・注目すべきことは、症例とするには1 年以内に少なくとも2 回診断を受けなければならないとする非常に厳しい診断クライテリアにも関わらず、調査参加者の21%が喘息と診断されたことである。
この値はかなり高いように見える。少なくとも、論文の序論に引用されたように米国の18 歳以下の小児における喘息の有症率13%より高い。
おそらく、これは特定の集団を調査対象にしたことを示唆している。
これが観察された結果を説明するかも知れない。ただし、そのような種類のバイアスがどのように擬陽性の結果を生むかについてのもっともらしい説明は容易には考えつかない。
この研究は磁界ばく露と喘息との関連についての最初のコホート研究である。
磁界ばく露と喘息の間の関連付けはこの研究の優先的仮説ではなく、観察された関連を説明する既知の生物学的メカニズムはない。
観察された関連は偶然によって生じたということを可能性として考えるべきである。
著者らは、自分たちのデータセットにおいて、これまでの研究では観察されていないような、興味深い新しい関連があるのに気づき、それを公表することにしたのかも知れない。
関連がないものは公表されなかっただろうと推測される(パブリケーションバイアス)。
したがって、因果性について何らかの結論が出せるようにする前に、観察された関連を他の研究で確認する必要がある。
小児の喘息に関して進行中の多数の研究を考慮すれば、他の研究でこの問題に取り組むことは実現可能性があるであろう。
おそらく、ばく露評価は送電線までの距離のような粗い代替指標に頼れるはずである。
この研究は、磁界ばく露と喘息の間に真の関連が実際にあるか否かを推測する可能性も提供している。
もし関連が事実ならば、免疫系が関与することはありそうに思われる。
喘息と小児白血病に共通の基礎となる生物学的メカニズムがあるか否かについてさらに調査することに関心が持たれる。
喘息とアトピー(ある種のアレルギー過敏性反応を発症しやすい素因)に負の相関関係があるように、これは実際にありそうに思われる。
要するに、さらなる研究により磁界ばく露が小児の免疫系に影響を与えるか否かが明らかになるであろう。
これに関しては、妊娠中の母親のばく露または早期の小児にばく露の両方が重要かも知れない。
今回の研究では母親のばく露を測定しただけなので、これら2 つのばく露尺度の影響を分離することはできないが、両者は相関すると思われる。
* Professor Michael H. Repacholi
・イタリア ローマ大学La Sapienza 校 情報・電子・通信工学科 客員教授
・ 前 世界保健機関(WHO)放射線と環境保健ユニット 国際電磁界プロジェクト責任者