・出典:国立病院機構盛岡病院化学物質過敏症外来便り
http://www.moriokahosp.jp/
・独立行政法人国立病院機構盛岡病院 化学物質過敏症外来便り
2006年 12号(Vol.4 No.4)
早急なタバコ対策を!
NPO法人化学物質過敏症支援センターでアンケート調査を行なった結果を、同センターの会報のCS支援(2006年10月27日号)の「反応物質!!ワースト5発表」で掲載。タバコがダントツNo1だったとのことです。
盛岡病院の化学物質過敏症外来に通院されている患者さんの中でもタバコに悩まされている方はとても多く、発症のきっかけになった方もいて、納得のいく結果でした。
ご主人のタバコ、職場やレストランなど人の集まる場所での受動喫煙も社会問題となっています。
最近では「受動喫煙症」という病名が正式に病名となりました。受動喫煙症で起こってくる病気の中に化学物質過敏症も含まれています。
海外旅行でレストランに入った時に、なぜこんなに心地よいのかと思って周囲を見回した時に、タバコを吸っている人が皆無ということに気が付いたことがあります。
日本のレストランの状況を考えるとあまりの違いに驚かされました。
2006年11月2日~4日に東京で開催された日本アレルギー学会秋季学術大会(会長:群馬大学大学院医学系研究科 小児生体防御学分野教授 森川昭廣先生)に参加してきました。
この中で『シンポジウム:受動喫煙の呼吸器疾患への影響とその対策』が行なわれたのでその内容の一部を御紹介します。
東京大学医学部大学院国際地域保健学教室の中田ゆり先生は住居、飲食店、カラオケ、タクシー、列車で精力的にタバコ粉塵調査を実施され、多くの興味あるデータを報告されていました。
1. 住居では換気扇の下で吸っても、タバコの煙は家族のいる居間に流れ、別の部屋で喫煙した場合も扉の開け閉めで煙が流れ出すので、受動喫煙防止のために喫煙は屋外ですべきである。
2. 全国1200の飲食店に対してアンケート調査を行なったところ、大部分が不完全分煙で、完全禁煙は全体の1.6%に過ぎなかった。
禁煙席と喫煙席の間が1メートルに満たない店もあった。
3. カラオケ店は密閉性が高い上に換気扇の風量が小さく劣悪な空気環境で、廊下や禁煙室内にもタバコ煙が流れ込んでいた。
対策を取らないまま未成年者を顧客ターゲットにしている危険性が指摘されていた。
4. タクシーでは窓を締め切って喫煙した場合、4分後に車内の粉塵濃度は法定基準値の12倍になって1時間以上元の値に戻らなかった。
したがって前客が喫煙していたタクシーに乗った場合にはタバコの曝露を受けることになる。
また窓を5cm位開けて吸った場合でも基準値の9倍になった。
さらに外で喫煙してタバコの火を消してからタクシーに乗り込んでもタクシー内の粉塵濃度が上昇することも確認している。
東京のある病院で構内全面禁煙にしたが、客待ちのタクシーも全車禁煙車にして患者さん達に配慮をしている所があることが報告された。
5. 新幹線では長野新幹線が全面禁煙で、粉塵濃度はゼロに近かったとのこと。
「はやて」などは禁煙車と喫煙車があるが、喫煙車と隣り合う禁煙
車では粉塵濃度は基準をはるかに越えていた。
デッキの粉塵濃度は高く、
車両間のドアが開くごとに大量の煙が禁煙車に流れ込む。
喫煙車内に入ると煙のため車両の中が見通せない位にかすんでいて、粉塵濃度は一時的には基準値の100倍のオーダーになることがあった。
中田先生によると、そもそもタバコ粉塵濃度の安全なレベルはなく、可能な限り低い濃度にしなければなりません。
タバコには4000種のガス状の化学物質が含まれているといわれていますが、粉塵レベルとガス状の化学物質濃度のレベルは有意に相関することがわかています日本における粉塵の法定基準値の0 15 / 3以下は、30年以上前に設定されたものです。
何を根拠に決めたかというと当時屋外の粉塵濃度の基準値が0.10mg/m3以下だったので、室内はオープンになっていないのでそれより少し高い0.15mg/m3以下で良かろうということだったようです。
因みにアメリカでは先に述べたように限りなくゼロに近くするということは基本ですが、一応基準値として24時間で0.065mg/m3以下、年間で0.015mg/m3以下ということになっています。
いかに日本の基準値が高い所で設定されているかがわかると思います。
シンポジウムではその他医師や市民団体の報告が数題ありました。
シンポジウムの座長の締めくくりでは「最早タバコは嗜好品ではなく毒物であることを認識し、法律による禁煙化が早急に必要である」ということでした。
これからは政治家や一部の専門家に任せているのではなく、政策の重要課題として取り組みを強化すべくいろいろな立場の人たちが、いろいろな場で主体的に討議を重ね、活動していく必要性を強く感じました。