・2)筋肉について
(イラスト3) (イラスト4)
(イラスト5)
肩こりと関係の深い筋肉は首すじと背中の筋肉群になります。
首すじや肩のまわりには骨や関節をつつむように20以上もの大小さまざまな筋肉があり、4kgほどもある重い頭を支えながら、曲げたり回したりという動きをしたり、左右それぞれ4kgほどの重さのある腕を動かすというダイナミックな運動をしています。
これらの筋肉のこわばりは血流を悪化させ、こりや痛み・しびれなどを引き起こすことにつながります。
・( イラスト3、イラスト4、イラスト5)背中と肩周辺の筋肉群は、姿勢の維持と腕の動きに大きな役割を果たしています。
こうした運動をコントロールするには、かなりの筋力を必要としますが、その役目を担っているのが、鎖骨の上から肩にかけてある「僧帽筋(そうぼうきん)」、肩から上腕の外側にある「三角筋(さんかくきん)」、背中から首と肩にかけて広がる「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」、「棘上筋(きょくじょうきん)」、「棘下筋(きょくかきん)」、「菱形筋(りょうけいきん)」などです。肩こりとはこれらの筋肉が疲労してこわばったときに起こる不快感です。
肩こりを起こしやすい動作や作業は、編み物や読書、デスクワーク、パソコンなどで前屈みの同じ姿勢で、長時間じっと作業や仕事を続けた場合に起こりやすい特徴があります(うつむき症候群と呼ばれることがあります)。
筋肉を使うと乳酸などの疲労物質が蓄積してきます。
大きな動きを伴う運動は、血行を促し筋肉から疲労物質を運び去りますが、動きの少なくじっとしたうつむいた姿勢では血行は促進されず疲労物質がたまりやすく、疲労感や不快感を引き起こします。
*イラストの筋肉群の名称は次の通りです。
(1)僧帽筋(そうぼうきん)、(2)菱形筋(りょうけいきん)、(3)棘下筋(きょくかきん)、(4)頭半棘筋(とうはんきょくきん)、(5)頭・頚板状筋(とうけいばんじょうきん)、(6)肩甲挙筋(けんこうきょきん)、(7)棘上筋(きょくじょうきん)、(8)頭板状筋(とうばんじょうきん)、(9)頚板状筋(けいばんじょうきん)、(10)肩甲挙筋(けんこうきょきん)、(11)背最長筋(はいさいちょうきん)、(12)頭半棘筋(とうはんきょくきん)、(13)頚半棘筋(けいはんきょくきん)
肩こりの悪循環
1 長時間のデスクワークや悪い姿勢(うつむき症候群)による筋肉のこり(緊張)
2 筋肉のこり(緊張)が続くと、筋繊維中の血管を圧迫して血流障害を引き起こす
3 血流障害は酸素の供給を妨げ、エネルギー源のブドウ糖の不完全燃焼を起こし、乳酸などの疲労物質を生み出す
4 血流障害のために疲労物質が洗い流されずに蓄積しやすくなる
5 乳酸などの疲労物質は、筋肉の神経終末を刺激するようになる
6 神経の刺激は脊髄から脳へ伝わり、大脳で痛みとして認識され痛みの感覚を生じる
7 痛みの感覚に伴って、筋肉内の神経が興奮するために、反射的に筋肉がさらに緊張して硬くなる
↓
[1]のサイクルに組み込まれて悪循環に陥り、
肩こりがさらに悪化する
ここまでは骨や筋肉といったからだを支えるしくみを簡単にみてきました。人間のからだは肩こりになりやすくできているわけですが、不思議なことに肩こりは日本人には非常に多いものの、欧米人にははっきりとした肩こりの症状はありません。(runより:最近はニンテンドーネックと呼ばれるゲームのやり過ぎで起こる肩コリがあります。)
また肩こりは圧倒的に女性に多くみられます。
一番に考えられる理由は筋力の差です。
欧米人は日本人よりも骨格が大きくがっしりとしたからだつきです。
さらに筋肉も日本人よりも発達しているために肩こりを起こしにくいと考えられます。
からだつきのきゃしゃな女性に肩こりが多いのも同様の理由からです。
年齢別にみると、15歳から24歳という若い年齢から肩こりがつらいという人が多くなってきます。
そして30歳前後の働き盛りに入る時期に爆発的に数が増え、その後も少しずつ増えていくのですが、なぜか65歳から74歳の年齢を境に肩こりを訴える人は減少します。
肩こりのピークは30歳前後から定年までのハードに働き時期に一致するようです。
高齢になるにつれてデスクワークなどうつむいて仕事をする機会が減り、ストレスから解放されることも理由としてあげられます。
骨や筋肉のからだのつくりからみると、高齢になるにつれ組織の老化が進み、筋肉や関節の組織が硬くなるために動きが制限されるようになります。
すると頚椎が安定し、骨や筋肉に負担が加わる大きな動きも自然と減るようになります。
こうして肩こりが少なくなっていくと考えられます。
老化が肩こりには有利に作用するというのは不思議な事実です。