・<第3回>2003.11.21(485号)
電磁波の影響は複雑そのもの。
多くの「電磁波の危険性」、どう評価しますか?
胎児や子どもぽど影響を受けやすい。免疫・生殖作用に害
二つのコップに、水と氷を同じ重さだけ入れて電子レンジで1分間チンしてみてください。
水の方は60度近くになりますが、氷はまったく変化しません。
同じH2Oでありながら、電子レンジのマイクロ波は水にだけ吸収されるのです。
これは、電磁波の影響が大変複雑であることを示す一例です。
人間の身体でも、水分が多く、冷却機能の弱い睾丸や膜などがまず影響を受けると考えられています。
熱に弱い脳もそうです。
胎児に与える影響が特に心配されるのも、大人に比べて水分が多く、細胞分裂が盛んだからです。
胎児は水分が90~95%、赤ちやんは約80%ですが、大人は50%。その大人が緩い電磁波の規制値を作っているのです。
電磁波被曝によって鶏卵や線虫の卵が死ぬという研究や生殖作用と深いかかわりがあるカルシウムやホルモンなどへの影響に関する研究が多く発表されています。
その一つ、高周波を低周波で変調(混ぜること)させると鶏の脳細胞からカルシウム・イオンが漏洩するという研究が1975年に公表されました。
カルシウム・イオンは神経伝達や生殖、生物時計にも関係すると考えられています。
その後の研究で、「イオン・チャンネル」と呼ばれる細胞表面の穴が、周波数や強度により影響を受ける可能性が指摘されています。
細胞内のイオンは、この穴を通して濃度変化をしているのですから、どんな影響が出ているのでしょうか。
1997年12月に起こった、アニメ番組の映像で気分が悪くなったというポケモン事件や、最近話題のテレビやゲームなどの脳への影響は、電磁波被曝と脳との関係を示す現象であると思います。
脳内ホルモンであるメラトニンも電磁波と関係が深いことが明らかになってきました。
メラトニンは、抗酸化・抗ガン作用があるホルモンで、生物時計などの生命の維持に重要な役割をはたしています。
低周波被曝でメラトニンの分泌が低下することが発ガンの原因、との仮説が現在もっとも有力です。
今年6月、文部科学省から「4ミリガウス以上の被曝で、小見急性リンパ性白血病が4.73倍、小児脳腫瘍が10.6倍になった」という、日本で進められていた疫学研究の詳細が発表されました。
電磁波の被曝で小児白血病が増加することは、ほぼ「間違いない」段階になっているのです。
うつ伏せに寝かすのが悪いといわれている乳幼児突然死症候群(SIDS)にも電磁波原因説があります。
SIDSの誘因は身体を暖めることであるという報告があり、マイクロ波の電子レンジ効果といってもよい熱効果が原因かもしれません。
携帯電話の害についての研究も増えています。
携帯電話の電磁波を2時間照射すると、若いラットの脳の神経細胞が崩れるという論文が、今年6月に米国立環境健康研究所が発行している雑誌に掲載されました。
血液脳関門(BBB)という脳へ送られる血液を生成する器官の機能が崩れるのが原因らしいですが、旧郵政省の「生体電磁環境推進研究委員会」(委員長=上野照剛・東大教授)は1999年9月、「(電磁波は)BBBの機能には障害を与えない」という報告書を発表しています。
私の知る限りこの報告は欧米の雑誌には引用されていませんので、正式な学術論文とはいえないようです。
安全宣伝のためだけに、そのような研究が行なわれているのではないでしょうか。
細胞には温度に対応する「温度受容体」があり、携帯電話の電磁波被曝で熱探知タンパク質が変化し、あたかも大きな熱変化を受けたかのように作動したというポメライ論文(英国)が、2000年に著名な科学雑誌『ネーチャー』に発表されて話題になりました。
最近では、子どもに多いアトピー性皮膚炎が携帯電話の電磁波被曝で悪化するという世界で最初の論文が、木俣肇博士によって昨年、今年と続けて発表されており、電磁波被曝が免疫系に悪影響をおよぼす証拠ではないかと、私の不安は増すばかりです。
しかし、これらは、電磁波利用重視の風潮の中で無視されているように思います。
大人の金儲けの影に隠れて、子どもたちに危険性がしわ寄せされているのではないでしょうか。