経障害は、一般に有機燐被曝後1-3週後に発症する神経障害である。
症状は四肢のけいれんや ・脱力 ・ひりひり感 ・感覚麻痺、下肢の麻痺、四肢麻痺などがある。
これは働きが神経障害標的酵素neuropathy target enzymeを阻害することにより起こるといわれているが、酵素の機能はよく分かっていない。
クロルピリホスは典型的ではないが、遅発性神経障害を起こす[1]。
・ クロルピリホスは遅発性神経障害を起こさないとされてきたが、ニワトリとネコで遅発性神経障害を起こすことが分かった。
遅発性神経障害を起こすには大量が必要である[1]。
・ 1か月と4か月の間、比較的少量の慢性被ばく(経口または経皮)をしたニワトリで、遅発性神経障害が起こっている。
1匹のニワトリは145日後に対麻痺になった[1]。
・ 42才男性が300 mg/kgのクロルピリホスを摂取した。
重度のコリン作動性症状が17日間続いた。30日後、末梢神経系の検査では異常がなかったが、リンパ球の神経障害標的エステラーゼ(NTE)が約60%阻害されていた。
43日に、患者は感覚異常と脚の弱まりを訴えた。
臨床検査や電気生理的検査 ・神経の生検は末梢神経障害があることを明らかにした[3]。
・ 1993年、声帯の麻痺や正常な反射の消失を含む、「命にかかわる」遅発性神経障害が、13才の少年で発生した。
それは、ゴキブリ駆除用のクロルピリホスの瓶を使って遊んでいるのが見つかった約2週間後であった[1]。
・ 1993年、クロルピリホス被曝後に遅発性神経毒性が現れた8人の患者を、医師が報告している。
駆除業者を除く患者は、家庭や事務所の、通常のクロルピリホス処理で被ばくした[1]。
・ 1982年から1990年の間にクロルピリホス中毒のために治療を受けた25人以上の患者の神経機能を測定した。
腕と脚の神経伝導速度は低下しており、指で神経変性が見られた。
これらの影響は遅発性神経毒性と一致していた[1]。
・生殖への影響
先天障害
・ 1996年、米ウェスターンミシガン大学のシェルマンは、母親のクロルピリホス被ばくによると思われる4人の先天異常の例が報告した。
その子どもたちは、脳 ・眼 ・耳 ・口蓋 ・歯 ・心臓 ・脚 ・乳首 ・性器に欠陥があった。
脳の障害は脳室 ・脳梁 ・脈絡叢 ・透明中隔に、性器の欠陥は停留睾丸 ・小陰茎 ・癒着した陰唇があった。
4人とも成長の遅れや重大な精神遅滞があった。
この子供たちは妊娠中にクロルピリホスに被ばくしている[7]。
・ 1993年に、ニューヨーク州のバーク家族で起こった災害の記録がある。
最年長の娘がよちよち歩きの時、イヌが運び込むかも知らないライム病を媒介するダニを殺すために、カーペットを規則的にクロルピリホスで処理し始めた。
二番目の子供は脳性麻痺と白内障を持って生まれ、発作を患っていた。
三番目の子供が同じ障害を持って生まれた時、医師はクロルピリホス処理によって生まれる前に障害を受けたかもしれないと同意した[1]。
・ ダウ=ケミカルの実験で、多量のクロルピリホスを経口投与すると、産まれる子どもは小さく、骨格異常を引き起こした。
より少ない量で、脳が露出することがある頭蓋の欠陥が増えた[1]。
・ ダウが行った妊娠ラットの研究は、クロルピリホスは子供の重量と生存が少ないことを示した[1]。
・ 致死量の千分の1のクロルピリホスを妊娠ラットに注射すると、胎児死亡が増加すし、生き残った子供の体重増加の低下と神経毒性を起こす[1]。
・ 雄ラットに注射すると、精巣の精細管を作る細胞の死亡を招く[1]。
・ クロルピリホスの生殖に対する影響はニューヨークの人工授精施設で、ホルスタイン牛にシラミを駆除するために皮膚に使った場合、起こったことが知られている。185匹の牛が病気になり、7頭の牛が死んだ。
病気後、牛は注意深くモニターされ、精子生産は以後6か月間57%から88%減少すると推定された。
最も重い病気の牛の精子生産は最も減少した。
第二の飼育場は、最初の飼育場が牛の病気と死亡について警告したので、牛をクロルピリホスで処理した後に、牛をすっかり洗った。
精子生産は7%低下した[1]。
・ 上記の事故後、牛の病気の原因がクロルピリホスであることを確かめるための実験で、実験的に被ばくした牛の精子生産が16%低下した[1]。
・ ドイツの研究者は、クロルピリホスが、子宮頸部の粘液や精液 ・母乳中で検出した[1]。
脆弱な人 ・発達段階
・ 呼吸器疾患 ・コリンエステラーゼに被ばくして間もない人 ・コリンエステラーゼ機能不全である人 ・肝機能障害のある人は、クロルピリホス被ばくによる危険が強い[2]。
・ 妊娠後期の母ラットにクロルピリホスを経口投与した場合、胎児脳内のクロルピリホスの代謝物 3,5,6-トリクロロ-2-ピリジノール濃度は、母ラットの 2-5 倍高いことが知られており、研究者らは胎児ラットが親よりも高いクロルピリホス被ばくを受けることを指摘している[16]。