・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
(runより:ケミカルデイズは出典;化学物質問題市民研究会の作成です)
・食品安全委員会
ビスフェノールAの健康影響評価
中間報告書まとまる
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ビスフェノールA(BPA)は、内分泌かく乱化学物質として健康影響が懸念されてきました。
厚労省では2008年7月に食品安全委員会へ食品健康影響評価の依頼をし、同委員会では、この2年間検討を重ねてきましたが、このほど、ワーキンググループによる報告書がまとまりましたので、その概要を報告します。
また、カナダで発表されたカナダ人の体内濃度調査結果についても紹介します。
■ビスフェノールAについての基本(注)
ビスフェノールAは、プラスチックのポリカーボネートやエポキシ樹脂などの原料です。
ポリカーボネートは、主に電気機器、OA機器、自動車・機械部品等の用途に用いられ、一部の食器・容器等にも使用されています。
エポキシ樹脂は、主に金属の防蝕塗装、食品缶詰や飲料缶の内面コーディング、電気・電子部品、土木・接着材、歯科材料などの用途に用いられています。
ビスフェノールAが体内に取り込まれる主な経路の一つに、食事を通しての摂取があります。
その原因としては、ポリカーボネート製の食器・容器等からビスフェノールAが飲食物に移行するケースや、食品缶詰または飲料缶内面のエポキシ樹脂による防蝕塗装からビスフェノールAが飲食物に移行するケースなどが挙げられます。
これらのプラスチックには製造過程で反応しなかったビスフェノールAが残留し、微量のビスフェノールAが含まれています。日本では、米EPAのLOAEL(最小毒性量)50mg/kg体重/日をもとに、1993年にヒトに対する耐容一日摂取量(TDI)が、0.05mg(50μg)/kg体重/日と設定され、これを基に、ポリカーボネート製容器等に2.5ppm以下という溶出試験規格を設けています。
ビスフェノールAについては、近年、動物の胎児や産仔に対し、これまでの毒性試験では有害な影響が認められなかった量より、きわめて低い用量の曝露により影響が認められたことが報告されています。
このため、厚生労働省では2008年7月、ビスフェノールAについて新たな対策の必要性を検討するため、食品安全基本法に基づき、食品健康影響評価について、食品安全委員会に意見を求めました。
今後、その結果を基に必要な対応を行うとしています。
■食品安全委員会・WG中間とりまとめ
2010年7月7日の食品安全委員会器具・容器包装専門調査会第13回会合において、ビスフェノールA(BPA)の食品健康影響評価についての中間とりまとめが協議され、決定されましたので概要を紹介します。
【BPAに関する健康影響について 中間とりまとめ】
▼結論(転載)
ヒトがBPAに曝露されて生殖発生や発達に悪影響が及んだという直接的な証拠はないが、実験動物におけるBPAの低用量曝露による影響については、生殖発生、神経発達、免疫系に及ぼす影響を示唆する知見が多数報告されている。
これらは、生体における適応の範囲に属する影響から、毒性影響とみなすべき影響まで広範にわたっている。
しかし、用量反応関係についての知見が不十分であること及び試験結果の再現性が十分に担保できないことに留意する必要がある。
現時点における知見を鑑みると、最近海外の政府機関で採用されているNOAEL(無毒性量)5mg/kg体重/日より低い用量のBPA曝露によって、実験動物を用いた試験系で軽微な影響が顕れる可能性に注視する必要がある。
▼今後の課題(ばっすい)
妊娠期の実験動物へのBPA曝露が、児に及ぼす影響について、これまで数多くの実験的試験研究が行われてきた。
それらのうち、耐容一日摂取量の設定に関わる試験研究を中心に検討を行った。
これらの試験研究報告によれば、最近海外の政府機関で採用されているNOAEL5mg/kg体重/日よりも低用量のBPAによる、生殖器官、中枢神経系、免疫系への影響について、影響が観察されるとの報告と、それと同様の実験条件において影響が観察されないとの報告がある。
これらを精査した結果、適応範囲内の生理反応とみなすことができる影響と毒性影響とみなすことが妥当な影響に関して、様々な報告があることが確認できた。
毒性影響とみなすことが妥当な影響のうち、生殖発生や神経発達に関する影響指標については、用量レベル設定が少なく、用量反応関係を導くことが困難な報告がほとんどであった。
しかし、複数の研究機開からの報告があり、実験デザイン及び検出系によっては(編集注 影響は存在するが)影響が観察できない可能性があることから、軽微ではあるが、低用量のBPAの影響があるとみなすことが妥当と考えられた。
BPAの低用量曝露による影響については、低用量の影響を正確に確認できるように試験環境、試験動物、観察指標等を適切かつ厳密に制御した試験系を確立する必要がある。
今後、その試験系によって実施された知見を集積し、必要に応じて再検討を行う必要があるものと考えられた。
一方、BPAの一日曝露量が最も高い年齢階級の1~6歳児の曝露は、数μg/kg体重/日との推定があり、また、小学生を対象とした追跡調査により尿中BPA濃度が経年的に低下しており、BPA曝露量が低下していることを示唆するデータがある(Yamanoら2008)。
これらの知見から、現在のヒトへのBRA曝露量は現在の耐容一日摂取量よりかなり低くなっていることが推定されるが、リスク評価に用いる曝露量に関するデータは限られている。
今後のヒトでの最終的なリスク評価のためには、動物実験のみならず、ヒトで感受性が高いと考えられる妊娠中の女性、胎児及び乳幼児を対象に、継続的に曝露量に関するデータを蓄積するとともに、疫学的にBPAの生殖次世代影響について胎児期曝露のリスク評価の知見を集積することが重要である。