■通知・マニュアルでは限界、法制化を
一方で、無農薬での管理を何年も前から実施している自治体(岐阜市や西東京市など)もあります。
施設別にみれば、千葉県内でも、大きな総合公園などで施設内外全て、農薬や殺虫剤を使用せずに管理しているところもあります。
やれば、無農薬での管理は不可能ではないのです。
先ほど申し上げた通知やマニュアルがしっかりと守られれば、日本中の空気環境はずいぶん良くなると思うのですが、周知徹底されていません。
通知やマニュアルでは拘束力がなく、限界があります。
私の友人の住む住宅街では、今月、近隣の100軒ほどの家の庭木に農薬散布をしました。
長年、習慣的に自治会が取りまとめて1業者が散布しているようです。
害虫と呼ばれる虫の発生如何に関わらず、次回は7月と既に決まっています。これは、住宅地通知で禁止されている定期散布にほかなりません。
友人が住宅地通知や環境省のマニュアルをもって交渉しても、なかなか理解が得られないようです。
やはり、法制化し、罰則を設けることが必要ではないでしょうか?
現代の私達の周りには数限りなく化学物質があり、生活から切り離して考えることはできなくなっています。
化学物質の海の中で生活しているようなものです。当然、子ども達も一緒です。
この資料(注)をみるとわかるように、臍帯(臍の緒)からは、ダイオキシン類、PCB類、DDT、DDE、HCH、クロルデン、HCB、水銀といった環境汚染物質が100パーセント検出されます。
つまり、生まれる前、胎児の時から有害な化学物質にさらされているのです。
注: 第6回千葉大学予防医学センター市民講座「環境省のエコチル調査について」千葉大学・環境健康フィールド科学センター戸髙恵美子氏資料
私の子どもの友達の中には、ホームセンターへ行くと鼻水が止まらなくなる子、家具屋に入ると頭痛がすると言ってすぐに外に出てしまう子、車は窓を開けないと気分が悪くなる子、プールの塩素処理室の前で咳き込む子、新築に転居し、喘息が悪化した子といろいろな子どもがいます。
しかし、自分の子どもにこのような症状が少しくらいあっても、有害な化学物質が原因だと結び付けて考える方はなかなかいらっしゃいません。
化学物質過敏症というと、とっても特別なもの、自分や自分の子どもには関係がないことだと考える方が大半だからではないでしょうか。
この子ども達が、現状のまま有害な化学物質に曝露され続けると、化学物質過敏症の発症リスクは限りなく大きくなります。
いつ発症してもおかしくない状況なのではないでしょうか。
私の子どもの通う小学校では、一昨年から体育館と校舎で耐震工事が行われています。
この工事が始まってから、食物アレルギーが悪化した子、喘息が悪化した子がいます。さらには、化学物質過敏症を発症してしまった子もいます。
学校の工事については、文科省の規制値が6種類ととても甘く、問題もたくさんあります。
これについても考えていただきたいことがたくさんあります。
■トキを守るのと同じように子どもを守って!
現在、環境省では、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)をはじめていますが、この結果がでるのは何年も先になります。
今の子ども達はその結果を待っていることは出来ないのです。
新潟の佐渡では、トキを守るために、有機農業が推進されていますが、子ども達を守るために、殺虫剤を止めようとはなかなか言われません。
鳥のためにできることは、子ども達の未来のために、もっと考えるべきではないでしょうか?
発症してしまった子ども達は、パソコン室に入れない、理科の実験が出来ないなど、日常の学校生活にもおおきな制約がある中で生活しています。
ましてや、将来のこととなると、進学や就職といったことで、発症者であるがゆえに、あきらめなければいけないことがたくさんあります。
このような子どもをこれ以上増やさないために、予防原則に基づいて、早急に、あらゆる対策をとるべきではないでしょうか?