・■7月7日の議論からピックアップ
中間とりまとめの位置づけはどうなるのか。必要な知見が集積されるのを待って最終報告を出すのではなく、研究班をつくるなりして早い時期に最終評価を出すべき。
NOAEL 5mg/kg体重/日よりも低い用量で何らかの影響があらわれる可能性があるとしているのだから、現行の基準を下げる必要があるのではないか。 JEFCA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)、EFSA(欧州食品安全機関)では、科学的な評価が十分ではないが、現行のTDIでは適当ではないという場合、不確実係数を5倍かけて暫定TDIに変更する。
暫定TDIを設定してはどうか。
日本の曝露量は減っている。それは厚労省の規制によってではなく、日本の製缶業界の自主努力による。
海外から入ってくる製品のことを考えても、より低い値に規制すべきではないか。
これからのリスク評価に関しては、個々のデータではNOAELを出せない場合でも、かなりの数の研究で同じような結果が出ている場合には、全体として用量と反応を調べてリスク評価する手法が必要ではないか。
事務局:11月にWHO/FAO専門家会合が開かれるので、そこでの結論を待ちたい。
また、中間とりまとめを英訳して同会合に情報発信することを予定している。
■世界の動向
▼米国
米国国家毒性プログラム(NTP)では、きわめて低用量のビスフェノールAの動物曝露に関する限られた知見から、現在のビスフェノールAによる乳幼児等の推定最大曝露量が、これらの毒性試験で影響が認められた用量(2.4~1.0μg/kg体重/日)と近いレベルにあることから、乳幼児等の神経や行動等に影響を及ぼす懸念が幾分かあるのではないかとする報告書案がとりまとめられ、パブリックコメントを経て2008年6月に了承されました。
これを受け、米国食品医薬品局(FDA)は2008年8月に、「食品に接触する用途に使用されるビスフェノールAの評価案」を発表しました。
これは、ビスフェノールAの無毒性量(5mg/kg体重/日)と比較すると、米国における現在のビスフェノールAの曝露状況からは乳児にも大人にも十分な安全域があること、また、懸念されている前立腺や神経・行動への影響について観察した動物実験の報告を検討したところ、この無毒性量を変更するほどの根拠は得られなかったことを内容とするものです。
この評価案については、2008年9月の公聴会を経て、10月には、FDAへ外部の専門家による評価案の見直しの結果が提出され、低用量曝露の影響に関してさらなる調査、検討を進め、入手された知見について注意深く評価を行うこととされました。
▼カナダ
NTPと同様のリスク評価案を2008年4月に公表。乳幼児の現在のビスフェノールAの推定最大曝露量と毒性試験で影響が認められた用量との差が成人の場合に比べ十分に大きくないことから、低用量でのビスフェノールAの乳幼児(主に18ヶ月未満の)への影響を考慮し、予防的アプローチとして、ポリカーボネート製のほ乳びんの輸入及び販売等を禁止する方針であることを発表しました。10月にはリスク評価の最終報告書とともに、ポリカーボネート製のほ乳びんの輸入及び販売等の禁止と乳児用の調製乳に使用されている缶の内面塗装からビスフェノールAの溶出を可能な限り減らす指針を策定する等のリスク管理案が公表されました。
▼EU
欧州食品安全機関(EFSA)では、欧州委員会から諮問を受け、2008年7月にその結果を発表しました。
その内容は、ヒトの場合は、母親が体内でビスフェノールAを急速に代謝し排泄するため胎児の曝露は無視できること、また、乳児も1mg/kg体重/日以下の用量ではビスフェノールAを同様に代謝、排泄できるとし、2006年に設定した現行の耐容一日摂取量(0.05mg/kg体重/日)は、胎児や乳児を含む消費者に対して十分な安全域を確保している、というものです。
なお、2009年10月に、欧州委員会よりEFSAに神経発達影響についての新たな動物実験に関する評価が諮問され、2010年5月に完了すべく評価中です(現在、まだ出ていない)。
▼国際
ビスフェノールAの安全性評価のためのWHO/FAO専門家会合と関係者会合が、11月1日~5日にカナダのオタワで開かれることになっています。