改築工事を行った小学校において、「学校環境衛生の基準」(当時)に基づく衛生検査を実施し、ホルムアルデヒド等の揮発性有機化学物質の室内濃度が基準値を下回っていることを確認した上で引き渡しを受けたにもかかわらず、改築校舎での授業開始後、児童及び教職員が「シックハウス症候群」の症状を訴える事例が発生しました。
当該事例において、学校、教育委員会及び関連機関は連携し、以下のような対応を取りました。
① 児童及び教職員の健康被害の拡大防止:継続して授業が行える代替施設を確保しました。また、健康被害を受けた児童に専門医を紹介しました。
② 原因の究明:環境衛生に関する公的機関の協力を得て、原因物質の特定に向けて の検査を実施しました。
当該検査においては、厚生労働省が定める室内空気中化学物質の室内濃度指針値に示されている13 物質以外の物質についても測定を行い、指針値が示されていない2 物質(1- メチル-2- ピロリドン、テキサノール)が比較的高濃度で検出されました。
なお、専門家によると、これらの化学物質が体調不良の原因であるかは、否定も肯定もできないとされました。
③ 原因の除去:換気の励行及びベークアウト(暖房機等の運転により、室内温度を上昇させ、建材等に含まれている揮発性有機化学物質の放散を促進させる方法)を実施しました。
④ 情報公開:専門家を交え、保護者及び地域住民に対して検査結果の報告及び改築した校舎における授業再開に向けての協議を行いました。
なお、改築校舎での授業の再開に向けての最低条件は、環境及び医学専門家の提言を踏まえ、上記比較的高濃度で検出された2 物質の低減化を継続した上で、厚生労働省が定める室内空気中化学物質の室内濃度指針値において暫定値として示されている総合的な化学物質汚染の指標である「総揮発性有機化学物質量 400μg/?」を下回ることと決定しました。また、環境条件のみならず、児童、教職員及び保護者等の心身への影響を考慮しながら段階的な再開を目指すことになりました。
以上のように、校舎の新築・改築後に「シックハウス症候群」が疑われる健康被害が生じた場合には、健康被害を受けた児童生徒等や職員のみならず、施設使用再開に向けて多大な人的及び財政的な負担を被ることになることから、学校施設整備の計画段階から健康被害が生じないよう留意する必要があります。

