・2 「シックハウス症候群」の発生後の対応
(1)調査と原因の究明・原因の除去・回避
「シックハウス症候群」の主な関連症状が特定の環境条件下で複数の児童生徒等及び職員に見られる場合、各学級で調査を実施し、それを全校集計して実態把握することが原因究明に効果的であると考えられます。
有症者が症状を発現した時刻・場所・内容及び程度並びに症状前の行動範囲・行動経過等から原因物質の究明に努め、学校医・学校薬剤師の指導の下に可能な限り原因物質の除去及び十分な換気等により原因物質の低減を行い、原因物質の発生場所から児童生徒等を回避させてください。
(2)「シックハウス症候群」が発症した場合の対応と経過観察
「シックハウス症候群」が発症した児童生徒等の経過観察は、学校医等の指導の下に、観察項目を明確にして養護教諭が行うことが考えられます。
養護教諭が全ての有症者について共通の視点で一人一人観察し、測できる原因物質の除去・回避の後も関連症状の経過を細かく観察することにより、症状経過と原因物質の除去又は原因物質からの回避の効果を析
することができ、今後の対応策の参考になります。
学校における経過観察によっても体調不良の状態が緩和・消失しない場合は、児童生徒等の保護者に連絡の上、専門医へ受診が必要になることがあります。
(3)教室等の空気環境の検査で基準値を超えた場合の対応
教室等の空気環境は、「学校環境衛生基準」に基づく定期検査、臨時検査及び日常点検により維持管理の実施が求められています。
しかし、定期検査及び臨時検査においてホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物が基準値を超えてしまうことがあります。
そのような場合には、一定の期間、効果・効率的な換気を行い、その後の再検査において基準値以下であることを確認する必要があります。
また、刺激閾値を超えると児童生徒等に健康問題を発生するおそれが高くなることから、通常の使用状況下で検査の結果が刺激閾値を超えるようであれば、そ教室等の使用を当分の間、見合わせる必要があります。
第1 章において参照した厚生労働省「室内空気質健康影響研究会報告書」では、『指針値は、化学物質により「シックハウス症候群」を引き起こす閾値を意味する値ではない』こと、及び『室内環境での濃度が指針値を超過していることだけをもって、直ちに、当該化学物質が症状誘発の原因であると判断することは必ずしも適当ではなく、症状誘発の関連因子を特定するためには、慎重かつ適切な臨床診断に基づく総合的な検討が必要である』と述べられているように、症状誘発の原因により対策が異なる場合もあることから、原因究明には慎重な判断が求められます。
(4)災害共済給付制度
化学物質に起因する児童生徒等の疾病であってその原因である事由が学校の管理下において発生したものについては、独立行政法人日本スポーツ振興センターの実施する災害共済給付の支給の対象となります。