平成16年度環境省化学物質過敏症研究報告書2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・C.調査研究結果
第1章二重盲検法による微量化学物質曝露試験

・Ⅰ.目的
本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)については、平成9年より研究班が設置され、微量化学物質に対して過敏性を有すると判断された被験者に対して平成12年度8名、平成13年度15名、平成14年度15名の計38名について、二重盲検方法による微量ホルムアルデヒド曝露負荷試験を施行、年度毎に結果を評価し検討を重ねてきた。

しかしながら、曝露負荷試験後の自覚症状の増強が医学統計学的、即ち、科学的評価に耐えうる一定の傾向を示さず神経学的検査を中心とした他覚的検査においても曝露前後の生理学的変動を十分に捉えることが出来なかった。
そこで平成15年度は、これまでの研究結果・検討会において今後の課題としてあげられた種々の指摘・示唆を踏まえ、複数化学物質混合同時負荷・負荷時間の延長を中心として、負荷前後の自覚症状、バイタルサイン、各種神経学的検査等を記録・検討した。

その結果、平成14 年度の結論と同様、本態性多種化学物質過敏状態と診断された集団の中には、様々な状態の患者が混在し均一な集団ではなく、昨年度の結果からも、ごく微量(混合曝露でガイドライン値の半分以下)のホルムアルデヒド+トルエンの曝露と被験者の症状誘発との間に、統計学的に有意差をもった関連性は、確認出来なかった。

即ち、微量化学物質曝露で自覚症状を呈する集団が存在することに間違いはないが、被験者の内容は非常に変化に富んでおり、曝露負荷試験のみで、本症の病態解析を行なうことが困難であるとの結論と評価を得た。
そこで本年度は、平成15 年度の研究協力を得られた被験者を中心に、被験者に対する薬物代謝酵素の遺伝子多型性・神経学的検査所見を加味した再評価を施行し、二重盲検法における本症の病態解析に関わる有用性について最終的結論を引き出したいと計画した。

Ⅱ.方法
昨年度(平成15 年度)に施行した微量ガス負荷試験の被験者および健常者(化学物質過敏性を自覚していない者)における薬物代謝酵素の遺伝子多型性および神経学的検査所見を検討した。

(1)インフォームド・コンセント(説明と同意)
薬物代謝酵素の遺伝子多型性検査については、社団法人北里研究所及び学校法人北里学園の論理委員会の承認を受けた。

さらに、被験者には、本研究の趣旨・得られた研究結果の取り扱い方法および個人遺伝情報管理・倫理委員会における承認事項等を詳細に説明し、同意の得られた者のみ研究協力を依頼した。

(2)施設
使用施設は、分子生物学的研究設備を有する北里大学薬学部公衆衛生学研究室を主として利用し、一部、北里研究所病院・バイオメディカルラボも利用した。

マイクロアレイを用いた遺伝子発現の評価は、北海道道立衛生研究所の研究施設も利用した。

(3)対象
評価は、平成15年度の被験者9 名を対象として計画し、本態性多種化学物質過敏状態と判断され、かつ遺伝子多型検査に協力の得られた8名(以下、本態性多種化学物質過敏状態患者という)について評価を行った。
また被験者の年齢は20歳から40歳までとし、社会生活が極めて制限されている者は対象としていない。

本態性多種化学物質過敏状態の診断は、北里研究所病院臨床環境医学センターに所属する医師が行い、第三者の医師により、本態性多種化学物質過敏状態の診断基準*に合致しているかどうかの判定を得て選択され、かつ研究開始時の対象選定にあたり、精神疾患の有無についての判定を行い、精神疾患を有する者を除外している。

*なお、診断基準については、最終頁に記載した。

(4) 薬物代謝酵素遺伝子の解析およびマイクロアレイによる遺伝子発現パターンの検討
今回は、薬物代謝酵素として、グルタチオン-S-トランスフェレース群(以下
GSTs)の遺伝子発現を対象とした。サンプルは被験者の上腕皮静脈より採血、末梢リンパ球を分離し、Total RNA を抽出した。

GSTs 遺伝子の発現は、常法通りに、RT-PCR 法によって評価した。

さらに、被験者末梢リンパ球より得たTotal RNA は、マイクロアレイ解析に用いた。

(5) 神経学的検査
被験者に対して以下の神経眼科学的検査を施行、評価した。
a. 眼球運動検査
本態性多種化学物質過敏状態を有する集団では、核下性麻痺を訴え複視を示す例は殆ど認めず、眼位の変化は生じにくい。

しかし、高率に中枢性または核上性眼球運動障害を認めることがこれまでに報告されている。

眼球運動には急速に動く衝撃性眼球運動(saccadic movement) とゆっくり動く滑動性眼球追従運動(smooth pursuitmovement)があり、本態性多種化学物質過敏状態では眼球運動異常を認め、それは核上性変化が中心となる。

両眼の黄斑部を時々刻々刺激することにより両眼が同時に追従を行いスムーズに動くのが健常者である。

この際、異常があったとしても、首を水平または垂直に動かして前庭神経の関与を行なって誘発される前庭動眼反射は、多くの場合正常である。

この系の障害が高度になると注視麻痺に至る。

今回の評価では、光学的な眼球運動記録装置により判定した。

刺激としてはCRT画面上に水平方向あるいは垂直方向へ指標を振子のように動かし、目標物の動きを追いかける両眼の滑動性追従運動を眼球電位図(EOG)を用いて記録、評価した。
a-1.眼球運動測定装置:測定に用いた眼球運動測定装置について今回使用した眼球運動装置は、光電素子眼球運動記録法の機器IOTA AB 社(スウェーデン)製oberⅡである。

振幅±20°周波数0.4Hz の正弦波で追従性眼球運動の測定を行った。
追従性眼球運動測定とは、ある視標に対して眼球が追従可能かどうかを評価する検査である。
この測定から得られた波形を図1 と図2 に示した。
図1 は視標に追従可能な健常者の波形で、図2 は視標に追従不可能な例の典型波形(異常波形)で、本症の代表波形である。
今回使用した眼球運動装置は、光電素子眼球運動記録法の機器IOTA AB 社(スウェーデン)製oberⅡである。

振幅±20°周波数0.4Hz の正弦波で追従性眼球運動の測定を行った。

追従性眼球運動測定とは、ある視標に対して眼球が追従可能かどうかを評価する検査である。

この測定から得られた波形を図1 と図2 に示した。
図1 は視標に追従可能な健常者の波形で、図2 は視標に追従不可能な例の典型波形(異常波形)で、本症の代表波形である。


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