・6. 慢性毒性
人間の慢性症状:一般的倦怠感・疲労・頭痛・記憶と集中力低下・食欲不振・吐き気・のどの渇き・体重減少・痙攣・筋力低下・ふるえ。
十分な投与量でフェニトロチオンは典型的なコリン作動性中毒を起こす。
ラットの研究では、500 ppm の餌中レベルに90 日間耐えた。
ラットは正常に育ち、血漿や赤血球・組織のコリンエステラーゼは減少した。
6 か月間30 ppm の食品中レベルは、雌ラットの赤血球と脳のコリンエステラーゼを減らしたが、雄では起こらなかった。
両性とも中毒の兆候を示さなかった。
92 週間餌中レベル5 ppm は無影響レベル(NEL)であった。
餌中レベル1000 ppm のフェニトロチオンを投与されたマウスは、1 週間以内に中毒兆候が現れ、20 日の投与期間の終わりには、脳と赤血球・血漿中コリンエステラーゼ活性は、それぞれ正常の45%、26%、5%に低下した。
サルはイヌより影響を受けやすい。
2 mg/kg/日の投与量はイヌでは血清あるいは赤血球コリンエステラーゼに影響を及ぼさないが、投与2 か月後、サルで赤血球酵素活性低下を引き起こした。
餌中濃度0.5 ppm が子牛でNEL であることが分かった。
400 ppm を含む餌を63 週間与えたラットで、悪影響と死亡が観察された。
一部の動物は生き残った、このレベルで赤血球コリンエステラーゼの100%低下があった。
1.77 年の経口投与試験で、ラットに対するNEL は5 mg/kg 経口投与量であった。
イヌで、0, 2, 9, 40 mg/kg 体重/日のフェニトロチオンを98 日間投与した。40 mg/kg/日で中毒とコリン作動性刺激が観察された。
10 ppm を含む餌を与えられたラットは、投与5 週間後に赤血球コリンエステラーゼ活性のわずかな低下が観察された。
投与中止後2 週間で活性は正常に戻った。
20 ppm 投与レベルで、赤血球と脳のコリンエステラーゼ活性の減少があった。
20 ppm の餌レベルで、血漿や赤血球でコリンエステラーゼ活性への有意な影響は観察されず、影響が観察されたのは100 ppm 以上であった。
投与終了後30-40 日で、活性は正常に戻った。
2 年間毎日フェニトロチオンを投与されたイヌで、近視と毛様体筋の破壊的変化・網膜色素上皮細胞の部分的な壊死・神経線維数の減少が、視神経中のグリア細胞の増殖とともにに見られた。
佐久病-フェニトロチオンは、日本の佐久地区で視覚障害を起こすのに関連する唯一の抗コリンエステラーゼ化合物であった。
イヌで、血漿と赤血球コリンエステラーゼ活性のわずかな低下が、9 mg/kg/日の投与レベルで60 日後に観察された。
中程度の低下が40 mg/kg/日で、29 日後に起こった。
乳牛と羊に60-90 日に渡って100 mg/kg/日の連日経口投与をしたが、ミルクへは排泄されなかった。
ラットに500 ppm のフェニトロチオン投与後、2-3 週間で、有意な成長阻害と種々のコリン作動性兆候があった。
脳と赤血球コリンエステラーゼに対する観察できる無影響量(NOEL)は10 ppm であり、一方イヌで血漿のコリンエステラーゼ阻害に対する全身NOEL は5 ppm である。
スミチオン50EC (フェニトロチオンを含む製品)は遅発性神経毒性を成熟ラットと人間で起こすことが示されている。
慢性中毒例
WHO(世界保健機構)の野外試験でマラリア駆除のために散布していた人のコリンエステラーゼモニタリングはコリンエステラーゼ阻害に対するフェニトロチオンの化合物の潜在力を評価する貴重なデータを提供した。
フェニトロチオンを使った2 年間の試験で、35-40 人の男性のうち2-3 人は、それぞれ2 か月の散布ラウンドの間、散布から撤退させねばならなかった。
赤血球コリンエステラーゼついて、70%の活性が世界保健機構によって行動レベルとして勧告されている。
害虫駆除オペレーターとして3 か月間働き、最近2-8 時間フェニトロチオンを使用してきた3人の若い男性が、一般的な倦怠感・疲労・頭痛・記憶と集中力喪失・食欲不振・吐き気・乾き・体重減少を訴えた。一人の蛋白尿を除き、血清コリンエステラーゼとEEG を含む、全検査は正常であった。