・出展:環境汚染問題 私たちと子どもたちの未来のために
http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/
・ホルモンかく乱物質は 生物に影響を与えるのか?
有機塩素系農薬はホルモンかく乱物質として良く知られています。
しかし、その影響力は天然のホルモンの1/100~1/1000と弱いため、影響はないと考えている人もいます。
しかし、人体の血液中には天然のエストロゲンの40~250倍もの高濃度の有機塩素系化学物質が存在しています。
さらに、天然のエストロゲンは1~3%しか活性を持たず、97%~99%はタンパク質に結合しており、体内のホルモン受容体に結合できません。
有機塩素系化合物はタンパク質に必ずしも結合していません。
さらに、天然のホルモンの半減期は短く、血中では30分以下と考えられているのに対して、有機塩素系化合物の半減期は年単位といわれています。
このような理由でホルモンとしての作用が弱くとも、有機塩素系化合物は身体内で影響を発揮すると考えられています。
ホルモンかく乱物質
自然界の出来事
ホルモンかく乱物質は野生生物と人間に大きな影響を与えている可能性があります。自然界では多種多様な影響が見られています。
日本ではトキが乱獲によって絶滅したといわれていましたが、乱獲以外にも水田に使用した多量の農薬などの影響も考えられてまいす。
自然界でなにが起きているのか、簡単に見直していきます。自然界の異変は人類への警告あるいは予告かもしれません。
魚類
カナダとアメリカの国境付近にある五大湖は化学物質により汚染されています。
この湖の全てのサケに甲状腺肥大が見つかり、時には正常の100万倍以上に肥大した甲状腺をもつサケも見つかっています。
同時に生殖器系にも影響が及んでおり、ほとんどのサケが雌雄同体であったと報告されています。
この原因物質は不明ですが、相当大きな影響が現れていることがわかります。
雌化した雄の魚は日本でも発見されています。
多摩川のコイの調査では、精巣の重量が正常なコイの1/2から1/4と小さく、奇形や癌がある精巣が見つかっており、精巣の組織にも異常があったとされています(中村・井口 1998)。
魚の精巣の異常はイギリスでも早くから知られており、精巣内に卵を持っている魚がいることや、本来雌の魚しか持たない卵黄を作るタンパク質ビテロジェニンを持っている雄魚が下水処理場下流で多く認められることが報告されています。
両生類
両生類、特にカエルの数が急速に減少し、一部の場合では絶滅したことが知られ、カエルの奇形が一部の地域では異常に多いことが知られています。
カエルの数の減少の原因として多くのことが推定されています。
ブラックバスのような肉食魚を放流したこと・生息地の破壊・紫外線増加・酸性雨・人間がカエルを食べること・温暖化・農薬などが考えられています。
カリフォルニア大学の動物学者ロバート・ステビンスは、カエルの減少は汚染物質によるものであるという仮説を出しています。
その理由は次のようなものです。
汚染物質はエストロゲンのまねをし、内分泌系と免疫系をかく乱します。ホルモンのまねをする化学物質のほとんどは脂溶性で、カエルの皮膚は環境化学物質を非常に通しやすいため、汚染物質を皮膚と食物から取り込みます。
オタマジャクシがカエルになる時や冬眠からさめて繁殖をするとき、脂肪に蓄積した汚染物質が遊離されます。
雌のカエルは卵の卵黄を作るときに蓄積した脂肪を使いますが、その時も脂肪に蓄えられた毒物が全身に行きわたります。
オタマジャクシからカエルに変態する時の激しい変化はホルモンにより進められますが、この時はホルモンかく乱物質による妨害に敏感です。
原因物質としてはDDTなどの農薬があげられています。
1977年、オーストラリア政府は、オタマジャクシやカエルに有害な影響を与えるという理由で、84種類の農薬を水辺で使うのを禁止しています。
この中には除草剤グリフォセート(ラウンドアップなどの商品名で売られています)も含まれています。
有害な成分はグリフォセート自体ではなく、添加されている不活性成分であろうと考えられています。
この他に殺菌剤などの散布によってもカエルの減少が起こっていることが知られています。
また、レチノイド(ビタミンAやレチノイン酸などの一群の化学物質)はホルモンの働きを持ち、魚からヒトまでの脊椎動物で先天性障害を与えるます。人間でもニキビ治療のために使った薬で先天性障害が起こったことが報告されています。
このレチノイドとカエルの奇形が関連があるといわれています。
メトプレンという昆虫成長調節剤はレチノイドと同じ作用を持つといわれています。
メトプレンは若い昆虫が成熟するのを妨げる農薬です。昆虫成長抑制剤は最近徐々に使われるようになってきています。