・プラスチック関連化合物
プラスチックに使われているフタル酸類やポリカーボネートから溶出するとして最近問題になっているビスフェノールAに注目が集まっています。
ビスフェノールA
ビスフェノールAはエポキシ樹脂とポリカーボネート樹脂の生産に使われています。
これらのプラスチックは主に食品や飲み物の包装や容器、食器などに使われています。
樹脂は缶詰や瓶の蓋、水道管のような金属の被覆材料として一般に使われています。
これらのポリマーは、歯科治療にも使われています。
ラットの実験で、ビスフェノールAがエストロゲン作用を持つことが初めて報告されたのは1938年のことです。 (Dodds and Lawson, 1938)。
最近では、培養した人間乳ガン細胞でエストロゲン作用があることが1993年に発見されました。
そのホルモン作用は2-5 ppb (2-5 μg/?)という低濃度で発揮されるといわれています。
妊娠したラットに低レベルのビスフェノールAを投与すると、生まれた子の精巣の大きさと精子数が減少することが報告されています(ENDS、1955)。
筒井健機日本歯科大教授(薬理学)らの研究では、ハムスター胎児細胞にビスフェノールAを与えると、染色体異常が起こること、さらには細胞の癌化の一段階であると考えられている細胞の形の異常(形質転換)が誘導されることが知られています。
日本の疫学研究で慢性流産を起こす女性ではビスフェノールAの血中濃度3倍以上高いことが報告されていますポリカーボネート樹脂製の食器は広く使われていますが、ビスフェノールAが溶け出すことが知られています。
東京都は1998年にポリカーボネート製学校給食用食器とほ乳瓶からビスフェノールAが溶け出すかどうかを調べました。
その結果、給食用食器やほ乳瓶からビスフェノールAが溶け出すことが分りました。
また、学校給食用食器は使用期間が長くなると溶け出す量も増えることが知られています。
検出された濃度は0.3~120.4ppbの範囲でした。
食器以外でもビスフェノールAに被曝する可能性があります。外国では野菜缶の汁を分析し、缶詰1個から平均で23μgのビスフェノールAを検出したという報告があります。
この場合は野菜を分析していません。このため全体ではもっと多かったと考えられています。
コンデンスミルクなどの缶に水を入れ、ビスフェノールAを分析した研究があります。
この場合にも、ビスフェノールAが溶け出すことがわかっています。
スチレン
最近、新聞に1面を占める広告をカップ麺の業界が出し、発泡スチロールからはホルモンかく乱物質は出ないと主張しました。
しかし、業界の安全宣言にもかかわらず、カップ麺の販売量が減少したことが報じられました。
カップ麺の多くには脂肪が含まれており、脂肪に似た溶媒による試験ではホルモンかく乱物質と推定されているスチレンダイマーやトリマーが検出されています。
スチレンが溶出することは業界も認めていますが、スチレンそのもの(スチレンモノマー)にも黄体化ホルモンの異常を引き起こすことや、国際癌研究機構で発癌物質であると分類していることは注意しなければなりません。
アメリカ環境保護局はスチレンについて次のように発表しています。
スチレンの急性被曝により、人間では粘膜や目の刺激、消化管への影響がみられ、慢性被曝により頭痛や疲労、衰弱、抑鬱などの中枢神経系への影響、末梢神経障害、腎臓や血液の酵素機能の変化などが見られる。
生殖や胎児への影響は人間では明瞭ではありませんが、プラスチック産業で働く女性で自然流産の増加と出生数減少が報告されています。
複数の疫学研究でスチレン被曝と白血病やリンパ腫の増加が報告されています。
動物実験では発癌性があるという報告とないという報告があります。
国際癌研究機構(IARC)は人間で発癌の可能性があるとしてグループ2Bに分類しており、EPAでも人間で発癌の可能性があるとしてグループCに分類するのが妥当だと報告しています。