クリーンエア:2010年3月号 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・国立病院機構盛岡病院化学物質過敏症外来便り 2010年3月号(Vol.8 No.1)
ク リ ー ン エ ア
再度受動喫煙防止ついて考える
本年2月7日の朝日新聞朝刊の1面をデカデカと飾った「職場を原則禁煙化 事業者指導も可能 厚労省検討」という記事を記憶されている方は多いと思います。

厚労省も重い腰を上げ始めたかと思ったのも束の間、良く記事を読んでいくと厚労省が「受動喫煙」から労働者を守る目的で、職場を原則禁煙化し、事業者に受動喫煙を防ぐよう義務付けるため労働安全衛生法の改正案を、早ければ来年の通常国会にも出す方針というものの記事の大半は現状では困難なことがたくさんあるというものでした。

例えば「男性の喫煙率が3割を超える中で、建物すべてを禁煙にするのは非現実的だという意見も多いため、当面は喫煙室の設置を認めることになりそうだ」とか、「厚労省がもうけた有識者検討会のある委員が飲食店や交通機関、宿泊施設などの扱いについて、たばこを吸いたいという顧客がある程度はいる。全面禁煙は行き過ぎと指摘した。」などと記載が続いていました。

さらに記事では路上喫煙にも触れていて、日本では路上喫煙を罰則付きで禁じる自治体条例が広がる一方、職場の受動喫煙防止を義務付ける法律はなく受動喫煙防止を定めた03年施行の健康増進法も努力義務にとどまっていることを指摘していました。
世界の受動喫煙防止対策へ目をむけてみると03年に日本も批准している世界保健機構(WHO)総会でたばこ規制枠組条約が採択され、欧米各国を中心にたばこ規制の動きにはずみがつきました。

特にヨーロッパでは、飲食店を含む公共の場所での禁煙法がアイルランド、ノルウエー、イタリア、リトアニア、アイスランド、英国、フランス、スペイン、バルト共和国、キプロス、スウエーデンの11カ国で施行されました。ヨーロッパ以外ではブータン、ウルグアイ、ジブチ、パナマでも禁煙法が施行されました。

その後ドイツも全面禁煙法が成立しました。カナダ、オーストラリアでは大部分の州で、また都市として施行される所もあり、禁煙国、禁煙都市はアジアも含め着実に増え続けています。

しかし日本では先に述べた「健康増進法」後に、学校や病院などの公共施設内やJR東日本では新幹線と特急列車での全面禁煙、最近ではタクシーなどでも禁煙が進んではきましたが、職場や飲食店などの禁煙は遅々として進んでいません。

またここ数年のたばこ規制としては商品包装の警告表示位です。

未成年者の喫煙を防止する目的で導入されたタスポについては当初から医師、歯科医師、看護師など医療従事者で結成されている禁煙学会でその効果を疑問視していましたが、最近の動向をみてみるとたばこ自販機は少なくなりましたが、皮肉なことにコンビニでたばこを販売する所が増え、しかも「たばこ販売!」などの幟を立てて目立つようにして路上喫煙を煽っているようにも思われます。
この路上喫煙を防止する条例を制定することを要求するために、盛岡でも先般NPO法人による署名活動があり盛岡市医師会も協力しました。

それに影響されたかどうかはわかりませんが、映画館通りと大通りの交差点に2箇所ですが写真のようなステッカーが舗道に填め込まれました。

それにしてもまだまだ数が少なく効果がどの程度あるのかと思っていたところ、たまたま先日ある会合で谷藤市長にお会いする機会があったのでそのことについてお聞きしたところ、ステッカーは少しずつ増やしていきたいと考えているとのことでしたので期待したいと思います。

また神奈川県では全国初となる「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」が09年3月に公布され、本年4月から施行されます。

しかし公共的施設では全面禁煙が義務付けられましたが、飲食店や居酒屋、ホテル、ゲームセンターなどでは禁煙または分煙を選択できるようになっていたり、100平方メートル以下の飲食店では努力義務となっているなど非喫煙者には厳しい所ですが、第一歩としては画期的なものと思います。施行によりいろいろと問題が明らかになって反対派、推進派が出てくるものと予想されますが、多くの県民が納得できる形になっていけばより良い方向に進んでいくものと思います。
このように受動喫煙についての関心は高まってきていますが、化学物質過敏症の立場からの切り込みが弱いと実感します。

肺癌をはじめとする癌発症や肺気腫、喘息などの慢性呼吸器疾患、心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症に環境たばこ煙が大きく関与していることは明らかにされてきました。

またタクシーは最も狭い公共空間で、密閉状態のためたばこを1本吸っただけでたばこ粉塵濃度は喫煙室での法定基準の10倍というデータがあります。

そもそもたばこ粉塵濃度の基準を決めること自体受動喫煙の立場からすると間違っています。

公共の場では濃度はゼロにすべきです。

最近では室内の壁やカーテンさらには喫煙者の肌や髪に付着したたばこ残留物による「3次的喫煙」が健康に悪影響を与える影響が危惧されてきています。

当院の化学物質過敏症外来では、職場などでの受動喫煙によって化学物質過敏症を発症し、休職を余議なくされた患者さんが数名、たばこが化学物質過敏症の増悪因子になっている患者さんは多数おられます。

このような患者さん達も受動喫煙がなくなれば通常の日常生活や仕事ができるようになる筈です。

しかしこのようにたばこの害で苦しんでいる人がたくさんいるということがまだ一般には知られていないというのが現状ではないかと思います。

日本もヨーロッパ並みの公共の場での受動喫煙防止が実現すれば医療経済の観点からも、有利になることは明らかと思われます。しっかり
した受動喫煙防止の体制を整えていくには、医療関係者、行政、工学関係者、建築家、たばこ農家などいろいろな専門分野の人、たばこの健康被害にあっている人、喫煙者、非喫煙者が協力して一致点を見出して実行していく必要があります。

まずは神奈川県の今後の動向に注目したいと思います。