有機リン:クロルピリホス4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・脳 ・行動への影響
 
人間の研究
子宮内や生後間もなく農薬に曝されると、子供(胎児)は急速に成長しており、細胞分化中であり、代謝(解毒)系が未成熟であり、重要な期間の発達中であるために、特に影響を受けやすいとされている。
 
 ・ ニューヨーク市のマウントシナイ医科大学のベルコビッツらの研究グループは、米国の市中心部で出生前の農薬被ばくの成長及び神経発達に対する影響を報告している。

彼らは有機リン(オクソン体)を解毒する酵素であるパラオクソナーゼ(PON1)及びクロルピリホスの尿中代謝物レベルとの関連も調べた。

この結果、クロルピリホス代謝物が検出された母親で、パラオクソナーゼレベルが低い場合、頭囲長(頭の周囲の長さ)が短いことが分かった。[17]
 
頭囲長が短いことは、脳の重さと相関することが知られており、以後の知能指数IQ及び認識能力の予測因子となる。

また脳の容積と注意欠陥多動性障害との関連も報告されている。

このため、ベルコビッツらは、これらの子供の追跡調査が必要であると述べている。
 
この研究は同じ環境毒物であっても母親の体の状態によって、子供(胎児)への影響が異なる可能性を示しており、人間は実験動物と異なり影響を受けやすい人と受けにくい人があることをも示している。

これはクロルピリホスに留まらないと思われる。
 
動物研究
 
 ・ 妊娠中にクロルピリホス被ばくをすると、胎児で脳の中のアセチルコリンエステラーゼやムスカリン性受容体に影響が表れることが知られている。また、生後の行動(立ち直り反射)に影響が表れる[5]。
 
 ・ 米デューク大学のグループはクロルピリホスの発達神経毒性に関する報告をした。

ラットの新生児に死亡や体重減少を起こさない、少量のクロルピリホスを投与し、発達中の脳(小脳 ・前脳 ・脳幹)への影響を調べた。

2 mg/kgのクロルピリホスを皮下注射された生後1日のラットは、調べた全ての脳の部位でDNA合成を阻害された。

生後8日でもDNA合成の阻害が起きるが、小脳では起きない。

生後1日にクロルピリホスを投与すると、脳全体で蛋白合成の阻害を起こしたが、生後8日には影響はない。

これらの結果は少量のクロルピリホスは、細胞分裂が起こる重要な期間に、発達中の脳に影響を与え、最終的には細胞やシナプス ・行動などの異常を起こすだろう[6]。
 
 ・ 1996年、ノースウェストルイジアナ大学のチャンダとポーペは、少量のクロルピリホスを妊娠中のラットに投与し、神経化学的変化と神経行動変化を調べた。

親ネズミの毒性はくり返し投与にもかかわらず現れなかった。

妊娠20日の胎児の脳のアセチルコリンエステラーゼ阻害は、生後3日の子供と比較して強かった。

脳のムスカリン受容体結合は胎生20日と生後3日で低下していた。

立ち直り反射と断崖回避試験はくり返し被曝後によって顕著に変化した。

これらの結果は、少量のくり返しクロルピリホス被ばくは、母親が中毒しなくとも神経化学的神経行動的変化を起こすことを示している[7]。
 
 ・ デューク大学のキャンベルらは、ラットにクロルピリホスを投与し、脳細胞の発達に対する影響を調べた。

生後1-4日のラットに5 mg/kgのクロルピリホス(成熟ラットの致死量の約1/20-60)を投与すると、死亡するラットが出た。

生き残ったラットでは脳幹の細胞数が大きく減少した。

前脳には影響しなかった。生後11-14日に投与した場合、生存や成長に影響を与えなかったが、細胞減少が起こる部位は脳幹から前脳に移った。

前脳で細胞数減少が起こるのは生後15から20日であった。

脆弱な窓を決定しているのは脳の成熟が関係していると思われる。

また、成長や生存に影響が現れなくとも、クロルピリホスは発達中の脳で細胞数減少を起こし、行動異常を起こすであろう[10]。
 
 ・ クロルピリホスの影響は、投与時期や性 ・脳の部位によって影響が異なることが報告されている。クロルピリホスは脳細胞発達や軸索形成 ・シナプス形成を生害する。

クロルピリホスを生後1-4日(1 mg/kg)あるいは生後11-14日(5 mg/kg)を投与下が、明瞭な毒性はなかった。

その後、子供(生後30日)と若い成獣(生後60日)の海馬と中脳 ・線条体 ・脳幹 ・大脳皮質でコリン作動性シナプスのマーカーであるコリンアセチルトランスフェラーゼ活性とヘミコリニウム-3の結合を調べた。

クロルピリホスは両方のマーカーを減らし、特にヘミコリニウム-3の結合に大きな影響を与える。

投与時期や性 ・脳の部位によっても影響が異なる。

海馬では早期あるいは後期投与はChATの低下を起こすが、早期投与は成熟しても続くヘミコリニウム-3のより大きな影響を起こす。

中脳では早期投与は海馬と同じ様な変化を起こす多、後期投与は雌に特に影響を生じる。性による差は線条体でも起こる。

対照的に脳幹への影響は雄で強く起こる。大脳皮質への影響は他の部位よりはっきりしない。

これらの研究結果は幼児期のクロルピリホス被ばくは成熟しても続くコリン誘う性シナプス機能に広汎な欠陥を起こすことを示す。

これらの影響は投与した長期間後、コリンエステラーゼ活性が回復した後に、持続あるいは出現する性選択的な行動変化を起こすと思われる [14]。