・国立病院機構盛岡病院化学物質過敏症外来便り2007年3月号(Vol.5 No.1)
ク リ ー ン エ ア
きれい好きの功罪
日本人はもともときれい好きの国民ですが、最近では抗菌グッズがあらゆる所にあります。
また洋式トイレの便座拭きも普及してきています。
海外に行くともちろんトイレは洋式ですが、便座拭きにはお目にかかったことはありません。
でもノロウイルスだ、新型インフルエンザだと脅かされると、余計に神経質になってしまいますね。
普段の生活で、果たしてどこまで清潔にしたら良いのでしょうか。
私は外出から戻った時や、食事の前に手洗い(必ずしも石鹸がなくても流水で十分)とうがいをするので良いと思っています。
化学物質過敏症外来に来られる患者さんの発症のきっかけをお聞きする中で、きれい好きが災いしている方が結構多いということがわかってきました。
例えば夏に蚊が多いので、防虫剤であるデイート(ジエチルトルアミド)
を部屋中にスプレーした方、引越しした社宅の壁がカビだらけだったので、カビキラー(次亜塩素酸塩、水酸化ナトリウム、界面活性剤含有)を大量に使用した方など、きれい好きだけでなく、何事にも真面目に徹底して実行する方が見受けられます。
そのような方にお話を伺っていると、発症前にもキッチンの消毒や風呂場の掃除、洗濯の際に漂白剤を使用など、洗剤、消毒剤などを多く扱っていた方がおられます。
以前に基本的に重曹、クエン酸、石鹸の3種があればあらゆる掃除が可能というクリーン・プラネット・プロジェクトの「ナチュラルクリーニング」をご紹介したことがあります。
私は「ナチュラルクリーニング」を知る10年以上前から、食器洗いに洗剤を使用したことがありません。
洗剤での手荒れがひどいので、結婚当初は洗剤をうすめたものを作っておき、原液に直接触れないようにしていました。
しかし、これでもだめなので、アクリルタワシを知ってからは、自分で編んで作ってお湯だけで洗っていますが、全く支障はありません。
さらにステンレスの汚れ、プラスチック類の汚れ、茶渋、トイレの便器、便座も重曹、クエン酸、石鹸の組み合わせてきれいになります。
クエン酸は振りかけておくと、カビを生えにくくします。
鏡やガラスは炭酸水(無糖)を吹き付けて布で拭き取るだけでピカピカになります。
最近クリーン・プラネット・プロジェクトから出版された「重曹でお洗濯!」(岩尾明子著)では、基本的には重曹と石鹸で洗濯は可能と書かれていますが、ひどい汚れの時に酸素系漂白剤やエタノール、オキシドールの使用、またエッセンシャルオイルを香りつけに使用することも、紹介しています。
しかしこれらは化学物質過敏症では使用できないこともあるので、注意して下さい。
私の方法もみんなに良い方法かどうかはわかりません。
いずれにしても、現時点ではすべての化学物質過敏症に安全に使用できるものはないと考えた方が良いでしょう。
発症前の几帳面さが、悪い方向に働いてしまうと、今度はパーフェクトに化学物質から避けようと思う余りにあせりが出てきてしまうことが往々にしてあります。
ゼロでなくても今までの暴露から20%でも30%でも減ってくれば、必ず体に蓄積されて悪さをしている化学物質の量が減ってくるので、症状緩和と化学物質曝露による許容量が増してくると思います。
有害と思われるあらゆるものから避けることから、長期間にわたって日常生活に著しい制約がでてしまうことは生活の質(QOL)の観点からは良いことではありません。
生活を楽しみながら療養していく気持ちのゆとりを取り戻していただきたいと切に願っています。
そのお手伝いが少しでもできれば幸いです。