・出展:電磁界情報センター
http://www.jeic-emf.jp/index.html
・Rapid Response Group
マイク・レパコリ教授*
公表用評価書 2011 年11 月
論文
[母親の妊娠中の磁界へのばく露と小児の喘息のリスクとの関連], Arch
要約
著者達は、母親の妊娠中の磁界へのばく露と出生した小児の喘息のリスクとの間に関連があるか否かを調査した。
このカルフォルニアでの前向きコホート調査では、妊婦の磁界ばく露の24 時間測定を1回、妊娠の初期または中期に実施し、その後に出生した626 人の小児を13 年間追跡調査した。
母親の磁界ばく露の1mG が上昇するとともに、喘息のリスクは有意に上昇し、このような影響は第一子である小児、母親に喘息の病歴がある小児において他の場合より大きかった。
この研究は、強みも弱みも含め多くの問題を含んでいるが、このような関連を示した初めてのものである。
今回の知見はもっと大規模な研究で確認することが望ましい。
議論この疫学研究にはいくつかの強みがある。磁界ばく露は、診断前の測定で得られており、想起バイアスの生じる傾向を持たない。
前向き調査であるので、調査対象者が調査への参加を選択する確率が調査結果に影響することはあり得ず、選択的な参加によるバイアスは最小化された。
全ての小児において、喘息は臨床的に診断され、その後12 ヶ月以内に再確認された。診断はばく露状況関する知識を持たずに行われたので、診断の誤分類がばく露に関連することは考えられない。
それにも拘わらず、この研究は限界も持っている。
以下では、これらの限界が擬陽性の結果を生んだ可能性が高いか否かについて議論する。
磁界ばく露は、妊娠の初期または中期のある1 日における24時間測定に基づいている。
そのような比較的短期の測定が妊娠期間中の平均的ばく露を代表するか否か、また平均的ばく露に職場または自宅の磁界レベルがどの程度の影響を与えるかは不明である。
妊娠中の転居回数および転居がばく露評価に与えた影響に関するデータは示されていない。
したがって、この研究ではある程度のばく露の誤分類は避けられないよう見える。
前向きの研究デザインであるため、ばく露の誤分類が喘息と小児と喘息でない小児の間で違うことは期待されず、無差別的なばく露の誤分類となる。このような誤差は、擬陽性の結果を生むのではなく、リスク推定値を1 に近づける傾向がある。
興味深いことに、研究では磁界測定は典型的な日に実施されたと回答した母親の小児におけるリスクが他より高いことを見出した。
どの観察的研究においても交絡は重要な問題である。この研究は、そもそも、流産に対する妊娠初期の磁界ばく露の影響を調査する目的でデザインされた。
喘息との潜在的関連性は優先的仮説ではなかった。
したがって、喘息の潜在的リスク因子のいくつかに関する情報は収集されておらず、分析に取り入れることができなかった(例えば、社会的接触、ウイルス感染の前歴、環境たばこ煙ばく露、大気汚染ばく露、アレルゲンの摂取またはばく露)。
これらの因子が実際に磁界ばく露と関連するか、それゆえ交絡因子として考慮しなければならないかは不明である。
いずれにしても、母親について年齢、人種、教育、妊娠中の喫煙、喘息の病歴など、いくつかの喘息のリスク因子は考慮されている。
興味深いことに、調整されたリスク推定値は粗推定値よりいくらか大きかった。
このことからこれらの交絡は分析に大きな役割を持っていないことが示唆される。
もしこの研究において重要な交絡因子が欠けていたとすれば、観察された大きさのリスク推定値を生み出すためには、その交絡因子は磁界ばく露と強く関連しなければならず、かつ喘息の大きなリスク要因でなければならない。
カットポイントおよびばく露尺度の選択など分析における多くの面に問題があり、もしかしたらそれらが観察された関連を人工的に作り出したかもしれない。